第77話 未来の見通し、人生のお察し

「もぉぉ! ほんっとにもぉぉ! なんなんですか本当! なんでもぉ、そんなにもぉっ……私たちにサービスしてくれちゃうんですかっ!? 無理してサービスしてくれようとか考えなくていいんですからねホントに!」


「………はぁ」


 そんなこと考えたことは一度もないのだが、というかそもそもどこがどうエベクレナたちを嬉しがらせたのかロワとしてはさっぱりわからないのだが、エベクレナたちとしては今日の会話は自分たちを喜ばせるに足る、と考えているようだった。水晶の窓越しにきらきらぎらぎら目を輝かせ、美しくも理解のできない笑顔で楽しげに言葉を交わしている。


「やっぱアレだよね、でかいミッション終えた後の会話回って、ご褒美以外の何物でもないよね。むしろそれがあるから、襲いくるミッションを頑張る子たちを全力で応援できるっていうか」


「ですよねぇぇ~。特に今回はパーティメンバーが全員好きな男子だから、めちゃくちゃ心穏やかに、かつテンション上げて楽しめるというか」


「あたし的にはやっぱアレよ、カティくんの童貞卒業ならずがおいしかったな。キャラ的に嬉しい展開というのもそうなんだけど、童貞卒業できなかった顛末を仲間に明かさざるをえなくなって、ああだこうだと年下の仲間に話の種にされるってのがもう『ピーッ!』燃え上がるというか! 若年男子が仲間の童貞卒業うんぬんにああだこうだ言うってシチュのおいしさも加わって二重においしくいただけました!」


「私としては当然アレね。眼鏡ゲフゲフンネテくんが、性にまつわる話をするたびにほんのり耳を赤くしてたって事実ね。他の誰が気づかなくとも私はしっかり気づいてたわよ、拡大して色味チェックして! 心臓の鼓動もちょっと早くなってたし! それなのに見た目は冷静を装って、心の中だけドキドキして恥じらいで涙ぐみそうになってる眼鏡とか……! まさにエッッッロの一言!」


「ギュマっちゃんそういう発言するのはまぁいいですけど、ちゃんとフィルターはつけてくださいね……。っていうかですね、私的にはパーティが揃って新たな土地目指して旅に出る、ってシチュだけでだいぶキてるんですかどうですか。心の底から安心してワクワクできる新展開、このありがたさったらないでしょこれまで地雷展開を何度も見せられてきた身からすると!」


「あ~、それは確かにね~……地雷いっぱい持ってると、新展開が来た時にはたいていどっか踏まれるもんね。推しが離脱っていうか話の本筋っぽい展開から外れちゃうっていう泣くしかないパターンから、ぽっと出のヒロインが推しに急接近みたいなオイオイどこに媚びた展開だぁ? ってガンくれざるをえないパターンまでいろいろあるけど」


「そうそうそう、あくまで心穏やかにワクワクドキドキしながら推しの行く末を見守れる! 命の不安とかもほぼなしで! こんなありがたい状況ってそうそうないですよ、なんで私みんながいちゃいちゃ会話してるの見ながら顔が笑ってしょうがありませんでした&涙出そうでした、マジに」


「わかる~。命の不安がほぼないっていうの本当でかいよね、この世界じゃそれがまず難しいし。普通程度の戦闘力だったら、まずパーティだけで街を出て行く時点でもう『待ってぇぇ! やめてぇぇ! 考え直してぇぇ!』と叫んでるところよ」


「だねぇ、ゾヌの近辺はそもそも強い魔物多いしさぁ。魔物分布図つきマップ持ってる身としては、ある程度絶望の未来とか予見できちゃうしさぁ」


「……神々はやっぱり偉大ですね。そういう情報も自由に閲覧できるんですね」


 ロワが思わず口に出して呟くと、一瞬場が静まり返った。え、なにか悪いことを言っちゃったのか俺、と慌ててわたわたと周囲の様子をうかがっていると、ゾシュキアが笑顔で答えてくれる。


「そーだねぇ、まぁ現在の大陸の情勢というか、情報くらいはちょっと操作するだけで確認できるかな? まぁ端末越しじゃないと駄目なんだけどね~」


「ちょっとゾっさん……あんたなにさらっと話流そうとしてんですか、しっかり気づいてますからね私ら。あなたまたフィルターかけずに話してたんですね!? ロワくんの反応からして、安全な台詞のとこだけちゃんと選んで外してはいるみたいですけど……いつ切り替えミスってフィルターかけるべき台詞推しにぶちまけられるかって、横にいるだけで私すんごいヒヤヒヤするんですけど! それわかってます!?」


