第7話
遡ること数分前、パパ活相手通称アラサーに僕は友達宣言をした。
今思えば、良く分からない状態だなと思う。
なぜアラサーと友達になったんだろう。
いや、そもそもまだ友達になっていないのでは?
勢いのまま僕が友達になってやると言ったはいいが、もし相手が了承しなかったら、どうなるんだろう。それって拒絶されたってことだよね。
俺、お前の彼女になるわ。
と宣言して、
いや、ごめん。無理。
って言われたときの圧倒的な羞恥心。
それを体現しているのでは?
今更ながら、顔が熱くなってくる。上半身から下半身まで、燃え盛るような炎が全身を駆け巡っていき、手からは変な汗が付きまとっていた。
頭はオーバーヒートを起こし、完全に機能不能だ。
僕があわあわと挙動不審にしていると
「えっと、大丈夫ですか」
気遣うような優しい声音が聞こえてくる。
周りを見渡すとさっき入ってた店の看板がある。
店内から出て外にいるようだ。
僕が混乱している間に会計を済ませていたらしい。
「ふぅーー」
状況を整理していると、自然に冷静さが戻ってくる。
自分を実感すると、少しスカートが乱れていたことに気付く。
あ、ぼく女装していたんだ。
当たり前のように着ていたのですっかり忘れていた。
スカートだけでなく、襟もスカーフも整えて、男性に向き直る。
「今日はここでお別れにしましょうか……少し疲れました……」
今日は?
僕は何を言ってるんだ。
「また、連絡します……」
連絡するの?
僕が?
意図して出た言葉ではなく、無意識に発した言葉だった。
でも、一度冷静に考えた方が良さそうだ。
このまま続けても、僕も男性も混乱する。
だから、一旦あいだを開けて話し合いをした方がいい。
「じゃあ、さよなら」
男性が何か発する前に、脱兎のごとく走り去った。
帰宅すると、リビングでお姉ちゃんが待ち構えていた。
そういえば、お姉ちゃんも付いてきてたよね。
多分、どこかで先に家に帰ったのだろう。
「ただいま、お姉ちゃん」
「……」
???
お姉ちゃんからの返事がない。
こんなこと初めてだ。
「お、お姉ちゃん?」
お姉ちゃんの瞳は虚ろだった。
一歩ずつ一歩ずつ無言で僕に近づいてくる。
こ、怖い……
「お、お姉ちゃん?どうしたの?」
もう一度呼びかけたけど、返事がない。
そして、僕の目の前に立つと……
ぎゅーっと抱きしめられた。
「さえちゃんごめんね。怖かったよね」
「え?お姉ちゃん、僕なんともなかったよ」
「ごめんね、ごめんね、ごめんね、ごめんね、ごめんね、ごめんね」
「お姉ちゃん!!僕、大丈夫だったよ!!」
「ごめんね、ごめんね、ごめんね、ごめんね、ごめんね、ごめんね」
僕が何か言うたびに謝罪を述べる姉。
完全に僕の声が届いてなかった。
さらにハグも終わらない。
強い力で抱きしめている。
こちらが抵抗しても離してもくれない。
この束縛が一時間も続いたのだった。
パパ活、姉の代わりに僕がしてみたら 未知 @IIMICHI
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