第57話初めての勝利

 夏樹とヤッてしまった。

 半年前は夏樹にペースを握られ完全に任されていた俺だが……。

 を使ったことで1回戦目は奇跡的に――


 俺が勝利した。


 初めての勝利の余韻を噛み締めながら、みっともない顔を見せたくないのか、枕に顔を押し当ててぐったりしている夏樹に話しかけた。


「それにしても凄い声だったな」


「……うっさい」


「というか、留学先でどんだけ激しくシてたんだよ……」

 うつ伏せになっている夏樹とベッドの隙間に手を入れて、より淫らになった胸にある尖った部分を摘まむように弄りながら言う。

 すると、夏樹は枕から顔を離して不満げな顔で言う。


「湊とデキないのが寂しくて虚しかったんだからしょうがないでしょ?」


「まさか、デカくなったのは間男に開発されたから……」

 嫌な想像をしてしまった。

 デカくなったのは、誰かの手で激しく躾られていたのではないのかと。


「されてない。ただ単に自分で弄ってたらデカくなっただけだから」


「ま、だろうな」


「……でさ、湊はどうなわけ?」

 不安そうな声で夏樹は聞いて来た。

 おそらく、デカくなったことに対しての感想を求められているのだろう。

 別に嘘を言っても良いことはないので俺は正直に答えた。


「あー、エロくていい。こう、前よりも弄り甲斐があるし……」


「弄り甲斐があるね……」

 夏樹はちょっとそっけない感じで頷いた。

 そして、俺から顔を逸らしたままボソッと呟く。



「なら、湊が好きなサイズになるまで弄ってもいいよ……」



 あまりにも衝撃的な一言に俺はポカンと口を開けてしまう。

 留学に行く前は、あんなにもデカくなったのに不満そうにしていた。

 それなのに、俺が好きなようにデカくしてもいいよって……。

 いや、待てよ?

 夏樹のことだし……、素直に喜んで食いついたら大変な目に遭うんじゃないか?


「あ。まさか、デカくなったのを俺のせいにする気じゃ……」


「ちっ、バレたか。まあ、どうせこれからも遊んでたらデカくなりそうだし、湊にされた~ってい体裁にしておけば、湊に色々と仕返しできるでしょ?」


「……たとえば?」


「湊に開発されたんだし、私も湊を開発してもいいよね? って感じで」


「お、おう」


「というか、湊の方こそなんでデカくならないの? 留学前に、たくさん私も湊のを噛んだり、舐めたり、吸ったり、摘まんだり、色々としてあげたのに」

 夏樹は俺の胸のある部分をマジマジと見つめてきた。

 

「……言われてみればそうだな」


「ずるい」


「いや、ずるいって言われても……」


「ほんと、私だけデカくなるのおかしいでしょ」

 この世の理不尽に納得できない夏樹はそう言って、俺の胸の突起物をそれなりに強く引っ張って来た。


「痛いって……」


「はぁ……、はかなりでかくなったのにね」

 夏樹は俺の下腹部についているアレを見ながら言った。

 1回戦目を勝利で終えられたのはこの凶悪と化したブツのおかげでもある。


「ちなみに、夏樹には内緒にしてたけど、あまりにも急にデカくなり過ぎて不安になって病院に行ったんだよなぁ……。結局、なんの問題もなかったけど」


「まあ、こんなにデカくなったら不安にもなるよね。で、まだデカくなってるの?」


「いや、年が明けた頃から、ほとんど成長しなくなった」


「ふーん。ところでさ、湊は私に何か謝ることはないの?」

 ちょっと怖い顔で夏樹が俺のアソコをギュッと握って来た。

 え? 俺、何か怒らせるようなことをした……のか?

 よくわからないけど、怒っていそうなこともあり俺はひとまず謝る。


「すみませんでした」


「そ、やっぱり使ったんだね」


「使った?」


「は? 私が居ないからって、私以外の穴に突っ込んで浮気してたでしょ?」


「夏樹以外の穴って……」


「私が居ない間にアレ使ったんでしょ?」

 もしかして、クローゼットの中に仕舞ってあった男性用ジョークグッズを使ったと夏樹は勘違いしているのか?

 寂しがり屋で欲張りさんな夏樹は無機物だろうが、俺のアレを奪われていたというのが納得できないのだろう。

 だがしかし、俺は何も怖がることはない。

 なにせ、俺は吉永から貰ったアレをまだ一度も使ったことはないのだから。


「いや、使ってないって」


「じゃあ、なんですみませんって言ったの?」


「なんか怒ってるし、取り敢えず謝った方がいいかなって」


「……はいはい。そうですか」

 呆れた顔で夏樹は俺を見つめてきた。

 俺が使ってないというのを夏樹は信じてくれていなさそうだ。

 しかし、なんかこのまま怒ってても面白そうな気がする。

 1回戦目を勝利で終えたからか、俺は調子に乗ってしまった。


「すみませんでした。実は使いました」

 どんなことを夏樹にされるのか興味本位で使ったと嘘を吐いた。

 すると、夏樹はムッとした顔で俺に言う。


「やっぱり。じゃ、二度とおもちゃでしようって思えないくらい、気持ち良くしてあげる」


「さっきは俺にみっともなく泣かされてたくせに」

 俺は夏樹を煽ってしまった。

 すると、夏樹は負けじと俺に胸を張って来た。


「あれは久しぶりで慣れてなかっただけだし」


「とか言うけど、また腰が砕けて動けなくなるんじゃないか?」


「じゃ、わからせてあげる」

 夏樹は俺とするための準備をするべくアレが入った箱を手に取った。

 あっ、やばい。

 急いで夏樹からアレの入っている箱を取り返そうとしたが遅かった。



「ふーーーん」



 鋭い目つきで夏樹は俺を睨んできた。


「ど、どうかしたか?」

 ちょっと惚けてみるも、さすがに無理があった。

 夏樹はと書かれたパッケージを俺の顔にぐりぐりと押し付けながら言う。


「やけに今日は余裕そうだなって思ってたけど、わざわざのを使って感度を下げてたんだね」


「な、夏樹は久しぶりだし満足ができなかったら可哀そうだな~って……」


「ねえ、普通のは?」


「……あー、ここいらに」

 半年前に買ったやつの残りがあるはずだ。

 そう思って探したのだが出てこない。

 なので、今日はその分厚いのじゃダメ? という顔で夏樹に訴えかけた。

 しかし、駄目なようだ。


「無いなら早く買って来てくれる? あ、じゃなくてだからね?」


「行ってきます……」

 ご立腹な夏樹に急かされ、俺は近くのコンビニへと向かうのであった。

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