「いやわかってるけどさぁ、前回も言ったけどロワくんだけ話に参加できないとかフツーに可哀想じゃん。お役立ち情報とかもちゃんとあげたいしさぁ。入れる話題なら積極的に開示してったげないと、曲がりなりにも成人してる女として申し訳なくない?」


「ぬぐっ、そ、そういう言い方をされると、反論しにくいというか、返す言葉が見当たらない感じですがっ……!」


「あ、あの……やっぱり、俺、口挟まない方がよかったですか?」


「ぃえいえいえいえっ、そういうことは全然! 本当全然ないので! ロワくんはマジで少しも悪くないので! ……ええそう悪いのは私なんですよねぇ、切り替えミスるの怖いったって、要はそこらへんちゃんと気をつけてればいいだけのことですし……そんな風にびくびくして推しに嫌な思いさせるとか、推し活女子としてあるまじき振る舞いすぎるというか……いやでもだって本当推しの前で推しのどこにキたかって話させられるとか、いつバレるかもしれない状態とか怖すぎじゃないですか、完全シャットアウトして心の平穏保たないと話せるわけないというか……」


「よしよしエベっちゃん、モニタの向こうにいるからいい子いい子はしてあげらんないけど、エベっちゃんは間違ってないよ、気持ちわかるもん」


「わかってくれますかアジュさん……! ……え、アジュさんが気持ちわかるんですか? マジに?」


「わかるに決まってんじゃん! 私だって下手にロワくんに『ピーッ!』話したらエベっちゃんに殺されるって思いながらしゃべってんだよ?」


「そ、そうですか……それは、確かに気持ちはわかる、のかもしれませんね……ちょっと一緒にされたくないとか思っちゃいますけど……」


「うんうん、だってやっぱねぇ、『ピーッ!』話してたらフツーに未成年者への気遣いとか吹っ飛ぶっしょ? 『ピーッ!』が盛り上がってきたらもう『ピーッ!』パッカーン! っておっぴろげたくなるのが当たり前じゃん!」


「いや本当そういう話素面でできちゃう人と一緒にされるとか人として悲しくなってきちゃうんですが!?」


「まぁ、良識ある人間からしたらどっちもどっちかな、って気はするわねぇ。だいたいの人は同類項扱いしちゃうんじゃない?」


「ええぇぇマジですか!? 私この人と同じ扱いされるんですか!」


「いいじゃんいいじゃん、どうせ同じダメ人間扱いされるんならさぁ、エベっちゃんも思いきりよく『ピーッ!』おっぴろげちゃおうよぉ、気持ちいいよぉ?」


「しまっせんから! 断じてしまっせんから! たとえ同じダメ人間だろうと、推しの前でたとえ聞こえなくとも……っがどうこういう女にはなりたくないので!」


「え~、なんて~? 聞こえな~い。もっとはっきり大きい声で言ってよぉ~」


「小学生男子ですかあんた! 成人女性の感性と小学生男子の品性とか地獄すぎる組み合わせなんですが!」


「……で、ロワくんはなんかあたしたちに聞きたいこととかある? ある程度までなら答えてあげられるけど?」


「ちょぉぉっゾっさん! 私らが無駄話してる間に大人の女性らしく品よく男子に声かけてあげるとかなんですかそれズルすぎないですか……!」


「え、ええと……」


 ロワは少し口ごもって、ちらりとエベクレナの方を見た。エベクレナは見られたことにわたわたと慌て、取り澄ました顔になったりうろたえて周囲を助けを求めるように見まわしたり、と忙しい。こちらの意図が伝わっていない(『こちらの心が読める』というのは『きちんと伝えたいことを理解してもらえる』ということと必ずしも同一ではない、という事実をロワも最近理解し始めたのだ)ことにこめかみを掻いてから、きちんと口に出して問いかける。


「エベクレナさま。俺はできれば、みなさんにお聞きしたいことがあるんですけど……伺ってもよろしいでしょうか?」


「え……え? な、なんでそれを、私に?」


「だって、エベクレナさまがいなければ、俺は今ここにいないでしょう。だからエベクレナさまが嫌なことはしたくないな、と思って……」


 そう事実を告げると、エベクレナはなぜかかぁっと顔を赤らめた。他の女神たちがにやにやと、あるいは無表情で囃し立てる。


「ひゅーひゅー」


「ひゅーひゅーだよひゅーひゅー」


「これで推しに認識されたくない系女子を語るとかないわー」


「うるっさいですよあんたら、人が推しと会話してる時に口挟まないでもらえます!?」


「えー推しに認識されたくないって主張はどこいったのぉー」


「今でも認識されたくない気持ち全開ですけどそれはそれとして会話に横入りされるのはマジ勘弁です、推しの神対応の拝観を邪魔されるとか、絶許としか言いようがないでしょ!?」


