10話 わたしと私とブッコロー

 綾は答え合わせをするためにまた夢の中に来ていた。まあ、正確には寝ただけなのだけれど。


「あなたは誰。」

「いやあなたはわたしだよね。」


『正解だよ』


そう言って現れたのは幼いわたしにそっくりだった。


『初めまして、そして見つけてくれてありがとう』

『あなたが大切なことを忘れた日、私はあなたの代わりに記憶を持って生まれたの』


「みーちゃんのことだよね。」


『えぇ』


静かな空間に綾と彼女の声だけが響き渡った。


「みーちゃんと言ったかしら、あの猫。

あの子を亡くしてから、ある日を境にあなたあの子の記憶をさっぱり亡くしたのよ。嫌なことを忘れて、前を向けるように。」


あとはもうわかるでしょう



そう彼女が言う。


そうだ。みーちゃんを返してくださいって。あの後、神様に神頼みに行ったんだ。

きっとその後、彼女の言うように忘れたんだろう。


なら、やることは決まっている。


『頑張りなさい』


「また、会える?」


『    あなたが会いたいと思えば、』


「じゃあまたね。」


わたしは夢から目覚める。

だから彼女の言った一言を聞かなかったんだ。






『        ごめんなさい   』

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