3 ブラッドリー・モーガン 10
アドルフが階段から転げ落ちて三人の関係が変わり、気づけば俺たちは高等学校の三年生になっていた。
俺とアドルフは同じCクラスに在籍し、勉強らしい勉強もせずに怠惰な学生生活を過ごしていた……。
****
休み時間――
俺たちは高等学校に入学してから友人になったラモンにエミリオを交えて創立記念パーティーについて話をしていた。
「そう言えば、お前達パーティーのパートナーは決まったのか?」
エミリオが俺たちを見渡してきた。
「何だよ、決まっていたらお前たちに言うに決まってるだろ」
「ああ、当然だ」
ラモンが口をとがらせ、アドルフは頷く。
「え? アドルフ。お前には婚約者のエディトがいるじゃないか? 当然パートナーにするんだろう?」
俺はわざとアドルフに尋ねた。
「まさか! 俺があの女を苦手なのは知ってるだろう? とにかく、頭の良い女は嫌なんだよ。 何だか見下されているようで気分が悪い」
こういうときのアドルフはいつも視線をそらせるように答える。あいつは強がっているけれども、本当は心のなかで葛藤しているのかもしれない。
「そうだ、忘れていたけどアドルフには婚約者がいたな? いや〜それにしても羨ましいよな〜。あんなに美人な婚約者がいるんだから。いらないなら譲ってくれよ」
この中で女に一番手が早いラモンがとんでもないことを言ってきた。
すると……。
「馬鹿だな。相手は意志のある人間だぜ? 譲ってくれと頼まれて、はいどうぞって俺の一存で返事できるはずないだろう。ブラッドリーもそう思うだろう?」
アドルフが突然俺に話を振ってきた。
「あ、ああ……確かにエディットの意思も重要だよな」
冗談じゃない。俺が幾つの頃からエディットに恋してると思ってるんだよ。ラモン、お前なんかに譲れるか。
「そうだな……でもブラッドリー。お前ならいいんじゃないか?」
「え? 何だって?」
アドルフの言葉に思わず聞き返してしまった。
「お前は昔からエディットのことをよく知ってるからな。どうせパートナーが決まっていないなら、お前からエディットに声を掛けてみればどうだ?」
「あ、ああ……そうだな。よし、お前の許可を得たからな? エディットを誘ってみるよ」
「……頑張れよ」
その時のアドルフの顔は……どこか少しだけ悲しげに見えた――
****
キーンコーンカーンコーン
授業が終わるとすぐに俺は席を立った。
「ブラッドリー? 何処へ行くんだ?」
案の定、隣の席に座るアドルフが尋ねてきた。
「決まっているだろ? エディットのところだ」
「え?」
一瞬アドルフが目を見開く。
「何だよ、そんな顔して。大体お前が言ったんだろう? エディットを誘ってみろって」
「それじゃ……今から誘いに行くのか?」
「ああ、当然だろう? グズグズしていたら同じクラスの男に先を越されてしまうかもしれないじゃないか」
「確かに……そうだな。頑張れよ、ブラッドリー」
「勿論だ! じゃあな!」
そして俺はカバンを持つと教室を飛び出した。
見てろよ、アドルフ。必ずエディットをパートナーにしてやるからな――
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