第7話
「ちょっと早く着きすぎたか?」
待ち合わせ場所はお店の最寄り駅だ。
集合時間に余裕を持たせて二十分前に到着しようと電車の予定を調べて、自宅からの最寄り駅に遅れないよう少し早めに家を出た結果、二本早い電車でついて今は待ち合わせ三十分前だ。
「時間をつぶすにも微妙な時間だな」
立ってるには長いがどこか店に入るには短い……。
まぁ人の多い駅だ。すぐに合流できるかわからないし、目印になるものでも探して待とう。
と思っていると……。
「おい、めちゃくちゃ可愛い子いるじゃん」
「いやでもあれ、明らかにヤバくね?」
「地雷ってやつ? いやでもあそこまで可愛い子なら俺別に重くても病んでてもいいかも」
「それはそうかもしれん……ちょっとテレビでも見ないくらい可愛いからな……」
隣にいた男性二人組がそんな会話をしているのが聞こえて来て、その目線を追うと……。
「やっぱり」
「あ、アキくん! もう来てたんだ。待たせちゃったかな?」
パタパタとこちらに駆け寄ってくるリヨンと、目を丸くする男たち。
まあ、待ち合わせの相手が俺だとは思わなかっただろう。そのくらいリヨンは何か特別感があるオーラを放っていた。
「いや、俺が早すぎただけ……というかリヨンも随分早いな」
「あはは。ちょっと待ちきれなくて」
相変わらず恰好は黒い。服装だけでなくマスクも。
ただそのマスクでも隠し切れない何かがリヨンにはある。手入れされた綺麗な髪がキラキラして見えるような気すらした。
「えっと……」
しまった。
ジロジロ眺めすぎたせいでリヨンが不安そうにしたのかと焦ったんだが……。
「ありがとね。返事くれて」
リヨンが言う。
そうだ。そもそもここから話さないといけないんだ。
容姿に圧倒されえちょっと忘れかけていたというか、頭の片隅に追いやられていたところがあったので、慌てて軌道修正する。
「むしろごめん。なかなか連絡できなくて……」
「あはは。あれは仕方ないというか……私がやらかしたというか……今日はそういうのなしで! いやアキくんの気が変わったなら誘ってくれても……違う……何言ってんだ私……」
テンパって顔を赤くするリヨン。
マスク越しで赤さがわかるってすごいな……。
「うぅ……とにかくっ! 今日は普通に楽しむから! ね?」
ただ俺もいっぱいいっぱいなのは同じなので、リヨンの明るさがありがたかった。
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