「……それは、まぁそうか」


「わかった、邪魔しないから存分に推しとの会話を楽しんで? まともに目も合わせられない状態だけど」


「というかロワくんさっきからずっと返事されるの待ってるんだけど? エベっちゃんの推し心はともかく、曲がりなりにも年上として、質問放置で他の人と意味わかんないこと喋ってるってのはどうなの?」


「………っは! ごっごめんなさいロワくんっ、私はロワくんがどんな話しようといつでもなんでも受け容れる覚悟なのでっ! どうぞご遠慮なくっ!」


「は? はぁ……」


「……ぅえぇぇん、やっぱ推しと普通に駄弁るとか無理ですよぉぉ。本当意味わかんないなんなんですかクソ上司&クソッタレ技術部ども! 目的がある会話ならともかく、ただ単にお茶しながらおしゃべりするとか無理すぎなんですが!?」


「よしよしエベっちゃん、あたしの胸でお泣き。モニタの向こうにしかないけど、胸」


「それにロワくんから質問してもらえるってことは、ちゃんと目的のある会話になるじゃない? びしっと大人ムーヴ決めて、好感度稼ぎしたら?」


「はっ! そ、そんな手が……! こ、これは気合全開でいかなきゃならないですね……!」


「ええと……それじゃ、質問なんですけど」


「はいっ!」


「俺たちがこれから目指す目的地……イゲィカディエンまでにはそれなりの距離があって、半転刻ビジンぐらいは旅をしなきゃならなくなると思うんですが。その間にある国々の中で、気をつけなくちゃならない神々の勢力圏内にある国って、ありますか?」


「……え? つまり、それって……」


「…………」


「…………」


「…………」


「え……ええとっ! ええと……つまり警戒すべき神々についての情報を求めてる……ってことで、いいんですよねっ!?」


「はい、そうです。ことによると、他の神に加護を与えられた人間が、勢力圏内や聖域に踏み入ることを、断じて許さないような神々や、その信徒がいるかもしれないと思ったので。そういう相手に対しての、エベクレナさまたちの観点からの、俺たちにも話せる情報があれば教えていただけないか、って思ったんですけど」


 よっし、とばかりに小さく腕を引くエベクレナと、彼女に向けて小さく拍手して見せる女神たちに内心ちょっと苦笑する。だが、頑張るエベクレナをちゃんと見守って、彼女がちゃんと認められるよう気をつけてくれる存在がいること自体は、ロワにとっても喜ばしいことだった。自分ではエベクレナの心を安らがせる役には立たないのだから、そういう存在がお一方でも多くいてくれたなら、その分だけロワも安心できる。


「う、ぅぅ……えっと! イゲまでの道のりっていうか、地理的な配置、っていうのはロワくんももうわかってるんですよねっ!? 確認ですけど!」


「あ、はい。ギルドの書庫から借りた本で、ある程度は調べました。とりあえず、普通に最短距離を進めば、ビュセジラゥリオーユ女王国-イシューニェンタ聖国-パニピエオン侯国-フィキティンレサ大公国-トトニコナ王国-イゲィカディエン、って順番ですよね」


「そうですねぇ……まぁパン-フィキ辺りはわりと前線に近いですから、ちょっと難儀するかもしれませんけど、前線の影響範囲を通らないようにしてイゲまで行くとなると、相当遠回りしなくちゃですし……普通に最短距離通った方がむしろ安全、って感じまでありますもんね。軽く調べた限りの情報によればですけど……」


「ええ、なんでなにも問題がなければその経路を通る予定ですけど。女神さまたちからすると、その旅程って、なにか問題ありますかね?」


『うーん……』


 女神たちは真剣な面持ちで考え込んだ。のち、真剣な表情を崩さないまま、女神たちにしかわからない議論を始める。


「ビュゥユとイシュニ辺りはまぁいいと思うんですよ。趣味の対象がまったくかぶってない分、基本ちょっかいはかけてこないと思いますし」


「百合厨国と聖職者フェチ国ね。まぁ基本私たちの加護対象とはジャンル的に全然関わりないわよね」


「でもね……パンが! あのパンパン国が! もうどうっしようもなく私的に心配なんですが! だってあそこあれでしょ、エロヒロイン製造国でしょ!?」


「そうなんだよねぇ。別にどっかの眷族が守護してるってわけでもないのに、ほんっとエロヒロインガンガン量産してるよね。作品のR-18部分にしかほぼ出番ないようなヒロインばっか」


「しかも聖職者フェチ国の隣国で、そっちから支援というか援助受けたりしてるくせに、ウリ娘の牙城のひとつって国でしょ!? 国上げて売色行為で金稼ごうとしてるとこでしょ!? 私的に不安しかないんですけど!」


