第73話新しいおもちゃに興味深々な彼女

(まえがき)

 昨日の夜にも1話更新しているのでご注意ください。

 


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 夏樹に洗濯ばさみを胸につけられた恨みを晴らすべく、俺はおもちゃ屋さんで挟む力を調節できるようなおもちゃを探していた。

 一人で選ぼうと思っていたのだが、なんでか横で俺に助言をしてくる子がいる。


「それ、あんまり痛くなさそう」


 俺が手に取る胸を責めるおもちゃを品定めしているのは紛れもなく俺のカノジョである夏樹さんだ。

 いや、仕返しで自分に使われるおもちゃを普通に一緒に選びに来るか?


「ったく、仕返し用のおもちゃなんだから、一緒に見に来るなって」

「……確かに。湊に何を使われるか分からないままの方が興奮するかも」


 夏樹はほかのところ見てくるねと大人のグッズ売り場から出て行った。

 一人になった俺は色々と見る。

 にしても、胸用のおもちゃって結構色々とあるんだな。

 取り敢えず、夏樹を痛めつける用途にも使えて、普通に気持ち良くなるためにも使えそうなのがいいだろう。

 俺は挟む力を調節できて、振動もさせることもできるクリップ型のおもちゃを重点的に探して見た。

 が、しかし、


「魅力的な商品が多すぎる……」


 その場で誰もいないことを確認し、俺はボソッとつぶやいた。

 そう、胸を責めるためのおもちゃ達が俺の購買意欲をひたすらに煽ってくるのだ。

 痛めつける用途にも使える挟む強さを調整できるクリップ型の振動するおもちゃを買う気だったのだが、カップ型の吸盤みたいに吸い付いて中心部にはグルグルと回るアタッチメントがついているおもちゃが非常に俺を魅惑してくるのだ。


 パッケージに描かれるイメージ絵がマジでグッとくる。


 彼女である夏樹をこんな風にできたら……と思うと、興奮が止まらない。

 そして、気が付けば……。


「はぁ……。当分は節約だな」


 夏樹の凄いところを見たくて、目的のおもちゃ以外も買ってしまうのであった。


   ※


 おもちゃを買った日の夜のことだ。

 俺は連日の疲労で今日はする気がなかったのに、もじもじと夏樹は俺に迫ってきた。


「おもちゃ買わなかったの?」


 夏樹は俺に道具を使われるのを期待してか、落ち着きがなくもじもじとしている。

 だがしかし、俺は今日は休みたい。絶対に休みたい。

 なにせ、おもちゃで遊ぶのなら、万全のときに遊んだ方が楽しいに決まっているのだから。


「ああ、明日な」

「なんで?」

「俺がもう限界だから……。夏樹と新しいおもちゃで遊ぶのなら元気な時がいい」

「……まあ、わからなくもないね」


 感受性豊かな変態である夏樹は俺の言い分をすぐに理解してくれた。

 夏樹は俺が昨日は絶不調だったことを知っている。

 それに、洗濯ばさみで痛めつけたのを申し訳なくは思っているらしい。

 だからか、今日は本当に俺を休ませてくれるようだ。


「ま、明日は期待してくれ。新しいおもちゃで遊ぶんだし、俺もガチで気合入れる」


 今日はお休みで明日は頑張る。

 そうなるはずだったんだが……。

 夜な夜な夏樹がベッドから抜け出てゴソゴソしだした。

 蠢く夏樹に反応し目が覚めた俺は薄目で何をしてるんだろうな~と監視していると、夏樹は俺が今日お出かけの際に持っていったリュックを漁りだした。


 そして、リュックの中から……。


「あ、良さそ……」


 俺が買ったばかりのおもちゃを取り出した。

 吸盤型でグルグルとアタッチメントが回転するのではなく、挟む強さを調整できるクリップ型で振動するの方だ。

 で、夏樹はそれを手にした後、ベッドの方に戻ってきた。


「起きてないよね?」


 そういって夏樹は俺の頬をつねる。

 起きているのがバレないように俺は無反応を突き通した。

 

