第5話

 休日ということもあり、友達と遊んでいる中学生集団や子供連れの親子、スーツ姿のサラリーマンなど様々な人の従来が多い小松駅。そこにセーラー服を着た少女が一人佇んでいた。

 ショートヘア―に小柄な幼い顔立ち。通常のスカート丈よりも短くアレンジされた制服に白のソックスを身に付け、女子中学生然とした可愛らしい少女、否かわいい可愛い弟がいる。

「あぁ可愛いよー可愛いよー」

 わたしは今日の目的も忘れて、弟に見惚れていた。


 【問題】僕はいま何をしているでしょう?

 【正解】絶賛、黒歴史作っています。

 姉が中学の頃、着ていた制服を僕がいま着ているのであった。

「はぁーー」

 重いため息が漏れる。

 なぜこんなことをしているのかと昨日の出来事を回想した。


 それは僕が会いに行くと言ってから始まった。

「おねぇーちゃん、だきょーします、妥協します!でもひとつだけ条件をつけるよ!」

「な、何かな?」

「わたしも行きます!」

「えええ」

「かわいい弟がクソじじいにいじめられないか監視します」

「僕はだいじょうぶだよー。一応、男だし……」

「ダメなものはダメ!!」

「わ、わかりました」

「そしてわたしが女装させます!」

 お姉ちゃんは恍惚と目を輝かせていた。


 まぁいろいろあり、今に至る。

 約束の時間は午後1時で良かったよね。

 あと五分後だ。

 緊張してきたな……

 昨日は勢いのまま、行くって宣言したけど、結局何をすればいいのかな?


 ぼーと駅にあるモニュメントをみて、過ごしていたら。

 突然、話しかけられた。

「紗奈さんですよね?」

 紗奈は姉の名前だ。

 この人がパパ?ってやつかな?

 声をかけられた方を向くと、そこには。

 スーツ姿で中肉中背の男性がいた。

 特筆すべき点はないが、あり大抵の言葉で表現すれば、サラリーマン風であった。

「は、はい」

 緊張しているのか、声がうわずった。

「すいません。遅くなってしまって……急に会社から連絡があり、それに対応してしまったらこんな時間になってしまいました」

 待ち合わせ時刻よりも5分遅れただけなのに丁寧に謝罪をし、申し訳なさそうにしている。すごく律儀だ。

「い、いえいえ大丈夫です。さっき来たところなんで……」

 僕たちは軽く自己紹介をした。

「つかぬ事、お伺いしますが、紗奈さんは本当に大学生なのでしょうか?」

 僕の恰好をみて不審に思ったのだろう。

「えっと、これはコスプレで……」

「あぁそうですか」

 何とか誤魔化せた――

 声でバレそうなものだが、僕がもともと中声ということもあり、不自然ではないようだ。

「あ、あのーこういうの初めてで何をすればいいのか……分からなくて」

「そうでしたら、もし嫌でなければ私とお食事でもどうですか?」

「は、はい。大丈夫です」

僕はペコと首肯した。

「あと、よろしくです」

「はい。こちらもよろしくお願いします」

相手の男性の方は礼儀正しく社交的で、こんな中学生みたいな僕にも敬語で対応してくれる。もしかして、良い人なのかな……


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