「っていうかさ、カティフくんって、あっちこっち巡ってはいたけど、ゾヌまで来る時の途中通過国に、確かパンも入ってたよね? 売春大国通ってきたのに完全まっさらって、なんでなの?」


「あー、それはパンの『売春大国』のタイプを知らない人の意見だなー。あのね、パンでのエロいお店ってさ、基本高級志向なわけよ。だって曲がりなりにも『聖国』の隣国で、そっからちまちま援助とか受けてるってのに……まぁイシュニも経済的にはわりとゾヌにおんぶにだっこ的な面あるけど……とにかくそんな人らに慈愛と倫理と人道と宗教的救世欲で支援されててよ? 堂々とエロ系の店が山ほど軒を連ねてるとか、普通に顰蹙買うっていうか、外聞悪すぎでしょ?」


「あー、それはそうか……ならパンの風俗店って……」


「そ、基本フツーの人の目につかない、出入りも見られないような場所でクッソ高い金取ってクッソゴージャスなエロ体験させる、ってのがフツーなわけ。でなきゃホントにアングラの反社会的な店とかだね。一見さんお断り、どころか金と地位と権力ある人専門、みたいなのばっかで、そうじゃない店とかはむしろ厳しく取り締まられてんの。ま、むしろそーいう店しかないから、客がヒヒ爺しか来なくて、不幸なR-18美少女≒エロヒロインが量産されるのかもしれんけどね。イシュニにもヒヒ爺聖職者ってそれなりにいるし」


「うわぁ……」


「ま、パン政府は基本、対外的にはどの国に対しても『うちはなんの力も金を稼げる当てもない小国ですんでどうかお恵みを』ってスタンスだし、それにそぐわない商売は公的には禁止の対象なんだよね。そういう考え方する奴らが、国の金を稼げる金の卵になるかもしれない素材を、しょぼい金しか稼げないとこで消費するような真似、しないでしょ?」


「なるほどねぇ……貧乏人お断りの売色国なわけだ。むしろ国民たち自身も、自分たちの国にそーいう側面があるって知らなかったりするのかもね」


「いや……ていうか、アジュさん、よくそんなことまで知ってますね。私、今日ロワくんたちの話に出てきたからってんで調べてみて、それでようやくあちこちにエロヒロイン供給してる土地のひとつがパンだって知ってびっくりしたくらいなのに」


「そりゃ、一応パンってあたしの信仰がそれなりに広まってる土地だしねぇ。あたしの本来の勢力圏からは離れてるんだけど、飛び地的な信仰拠点みたいな? だからそりゃそれなりにいろいろ調べて、情報も状況も把握してるわけ」


「そ、そうなんですか……んー、となると……パンを通っても、基本的にはそこまで貞操に危険はないっぽい……? ですかこれ?」


「いや今のネテくんたちって相当金持ちでしょ? 私はすごく警戒しちゃうけど?」


「そうなんですけど、そういうお店ばっかとなると、どれだけ金持っててもコネと権力がなければ店に入れなさそうですし……パンの国府がロワくんたちパーティの情報を収集してて、ターゲットとして周知してる、とかなら話は別ですけど……」


「そーいうのは全然ないよ? パンの国府ってゾヌよりも基盤が脆弱で、とにかく明日の飯の種をなんとかすることで頭がいっぱいな人らが運営してるから。情報を集めるにしてもイシュニとかフィキぐらいで、ゾヌくらいにまでなるともう遠い異国の話、って感じだから。噂くらいは聞くかもしれないけど、顔は一致しないんじゃない?」


「ぬー……となると、そこまでやっきになってロワくんたちの旅路から遠ざけるのも……いやもちろん私たちのような一ファンが推しの動向を左右するような真似断じて許されないししたくないですけどね!?」


「はいはい、わかったわかった。じゃあ、フィキとトトはどうよ?」


「フィキはあたし的に超注目してるんだよね! カティくんの母国の兄弟国だし、盛り上がるネタが供給されそうな気配ぷんぷんっつーか!」


「それには同意。で、まぁ……トトはまぁ問題ないでしょ。あまり特色のない国だし、周囲に脅威がないわけじゃないけど他国を挟んでいるからそこそこ平和だし、なにか起きそうな気がしないわ」


「え、それフラグっぽくない? 油断してるところにいきなりぽっと出ヒロイン登場とかしたらどーすんの?」


「やめて! いやネタじゃなくてマジでやめてよ!? フリでも要望でもまったくないからね!?」


「本当にね、そんな悪夢はマジ勘弁してほしいですよね……で、まぁ。とりあえず結論としては、最短ルートを通っていくのに、そこまで問題はない、ってことでいいですかね?」


