第72話身近なものでイジメてくる彼女に復讐を誓う


「もう1回して」


 夏樹を甘やかした俺が馬鹿だった。

 1回だけして寝ようとしたのだが、夏樹は普通に2回目を求めてきた。

 酔いも相まってか、俺の方が終われずにだいぶ長引いたのにだ。


「……無理です」


 実際のところ、本当に無理。

 普段の夏樹はいい感じに動いてくれるが、今の夏樹は酔っていてふらふらでいつものように激しい動きはしてくれない。

 となれば、俺が頑張って動かなくちゃいけないわけで……。

 これであと1回と言われたら、朝まで頑張って腰を振り続ける覚悟がいる。


「無理じゃないよ。湊ならできる」

「いや、ガチで無理だ」

「ウソ言わないで」

「ウソじゃないって……」


 押し問答を繰り返していたときだった。

 夏樹はたどたどしい足取りでクローゼットの中にある戸棚の方へ。

 で、ごそごそとおもちゃの手錠を取り出した。


「……まずい」


 満足できない夏樹に捕まってしまう。

 冷や汗がドバドバと止まらなくなる。

 いいや、大丈夫だ。俺はこうなるのはわかっていた。

 夏樹に襲われた時、逃げられるようにとお酒を控えていたはずだ。


 自信と覚悟を持ち、俺は夏樹を返り討ちにするべく対峙した。


「私に勝てるとでも?」


 強者感たっぷりに夏樹が言った。


「ああ、今のフラフラなお前に負ける気はない」


 余裕をもって俺は言う。

 さあ、夏樹が持っている手錠を奪って逆に拘束してやろうじゃないか。

 ・

 ・ 

 ・

 

 気が付けば、俺は両手と両足を手錠で繋がれて床に横たわっていた。

 俺が甘かった。

 半年間みっちり鍛えたし夏樹に抗えると思っていたが、ふらふらで足取りがおぼつかない夏樹の方がまだ強かった。

 歯向かおうとしたが、無様にもやられてしまった俺は必死に媚びへつらった。


「あの、すみませんでした」


 ちょっと反抗したからか、夏樹はご立腹そうに俺の顔を生足で踏みながらいう。


「湊が私に勝とうなんて100年早いよ」

「……はい。そうですね」

「さてと、どうしよっか」


 捕まえた俺をどうしてやろうかと夏樹は舌なめずりする。

 酔ってることもあり、何をされるか怖すぎるんだが?

 なんて思っていたら、夏樹は俺に聞いてくる。


「何されたい?」

「手錠を外してくれると嬉しい」

「ダメ。外したら逃げるでしょ?」

「逃げないって」


 酔っている夏樹は俺のことを無視し、身動きの取れない俺の体を舐めだした。

 最初は顔で次に上半身。

 そうして、夏樹は余すところなく俺を味わっていく。

 で、まぁ、メインディッシュと言わんばかりに俺の急所を舐めるのだが……。


「元気ないね」


 お酒も入ってるし、連日のように酷使されたアレは萎びて元気がない。

 いつもの半分にも満たないようなだらしない姿を見て、夏樹は不満そうだ。


「悪いな。俺もわりと限界が近いし、今日はお酒も飲んじゃってるからさ……」

「どうやったら元気になる?」

「今日は無理」


 ガチで無理だと思う。

 そのくらい俺は疲弊している。

 だから今日は諦めておとなしく寝ような? なんて目で夏樹に訴えた。

 そしたら、夏樹はしょうがないという顔になる。

 ああ、わかってくれたかと安堵しかけたとき、夏樹はとんでもないことをいう。

 

「……じゃあ、元気になるまで待つ」


 こいつ、今なんて言った?

 俺は恐る恐る夏樹に聞き返した。


「ま、待つって?」

「だから、湊の体力が戻るまでこのまま待つ」

「……手錠したまま?」

「うん」


 夏樹は当然でしょ? と言わんばかりにうなずくのであった。


   ※


 夏樹に拘束されて1時間が経った。

 酔いも冷めて夏樹は冷静に戻るかと思いきや……。


「うっぷ……」


 少し苦しそうに吐息を漏らした夏樹はというと、縛られて動けない俺をツマミにお酒を飲み始めたので、全然酔ったままである。

 ちなみに口移しで俺もかなりの量のお酒を飲まされているので、俺も酔ったままである。


「暇だね」


 夏樹はそう言って何か面白そうなものがないかと部屋の中を歩き回る。

 そして、夏樹はあるモノを手に戻ってきた。

 俺はそれを見て肝を冷やす。


「洗濯ばさみをどうする気なんですか?」


 そう、夏樹が持ってきたのは洗濯ばさみ。

 洗濯物を挟むのに使うものであり、挟む力はそれなりに強い。

 もうなんか嫌な予感しかしない。


「湊の胸につける」


 Sっ気ったっぷりな夏樹さんはさも当然かのように言う。

 痛いのは好きじゃないし、なんとかやめて貰おうとするも……。

 夏樹は俺の胸に洗濯ばさみをくっつけやがった。


「ぐっ……。おまっ、ま、マジで覚えとけよ……」


 苦悶に満ちた顔付きで睨む俺。

 その姿を見た夏樹は俺の頬に手を添えながら、妖艶に笑った。


「いい顔だね♡」


 すごく楽しそうに夏樹は俺の胸にくっつけられた洗濯ばさみを軽く引っ張ったり、指で軽く弾いたりと好き放題する。

 そんな彼女に俺は言ってやった。


「お、覚えとけよ。お前も同じ目に合わせてやる……」


 もう許さない。

 明日は絶対にお前の胸に洗濯ばさみをくっつけてやる。

 イジメる覚悟を決めた俺を夏樹はクスクスと笑った。


「私に酷いことできる?」

「……それはその」

「湊って私を痛めつけるの苦手だもんね」


 余裕しゃくしゃくそうに言う夏樹にムカッと来た。

 堪忍袋の緒が切れた俺は威勢よく夏樹に告げる。

 


「絶対にお前の胸に洗濯ばさみをつけてやるからな!!!」


 

 まあ、洗濯ばさみは挟む力がつよいし夏樹が可哀そうで見てられなくなりそうなので、ちゃんと挟む強さを調節できるようなおもちゃを買ってくるけどな。




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