第2回 文章を考えてみよう(2)心理描写篇
小説に向き合う旅は続いています。とあるコンテストの一次を通過したときにいただいたコメントでいくつかの指摘を受けました。そのうちのひとつ。心理描写、心情描写に絞って、きょうは検討してみます。
自作「リミット・オブ・ワールド」から引用します。
「朝テレビのスイッチを入れると、ニュースキャスターが「おはようございます。世界の終わりまであと七日になりました」と言う。
薬指の指輪を外すとカレンは「じゃあ、行くわ」と言って、玄関から出ていった。コウは引き止めない。引き止めたところで人の気持ちは変えられないし、世界の理は変わらない。」
指摘されて初めて気がついたことですが、わたしは心理描写や踏み込んだ心情描写が出来ていなかったのです。いろいろインターネットを調べて、キャラクターの心を的確に説明するにはどうすればいいのか悩みました。
とあるページで心理描写は作者の頭のなかでキャラがどんなに活き活きと「見えて」いても、それが文章で伝わってこなければ意味がないということ学びました。
小説のなかで視点人物の目や耳を借りて読者は作品を読みます。誰がなにを認識したか、感じ取ったかで読者がドライブされていく。それが小説における「動き」なのです。これは「さっきまで見えてこなかったことが見えてくる。気にならなかったことが気になり出す。感じなかったことを感じ出す。見えてはいても視界に入らなかったことが視界に入り出す」などです。
そうした無意識の取捨選択を追いかけていくことが「心理描写」の本質なのです。ではさきほどの文章を直してみましょう。
「 朝、テレビのスイッチを入れると、ニュースキャスターが「おはようございます。世界の終わりまであと七日になりました」と言う。
指輪を見る。光り輝く幸福な時間の象徴だったもの。カレンは「じゃあ、行くわ」と言って、コウの顔もろくに見ないで部屋から出て行った。とおくで部屋のドアがバタンと閉じた音がした。失ったもの、これからの自分のこと、思い返すたびに胸に大きく空いた穴を自覚する。ほんとうに引き止めなくて良かったのか。できることならそうしていたさ。でも…… 波立つ心をぐっと堪える。背後からはもうすぐ終わる世界のひんやりとした冷たい光が差し込んでいた。」
いかがでしょうか。もちろんもっと踏み込んで書くことも、もっと無意識の取捨選択を追いかけていくこともまだまだ出来ますよね。心理描写や心情描写は研究すればするほど、リアリティが増します。特にリアルな人物を配した人間ドラマには必須だと言っていいでしょう。
小説の心理描写の直し方。参考になったでしょうか?
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