「同意~」


「まぁ……一応は、同意かな」


「まーあたしらが同意しようがしまいが、旅の道行きに直接文句つけるとかできないし許されないけどね、普通に」


「わ、わかってますぅ! そのくらいわかってますぅ! ……で、その結論をどうロワくんに伝えるか、ということなんですが……」


 それなりに長い間話し合ったのち、エベクレナは表情にわずかに疲労をにじませながら、ロワの方へと顔を向けた。


「ええと……お待たせしました、ロワくん。その、結論というか、議論はとりあえず決着したんですが……」


「はい」


「えぇと、まず、ロワくんとしては、道中の国々の信仰分布って知ってます?」


「え……ぇと、つまり、これから通る国々で、どんな神が信仰されてるか、ってことですよね? ビュゥユではビュセジラゥさま、イシュニではイキシュテアフさまが信仰というか、その神々が直々に守護を与えてるってことで国を挙げて崇められてる、ってことぐらいは知ってますけど、それ以上詳しいことはちょっと……」


「なるほど。まぁ、イシュニから先ってなると距離からして相当離れてますもんね、情報入ってきにくいですよね。ええと、まぁ基本的にはそんな変な信仰がはびこってるなんてことはなくて、普通に豊穣系の人たちと、あとパン-フィキ辺りはそこそこ前線から近いんで戦闘系とか……職人とか技術とかの人らがある程度とか。基本、商業とか交流とかの神の眷族は、この辺りの食糧事情を一手に握ってるゾヌっていうどでかい商業国があるんで、あんまり手を出されてない感じですかね」


「自分たちなんかが商売に手を出しても、ゾヌにかなうわけがない……っていう感じ、ですか?」


「はい。なんでその逆をいくというか、農産とか軍事とか、質実剛健単純質朴、的な方面へ舵を切ってる国が多くて……文化的にもあんまり見るべきものがないって判断されちゃうくらい、バラエティのないシンプル万歳的な国が多くなりがちなんです、この一帯。学問系の神の眷族も敬遠されることが多くて……ちょっとエキセントリック、ぐらいの信仰もわりと白眼視されちゃう国が多めというか。なので、そこまで奇矯な神の眷族の勢力下ってことはないと思いますよ。神次元しんじげんで私たちの知らないこの地域にまつわる陰謀が繰り広げられてる、とかじゃなければ」


「そ、そうですか……ゾヌの近在の国々は、ゾヌの食糧生産力と経済力に頼ることで国を成立させている、寄生国家ばっかりだって前に聞いたことがあったんで、少し心配だったんですけど」


「あー、それはホントだね。なにせゾヌの近くって魔物強いじゃん? ゾヌの周囲の陸続きの地域って、なっかなか開発進まなくてさー。領土的に空白状態っつーか、ゾヌだけぽつんと陸の孤島状態で街の大きさだけ広がってく、みたいなのがわりと長く続いたんだよね」


「あ、それは聞いたことがあります」


「うん、んでさ、その『空白状態』ってとこに目をつけた連中っていうか、神の眷族が出始めたんだよね。国家に支配されてない領土ってことは、切り開けば丸ごと自分たちのもんにできるじゃん? まぁ魔物に対処するために必要になるコストを考えると、コスパ的に普通の国を打ち立てようって人らは手ぇ出しづらいだろうけどさ、神の眷族自身が主導して、自分たちが守護する国を打ち立てようって考えるとさ、これ以上おいしい土地ってそうそうないんだよね。どこにも紐づいてないから、基本自分らの好きなように国創れるし、すぐ近くにどでかい商業&食料生産国があるわけだから、神の眷族の権威使ってそれなりに金は引っ張ってこれるし、なんかの売りさえ作れれば、国民が飢えや貧困に苦しむこともないしさ」


「えっ……神々が直々に国を打ち立てる、なんてことがあるんですか!? 人の世界には干渉しないのが掟だったのでは……?」


「あー、ちょっと語弊あったかな。基本的に国を創るのは人次元にんじげんの子たちだよ、もちろん。でもさ、ロワくん、この大陸で『神が直々に守護を与えている』ってされる国の成り立ちって、知ってる?」


「え、いえ、あまりよくは……神々が加護を与えたり、使命を授けるに足るとして神託を与えたりした人たちが、その能力や神から与えられた使命っていう権威を使って、新しい国を創って、加護や神託を与えてくれた神を国の主神として崇める……くらいのことしか」


「それだけわかってればじゅーぶん。要はさ、守護を与える国家っていうのはさ、人に加護を与えるのの延長線上なわけよ」


「そうなんですか?」


「そうそう。まず人次元にんじげんの子が『国を創りたい』とか……『自分たちの理想郷を創りたい』みたいなことを考えるとこから始まんの。で、そういう子を見つけた神の眷族が……もともと加護を与えてた子がそういうこと考え出すってこともあるけど、その子の考える国が自分の神の眷族としてのスタンスに合ってたら、その手助けをするってことは神次元しんじげんの法律で許可されてるわけ」