「大丈夫そうだね……」


 頬をつねっても、大した反応が返ってこなかったのを確認し夏樹は……。

 おもちゃのパッケージを開け始める。

 あ、うん。凄くいい。


 俺に内緒でおもちゃが気になってしまって試したくなった夏樹を見ていると、堪らなくなってきた。

 日々、強めに弄ってくる夏樹のせいで物理的な刺激には慣れているが、精神的に男心に来る刺激には弱い俺。


 正直に言うと、凄くドキドキである。


 すっかりと目が覚めた俺の前で、夏樹はおもちゃで遊び始める。

 夏樹は自分で胸にクリップ型の振動するおもちゃをくっつけると、緊張した様子で振動をオンオフするスイッチを押した。

 ――スマホのバイブと同じかそれ以上に大きい振動が部屋に響く。

 さすがの夏樹もこれでは俺が起きてしまうと思ったのか、部屋を出ておそらくトイレへと向かった。

 一人部屋に残された俺はというと……。


「めっちゃ見たい……」


 夏樹がおもちゃを使って慰めているところが気になってしょうがない。

 新しいおもちゃで遊ぶのを我慢できずに俺に内緒で遊び始めたカワイイ彼女。

 それを見逃すのは本当に惜しい。

 俺は寝ぼけたふりしてトイレに突撃をする覚悟を決める。


 いいや、待て。


「もうちょっと待つか」


 今はまだタイミングではない。

 夏樹が気持ちよくなりかけの頃に突撃し、あられもないところを俺に見られて赤面するところが俺は見てみたい。

 数分ほど俺はベッドでそわそわと待つ。

 そして、頃合いを見計らって行動に出た。

 そろりそろりとベッドを出て、廊下へ向かいトイレの前に立った。

 残念なことにトイレのカギは閉められており、いきなりドアを開けて驚かせるというのは無理なようだ。


 とはいえ、寝ているはずの俺がトイレにやってきたというのはやましいことをしている夏樹からしてみれば想定外。


 きっと、ドキッとして慌てることだ。

 俺はごくりと生唾を飲んだあと、トイレのドアをコンコンと叩いた。


「み、湊!?」


 トイレの中からは夏樹の驚いた声。

 ああ、やばい。まじで、心臓がバクバクだ。

 俺はにやけるのを必死にこらえながら、トイレの中にいる夏樹に話しかける。


「トイレ中に悪いな。俺もちょっと我慢出来そうにないから、なるべく早く出てくれると助かる」


 平然を装って俺がそういうと、夏樹も平然を装って俺に言う。


「わかった。ちょっと待ってて」


 焦る夏樹が見たい俺は意地悪をしてしまう。

 おもちゃを外す暇を与えないようにとゴンゴンと強めにドアを叩きながら、必死な感じで夏樹に頼む。


「マジで漏れそうだから、本当に早くしてくれ……」


 必死な俺の様子を感じ取ったのか、夏樹はというと……。

 俺のために急いでトイレから出てきてくれた。


「お、お待たせ」


 俺は夏樹を見て笑いそうになった。

 だって、夏樹の胸はおもちゃをつけっぱなしだからか、不自然にTシャツが膨らんでいるのだから。

 俺は笑いを堪えながら、夏樹が出てきたトイレの中に駆けこんだ。


「……これ、やばいな」


 俺に内緒で遊んでいた夏樹を見たせいで、もうすっかり俺の俺は臨戦態勢だ。

 今日は夏樹に構う気はなかったし、明日に本気を出すつもりだった。

 しかしまぁ、それは無理かもしれない。

 トイレに入ったものの、夏樹がおもちゃを取り外してしまう前にと俺は急いでトイレから出た。


「は、早いね」


 俺が部屋に戻ると、すっぽりと布団で体を隠している夏樹が言った。

 察するに俺が戻ってくるのが早すぎておもちゃを外せておらず、つけっぱなしなので俺に見つからないようにと布団に体を隠したのだろう。


「そうか? 普通だと思うけど……」

「そ、そっか」


 焦っているのか夏樹は俺の言葉を鵜呑みにする。

 で、そんな彼女が寝ているベッドに俺も入り込む。


「ふぁ~、お休み」


 何も気づいていないかを装って俺はあくびをして再び眠りにつくふりをした。

 そんな俺を見て夏樹はホッとした顔つきになる。

 

「……ふぅ」


 どこか張りつめていた夏樹はそっと息を吐いた。

 そして、俺はそんな彼女を逃がさないようにと勢いよく襲った。


「夏樹さんよ。俺に隠れて何してたんだ?」


 ベッドの上で仰向けで寝ていた夏樹に馬乗りしながら俺は聞いた。

 すると、夏樹は俺から顔を背ける。


「別に何もしてないし……」


 と言ったので、俺は夏樹のTシャツを勢いよく捲りあげた。

 露わになる夏樹のおもちゃをつけっぱなしな胸。

 より具体的に説明すると、興奮しているからか刺激のせいなのかわからないが、普通のときよりも明らかにぷっくりとしている胸には挟む強さを調整できるクリップ型の振動するおもちゃがついている。

 それを見た俺は今までにないくらい気持ち悪いにやけ顔になってしまった。


「気になって一人で試しちゃったのか?」


 気持ち悪いくらいなニヤニヤとした顔で聞いた。 

 すると、夏樹は俺の顔を見ないでブツブツと言い出す。


「……気になったんだから、しょうがないじゃん」


 俺に何をされてもいい夏樹だが、別に恥じらいがないというわけではない。

 明日に使う予定だったのに、我慢できずに先んじて俺に隠れて新しいおもちゃで遊んでしまった。

 まるで我慢の出来ない子供のような醜態を俺に晒してしまった夏樹の顔は――



 リンゴのように真っ赤だ。



 そんな彼女を見て俺は止まれなくなる。

 夏樹の胸についているおもちゃのリモコン部分を手に取った。


「どうしても夏樹は遊びたいみたいだし、しょうがないよな」


 悪い笑みを浮かべ、俺はおもちゃの電源を入れる。

 すると同時に夏樹は……

 どこか切なそうな顔で身を震わせながら俺に文句を垂れた。



「っっつ!?。み、湊のえっち……」



 俺に隠れておもちゃを使い遊びだしたお前には言われたくない。

 その意思を伝えるかのように、俺はより一層と振動の大きさを強くした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る