第3話

 小学五年生の頃、俺がいるクラスでいじめられている奴がいた。

 そいつの名前は阿黒百合香。


 あいつは委員長のような気質を持っていて、悪い事をしている奴がいれば叱って、先生に報告する。言ってしまえば生真面目な奴だった。


 だが、彼女のそんな性格が敵を多く作った。


 子供と言うのはとても残酷で、うざいから。そんなくだらない理由でいじめる。阿黒がそうだった。


 阿黒の事を嫌っている奴は多くて、一人がちょっかいをかけると、もう一人乗っかり、また一人と続いてやがてそれはいじめへと変わっていた。


 誰も止めない。面倒な事に首を突っ込みたくない。

 俺もそうだった。

 阿黒がいじめられていようが、俺が巻き込まれない限りどうでもよかった。


 いじめは次第に酷くなっていた。だが、いじめが止まらないのは、誰も見て見ぬふりをしているのもそうだが、阿黒も先生に言わなかったのだ。きっと、いじめられている事を言うのはプライドが許さなかったのだろう。


 いつも先生にチクってる時みたいに言ってしまえよ。その時の俺はその程度の事しか思っていなかった。


 言えずに抱え込み、とうとう彼女は限界を超えたのだろう。


 彼女は自殺した。選んだ場所は学校。屋上からの飛び降り自殺。しかも時間はみんな登校してから朝の時間。


 俺も阿黒が屋上にいるとは知らずにいつも通り登校して、校舎へ入ろうとしていた。その時だった。飛び降りた阿黒と目があったのは。


 だかそれは一瞬で、次の瞬間には鈍い音が響き渡り、辺りに血が飛び散った。


「あっ–––––、あぁっっ––––––––!」


 上手く声が出なかったのを覚えている。いつも通りの日常は、その日から彼女の死によって崩れ去った。

 俺の目の前に広がる惨劇はまだ小学生だった俺には惨すぎる光景だった。その光景は脳にこべりつき、一生忘れる事は無いだろう。


 その日からだった。もういないはずの彼女の声が聞こえるようになったのは。


 もちろん、これは幻聴なのはわかってる。でも、これは何もしなかった俺に残した呪いなんだ。

 自分は関係ないと、見ないふりした罰なんだ。


 過去は消えない。阿黒も戻ってこない。ならせめて同じ犠牲者はもう増やさない。


 だから俺は、もういじめなんて見ないふりなんてしない。させないと心から誓ったんだ。


 だけど、そんな簡単に上手くいかない。

 何度も失敗してようやく辿り着いた結果が、俺が完璧になる事。そしてカーストと呼ばれる制度のトップに立つ事。そこでようやく俺の目的が始まる。


 ––––––みんなで笑い合える最高ではっぴーな物語にする。


 それが、俺の罪滅ぼしなんだ。



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