「あ、なるほど……」


「で、その手助けの中には、自分を信仰する子の中にいい人材がいたら神託を与えて国造りに協力させたり……もちろんこれも本人に協力する意思があってこその話ね、国を創るのにいい場所があったら神託として伝える……これは法務部の人らの、その場所が適切かとか、人次元にんじげんの子がそこで国を創れって強制されてるって感じる神託になってないかとかのチェックを通り抜けなきゃなんだけど、まぁそういうことも含まれるわけよ」


「ああ、なるほど! そういう風に厳しい検査を通り抜けることができたなら、確かに神々が国を創るって形になることもありうるわけですね!」


「まぁ、神の眷族側だってフツー国家打ち立てた経験ある奴なんていやしないんだから、あくまで一つの案とか選択肢を広げるとか、そういう範囲にとどまるようにしてるけどね。普通に人間一人に加護を与えるより、ずっとでかい神音かねつぎ込んでひとつの国を創るわけだから、失敗してほしい奴なんてフツーいないし。まぁ実際に国家が成立して、その国の国民が朝に夕にその眷属に祈るようになったら、使った神音かねを取り返して余りあるぐらいの神音かねが入ってくるわけだけど」


「あ、神々が国を創るのには、そういう理由が?」


「いやー、そんくらいでわざわざ国家創ろうなんて考える奴、フツーいないんじゃないかなー。単純に人に加護を与えてその子の人生遠くから見つめてドキワクすんのとは違って、国家創るなんて大事業、考えることも心配事も桁違いに増えるし。たいていの奴は普通に仕事して神音かね稼ぐ方がいいや、って考えるんじゃない? それでも国を創りたいって奴は、『自分の理想の国がこの大陸に存在してほしい』『自分の理想の国でなければ救えない、護れない、手に入れられないものがある』って本気で心の底から考えてる奴らだよ。まー、ある意味ガチの信念持ってる奴、になるんじゃない?」


「そ、そうなんですか……確かに、よほど高い志がなければ、あえてそんな苦労背負い込みたいとか思いませんもんね……」


 ロワだって辛酸をなめた経験はあるし、社会の理不尽を押しつけられる階層に属してはいたのだが、だからって自分たちの国を興そうなんてことは一度たりとも思ったことはない。ある意味思い込みが激しいと言えるだろう人たちが、その一途な思い込みを最後まで貫き通してこそ、国を興すことができるのだ。それは確かに、神が加護を与えるに足る行為だし、神々自身が苦労や手間を抱え込んででも、力を貸したいと願う価値のある志なのだろう。


「ま、実際には百合厨とか聖職者フェチとか、ガチゲイとかYES『ピーッ!』NO『ピーッ!』とか『ピーッ!』は文化とか、そういう自分のヘキ全開の国創りたいっ! って奴らが九割五分だけどねー」


「いやアジュさんあんたいくら聞こえてないからってそれ口に出したら普通にセクハラだからね? 万一聞こえたらエベっちゃんにも殺されるからね? 気をつけなさいよ?」


「だいじょぶだいじょぶ、ロワくんがこの部屋じゃ神祇術以外の術法使えないってのは確認してるし……セクハラは下手したら処されるって状況で綱渡りしながら発言するから興奮するってとこあんでしょ?」


「いや同意求めないでよ、私そういうアブノーマルな趣味ないからね?」


「眼鏡フェチはアブノーマルじゃないの?」


「は!? 眼鏡を愛好するのは女たる者当然以前の嗜好でしょうが! 眼鏡愛は普遍にして自然、むしろ持ってない方がおかしい!」


「はいはい……っつかエベっちゃんさっきから黙ってるけどどうかしたの? まーゾっさんのことすごい目で見てるからだいたい理由わかるけどさ」


「グギギギギギギ……許すまじ許すまじ……! 私が一生懸命知的女性ムーブを試みてる時に、さらっと横入りしてきて会話の主導権持っていくとか許すまじ……! っていうかなんですそのごく自然な知的女性っぷり! できる女感ぷんぷんじゃないですか! しかも口調はごくざっくばらんとか、その役私がやりたかったんですけど!? ちょっとでも推しから尊敬の目で見てもらえたらとかいう私のささやかな夢を当たり前のようにさらっていくとか……! ズルすぎる格好よすぎる、グギギギギ」


「エベっちゃん、あんたゾっさんのこと褒めたいの? けなしたいの?」


 と、ゾシュキアがちらり、とエベクレナの方に視線を向ける。さっきからなにやらギュマゥネコーセやアーケイジュミンと話していたが、落ち込んだり顔を上げたりすさまじい顔でゾシュキアを見つめたり、と百面相を始めたので、さすがに気になったのだろう。というか、別にこちらにはっきり指図してきたわけではないのだが、この仕草はゾシュキアの合図かな、と受け取ったロワは、エベクレナの方へと向き直り声をかける。


