第4回 文章を考えてみよう(4)視点の基本篇その2

 コメントをいただいたのですが、さいきんのラノベやウェブ小説は一人称が多いとか…… このへんはどうしてそうなるのでしょうか。いったん考えてみる回を用意しました。まず一人称というのは「僕は~と感じた」というような視点の在り方ですね。内的固定視点といいます。視点人物の目から見たら全知なので限定的全知という位置づけになります。


 ここでまず誰でも分かりそうなことは、「僕は~と感じた」などと表現することによって読者が視点人物と親密になり一体感を持つことで、いま、ありありと文章からイメージを取り出せるという点です。主人公の気持ちだってストレートに伝わります。


 まずは一体感、没入感の問題がひとつ。


 逆を言えば、それだけ読者から見て感情移入のチャンスが途切れない小説が好まれていることが挙げられますよね。


 これがふたつめです。

 

 ややこしい言い方になってしまいましたが、連載という感情移入が一度や二度、複数回ほど途切れる場所では、連載分を読み終われば読者の関心や理解、感情移入は一回リセットされます。もちろん大まかなストーリーは忘れないとは思いますが、複数の連載を追っている読者から見れば、リセットされたときにリマインドされる情報が少ない一人称に人気が集まるのは当然と言えば当然です。


 三人称一元視点は視点のありようの変化がどのようになるかは不確定ですし。話を追っていたら、多元視点になってしまうリスクも読者から見ればありますね。もちろん、三人称多元視点の形式が悪いとは言いません。三人称多元視点の小説は一気読みして感情移入が途切れないことを利用してデザインされた結果だとわたしは思います。またじっくりイメージを広げながら読むスタイルにも適していますよね?


 ウェブ小説やライトノベルは大量に読んで消費されるものです。そのなかで読者の関心と興味、そして感情移入を損なわない書き方は今後も要求されると思います。連載形式を取る場合は、一人称と三人称一元視点のどちらを取りますか? 作家はここで何が大切かを見極めましょう。どちらもおなじだけの選ぶ価値が存在します。その価値をよく考えた上で戦略的に人称の問題を考えたいですね。


 また、表現したいものがある小説を書いていきたいひとたちは小説への知識を蓄えて表現に生かす手立てを考えましょう。ひとつなにかを学ぶことで小説の世界は広がります。自分の好みの方向へと作品の舵取りができるようになります。これは主観的な問題ではなく、すごく客観的なかたちで現れます。光を与えるために学ぶことを続けましょう。応援しております。

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