第55話彼氏の帰りを待つ変態

~夏樹Side~


 留学に来て早くも179日が経過した。

 もう随分と海外での一人暮らしには慣れたものだ。

 私の通訳士になるとい目標を叶えるうえで、今回の留学は間違いなく有意義だったのだが……。

 私はとある決断をした。 

 それは――

 通訳士になるのをやめることだ。


 もちろん負けず嫌いなこともあり、目標を途中で投げ出すのはしたくない。

 でも、それ以上に好きな人と会えないのが辛くてしょうがなかった。

 正直、こんな思いは二度とごめんである。

 しかし、ひとたび通訳士として会社に入れば、海外出張をするという機会は何度もあるはずだ。

 そのたびに湊と会えなくなるのは普通におかしくなる。

 それにまあ、湊も通訳士になるのを応援してくれていたが、別に私が目指すのをやめたと言っても失望はしないだろうしね……。

 だったら、別に通訳士にならなくてもいいかなって。

 あと、海外で働いている日本人の通訳士に色んな実情を聞いたけど……。

 通訳士の稼ぎだけだと湊をしっかりと可愛がって飼ってあげるのには、ちょっと物足りなさそうだからね。

 とまあ、留学を通して通訳士になるという志を捨てることにした私はというと、明日の帰国に向けて準備を進めている。

 早く帰りたい。

 でも、それと同時に私はとある不安でドキドキである。

 私は穿いていたズボンとパンツを脱いで、この半年の間、まったく手入れのされていない股間を確認する。


「こんなのが見たいってホント変態でしょ……」

 湊は私に『生えてる所が見たいから伸ばして?』とワクワクした顔で頼んできた。

 大好きな彼のために剃らずに生やしてみたものの……。

 凄く恥ずかしい。

 見られたくないレベルの濃さになってしまっているのを見ていると、湊の反応が怖くてしょうがない。

 いざ、生やして? とは言ったものの、あまりの汚さに驚き困った顔をされたら本当に泣きたくなる。

 だって、好きな人にはいつでも綺麗と言われたいからね……。

 などと思いながらも、私は毛をかき分けて敏感な部分を露出させる。


 で、私は敏感な部分を見ながら頬をひくひくとさせてしまう。


「……デカくなりすぎじゃない?」

 海外では一人で慰めないと頑張っていたのは最初の3ヵ月だけ。

 気が付けば、毎日のように一人でシテしまったのだ。

 湊と会えない寂しさを誤魔化すかのように敏感な部分を弄ってしまった。

 強くギュッと潰すように摘まんだり、痛くないギリギリまで引っ張ったり、指の腹を素早く動かして擦ったりしてしまった。

 そんな風に敏感な部分を激しく弄ったら……。


 デカくなってもおかしくない。


 以前は半分くらい剥けていて、硬くなると全部が露出するような感じだったのだが、デカくなったせいで今は常に完全に露出している状態になってしまった。

 この変化を見て、湊がどんな顔をするのかを想像するだけで不安だ。

 すっかりと大きくなった私のアソコを見て、湊にデカくて不気味だと苦笑いされたら……。

 泣いてしまう自信しかない。

 ちなみに、欲求不満を拗らせた末に、淫ら?になってしまったのはだけじゃない。

 実は上の敏感な部分も弄り過ぎてデカくなったし、まだまだ綺麗ではあると思うが色も若干くすんでしまった。

 もはや手遅れなレベルで変わってしまったデリケートゾーンを綺麗に見られたい相手である湊に見られるのが、不安で心配でしょうがない。

 まあ、こんなことくらいじゃ、湊は私のことを嫌いにならないとわかっているんだけどね……。

 

   ※


 自分の体に一抹の不安を抱えながらも私は日本へ帰国した。

 ちなみに、私はお父さんとお母さんには明後日に日本へ帰ると嘘をついている。

 嘘の日付を教えておかなければ、湊とすぐに会える距離にいるのに、まずは両親と過ごさなくちゃいけないからね……。

 とまあ、無事に日本に帰って来た私は湊の部屋に真っ先に向かった。

 今の時刻はお昼をちょっと過ぎた頃だ。

 湊は大学に行っており部屋にはいない。

 なので、私は海外にまで持っていってしまった鍵を使って湊の部屋に入った。


「……ふーん。綺麗にしてるじゃん」

 半年ぶりに入った湊の部屋は意外なことにも清潔に保たれていた。

 しかし、私は油断はしない。

 綺麗な部屋=誰かが出入りしていた可能性が高い=女を部屋に連れ込んでいた可能性あり。

 そんな図式を頭で思い浮かべた私は湊の部屋に浮気の痕跡がないかを調べるべく、手始めに部屋に備え付けられたクローゼットを開けた。

 特に変わったモノはない。

 しかし、クローゼットの中を漁るといかがわしいパッケージの箱が出てきた。

 最初は何か分からなかった。

 でも、パッケージの紹介図を見て、私はすぐに理解する。

 女性のアソコをかたどった気持ち良くなるためのおもちゃだということに。


「へー、私以外の穴に突っ込んだんだ……」


 別に浮気ではないとは思う。

 しかし、私は浮気されたような気になってしまった。

 湊のは私のモノである。

 なのに、このぶにぶにで柔らかい無機物に湊の棒が奪われていた。

 それを知った途端、私の中でモヤモヤとした感情が沸き出て止まらなくなる。


「とりあえず、もう使えないようにしよ」

 律儀にも箱に仕舞われていたぶにぶにとした筒を両手で握る。

 そして、手に力を込めて真っ二つに引きちぎった。

 たかが無機物に大事なモノを盗られたようで、私の怒りはどんどん大きくなる。

 今の今まで、ずっと私が挿れて欲しかった棒を、私の代わりに味わっていたであろう無機物の存在が許せない。

 原型がなくなるまで私は石油くさい物体を引きちぎり続ける。

 で、バラバラにするのに満足した頃、私は部屋にある時計を見た。


「湊が帰ってくるまで時間があるね……」

 湊は大学にいる。今日の講義は4限まである日なので、まだまだ部屋には帰ってこないであろう。

 帰国して真っ先に湊に会おうと部屋に来た。

 なのに湊と会えない。

 それがまぁ、私の気持ちをどんどんと燻らせる。

 早く湊を感じたい。早く湊繋がりたい。早く湊を味わいたい。

 気が付けば、私は湊がいつも頭にしている枕の匂いを嗅いでいた。


「くさっ♡」


 頻繁にとはいえないが、しっかりと洗濯はしているのであろう。

 枕はそんなに臭くなかった。

 でも、紛れもなく枕には湊の匂いが染みついている。

 ただそれはあまりにも薄いこともあり、私は満足ができなかった。

 より一層と濃い湊の残り香を感じられるモノが残ってないかと部屋を漁る。

 そして、洗濯機の中に入っているを見つけてしまった。


「……ごくり」


 いつの間にか口に溜まっていた生唾を飲みこんだ。

 そして、私は恐る恐る湊のパンツを手に取り鼻に押し当てる。


「あっ♡ やばっ……♡ もうほんと最悪な匂いっ♡ ああもう、ほんと最低♡ こんな匂いさせてるとか、本当にきもすぎ♡」

 湊は筋トレをするようになり前よりも汗をかくようになったのであろう。

 今までにないくらいにパンツからは色濃い匂いが漂っている。

 湊の蒸れたアソコの匂いが染みついたパンツ。

 その匂いをおかずにして、私は自分で慰めながら湊が大学から帰ってくるのを待つのであった。



 

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