「エベクレナさま。それで、これから向かう国々で信仰されている神々は、俺たちが国に入ったり、信者と関わるのを嫌がられる、っていうことはないんでしょうか?」


「はっはいっ! ええとっ! そういうことは微塵もないはずですっ! と、というかですねっ……神の眷族が人次元にんじげんの人相手に神罰下すとか、よっぽどの状況じゃないとできないので。その人が世界を滅ぼそうとしてるのを手段を選ばず止める、ぐらいじゃないと。なんで、気にしなくていい……と、思いますよ?」


「そうですか……?」


 ロワが調べた限りでは、そういうよっぽどの状況でなくても神罰を下してきた神が、これからの旅の途上には存在しているはずなのだが。だが、そのロワの懸念を心を読んで理解しているだろう女神たちが、それについて特に反応しないということは、ことによるとその情報が誤報、虚偽である、という示唆なのかもしれない。改めて時間がある時にもう一度調べ直してみよう、と心に決めつつ、ロワは女神たちに頭を下げた。


「ありがとうございます、エベクレナさま、みなさん。とても参考になりました」


「お、ぉぅ、ど、どういたしまして……?」


「なんで疑問形なの」


「私が役に立てた気が微塵もしないからですよ、言わせないでくださいよ恥ずかしい!」


「いや本気で恥ずかしいしそーいう風に決然と言う台詞じゃないからね、それ」


「うぅう……と、というかですね! あのですね! 私、ロワくんにお聞きしたいことがあったんですけど! というか会話のネタを作るために『聞きたいこと』を必死になって考え出したんですけど!」


「いや、本音なんでわざわざ口に出して言うのよ。ロワくんに聞こえないからって。黙って心の中だけで言いなさいよ、私たちが聞いてもどうしようもないんだけど?」


「謁見部屋の仕様への対策としてできるだけ隠し事は口に出すようにしてるんですっ」


「いや口に出したらむしろ『エベクレナさまなに言ってるのかなってロワくんが気にする』→『謁見部屋の仕様がロワくんの疑問をキャッチする』→『口に出して伝わるように言わなきゃならなくなる』って展開にならない?」


「あっ……え、じゃあなんですか、私らがフィルターかけてしゃべってるとか悪手なんですか!? なんか最近フィルターかけてしゃべってる時間長いかも、とか思っちゃうくらい長々使うのむしろ逆効果!? 気を抜いた時に本音も秘密も丸ごと明かさなきゃならなくなる展開のフラグ!?」


「っていうか、むしろロワくんの心優しさに感謝するとこじゃないの? それってつまり、ロワくんが『エベクレナさまたちが隠したいと思ってることみたいだから、聞かないでおこう』って心の底から本気で考えてる、ってことっしょ?」


「………ッッッ!!! 神ッ……私の推し、神ッ! まさに全天一の慈悲ッ……! 神のごとき優しさッ……!」


「というか、それより早く聞きたいことっていうのを聞いたら? ロワくん顔を赤くしながら素直に待ってくれてるじゃない」


「っっ!! すっすいません申し訳ありませんっ、無礼の上に無礼を重ねる振る舞いをっ! えっええとですねつまりですねっ、これから修行回がしばらく続くわけじゃないですかっ!」


「は……はぁ」


 修行『回』ってどういう意味だろう、と思いつつもたぶんエベクレナはそんなこと聞かれても嬉しくないだろうな、と聞き流してうなずく。


「ッッ神ッ……! あっいえそのそうじゃなくっ、これから仲間のみんなと一緒に修行していくにあたってですねっ! 他のみんなはその……加護をもらってるから、成長効率が段違いにいいわけじゃないですか。なんでその……どうしても差を感じちゃう場面が出てくる、と思うんです。だからその、いや別に聞きほじりたいわけじゃホントにないんですけど! ……愚痴とか、文句とか、ないのかなって。私たちでよければ、聞きますよ?」


 おずおずと訊ねてくるエベクレナは、いつも通りに美しく、そして心底気遣わしげだった。たとえ最初は無理やり絞り出した質問だったとしても、この質問は聞いておくべきだと、自分たちにしか――実際に仲間たちに加護を与えている超越者にしか聞けないことだと、感情の正当なぶつけどころになれないと、懸命に考えた末に投げかけてくれた質問なのだろう。


「エベっちゃん、あんた思惑バレバレじゃん。フィルターかけてもかけなくても、だいたい心情読み取られてない?」


「っつか、注目すべきはロワくんがそれでも好意的に受け取ってくれてるとこだよね~。まさにスパダリ少年彼氏。いや~心読み取って悶え転がるのを必死に耐えてるエベっちゃん含めて見てて寿命伸びるわぁ~」


「まぁ十五歳を少年と呼ぶべきかどうかってとこには議論の余地があるけど、おおむね同意ね。眼鏡じゃなくても、素直に応援できる男女の組み合わせは心の栄養」


「いや十五歳は少年でしょちゃんと。思春期とか『ピ――ッ!』盛りとかいろいろ言い方はあるけどさ」


「いやいや少年過激派の人は『ピーッ!』生えたらアウトって人もいるわよ?」


「まぁ十五歳くらいだと生え方にも個人差あるだろうけどね。すでにおっさんのごとくもじゃもじゃって子もいれば、パヤパヤで産毛みたいな子もいるし」


「うんうん、成長差っていろんなタイプのネタに発展できてエロいよね~」


「っていうかゾっさんあなたどこで見たわけそんなとこ」


「あんたらちょっと黙っててくれませんかね、こちとらロワくんの可愛さに顔面が作画崩壊するのを必死こいて耐えてるんですが……!?」


「いや、だからあたしらのことなんて気にせずさっさとロワくんの想いに応えてあげたら?」


「応援しているように見せて悪意しかありませんねその台詞!」


「あの……エベクレナさま」


「はっはいっ! なんでしょうかっ!」


『さぁ盛り上がってまいりました!』


『いいぞー! やれー! ぬげー!』


『まぁ本気で脱ぎ出したら普通に通報するけどね!』


『あんたら文字会話にしたところで囃し立てる言葉ちゃんとこっちからも見えてますからね!?』


「俺は……少なくとも自分で考えてる分には、みんなの成長に置いていかれることを、そこまで気にしてるつもりはないんです。というか、置いていかれるのが当たり前で、そもそも今のパーティに俺が加わり続けるってこと自体よくないだろうって思ってましたから。俺も、パーティから外されて、置いていかれるんだろうって、当然みたいに思ってました」


「っ………、はい」


「でも、みんなが当たり前みたいな顔で、俺がついてくるって思い込んでるんで。それがしっかりわかっちゃったんで」


『同調術の人間関係におけるチートっぷりすごいわね。鬱フラグを問答無用でブレイクしてってる』


『やはりチートは人類を救う……』


『しっ、今いいとこ、集中して!』


「だから今は、俺にできるところまでついていけたらな、って普通に思っちゃってて……」


『うあぁぁあ『思っちゃってて』なんて言わなくでいいんですよ! 思っていいんです、幸せになっていいんですよ! みんなの想いを! 愛を! 素直にシンプルに受け止めてあげて!』


『いやエベっちゃん、あんたこそ集中しなよ、なんで推しに想い告げられながら文字会話してんの!?』


『なに言ってんですかこの状況で思いの丈を吠え猛らずにいられると思ってるんですか私が!? 推しのクッソ可愛い告白顔眼前で公開されてんですよ!? 文字ででも叫ばなきゃ正気保てませんよ! ああもうホンット私が邪魔! 私の存在が邪魔すぎる……!』


『いやそれは女としてダメでしょと言ってあげたいけど、正直気持ちわかるわ』


「だから、あんまり、愚痴とか、そういうの、意識したことはなかったんですけど」


「………はい」


「でも、その……もし、そういうの言いたくなったら。……聞いてもらっても、いいですか?」


 照れくさくなりながらもエベクレナに向けて笑いかけると、エベクレナは驚くほどの真顔で深々とうなずき、「……………はい」と、長い沈黙の後、深々とうなずいてくれた。


『よく頑張った! 感動した!』


『最後まで顔面崩壊させずによく頑張った! まーだいぶ鉄面皮的な真顔だったけど、この場合はしゃーない!』


『うんうん、暴走してロワくんを人次元にんじげんに強制送還させることもなく、本当よく頑張ったわエベっちゃん。推しってだけじゃなく、可愛い男の子が心を開いて思いを打ち明けてくれてる時に、それをぶっちぎるとか絶対許されないもんねぇ。頑張った! お疲れさま!』


『……… 私』


『うん?』


『え、いやそのスペースなに?』


『まだ 生きて る んです か ―――』


『いやエベっちゃん! 落ち着け! 正気に戻れ!』


『推しの前で心停止したくなる気持ちはわかるけど、マジでやったらトラウマどころの話じゃないわよ!?』


『しっかりしてエベっちゃん! 戻ってこーいっ!』


 ずっと真顔だったエベクレナが再びまともに話ができるようになるには、少なくとも数短刻ナキャン程度の時間が必要だったが(その間は他の女神たちが話を繋げてくれた)、エベクレナが時々そんな風に固まるのは今に始まったことではないので、ロワは別に気にも留めなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る