第52話疼きが止まらない彼女

 友達とお酒を呑んでダラダラとした時間を楽しんでいる。

 場所は俺の部屋ということもあり、俺に吉永がとある話題を振って来た。


「にしても、ほぼワンルームの部屋で彼女と同棲って不便じゃなかったのか?」


「不便ではあるけど、そこまで気にならなかったな」


「いや、普通にしんどくね? 何でも彼女に知られちゃうって、息が詰まりそうだぜ……」


「そうは言うけど、別に夏樹に対して隠すようなやましいことはないし……」

 などと当たり前のことみたいにいうと、ハイボールの濃い目をぐびぐびと飲んでいた田中さんが俺にツッコミを入れてきた。


「やましいことがないってある意味凄いよね~。何かしらは彼女に隠したいこととか、普通はあるでしょうに」


「隠したいことはあったけど、夏樹に変に隠すと拗ねちゃうからな……」


「あー、夏樹って意外と面倒くさいもんね」

 俺は夏樹の女友達の中で仲の良い方な田中さんにお礼を言っておいた。


「いつも面倒な夏樹と仲良くしてくれてありがとうな」


「ううん、私こそ夏樹には良くして貰ってるからね~。こう、飲み会の時、可愛い夏樹にいいとこを見せたいのか、男子が奢ってくれるし」


「彼氏持ちだってバレバレなのに下心を見せるってどうなんだよ……」


「ま、御手洗君なんかよりも俺の方がすげーぜ! ってアピールして、夏樹のことを御手洗君から寝取ろうとしてるんじゃない?」

 田中さんがそう言うと、吉永が笑いながら補足を付け足してきた。


「確かに、あの皆城さんの彼氏が湊って知ったら、俺にもワンチャンあるんじゃね? って錯覚しそうになっちまうよなぁ……」


「実際のところ、夏樹は御手洗君にベタ惚れでワンチャンなんてないのにね」


「だな」


「てか、そんなに夏樹って俺にベタ惚れしてるように見えるのか?」


「見える見える。特に最近は留学前で会えなくなることもあってか、御手洗君にゾッコン状態だったもん」


「けっ、可愛い彼女に甘えられるとか羨ましい奴だぜ」

 吉永が羨ましいと言わんばかりに俺に悪態を吐いて来た。

 確かにベタベタと彼女が甘えてくるのは羨ましいと思うだろうが、ちょっと困ったこともあるんだぞ?

 毎日のように疲労困憊になるまで絞られるんだぞ? と言いたくなった。

 まあ、夏樹の名誉のために言わないけどさ……。

 などと思い、俺が微妙な顔をしていると、田中さんがニヤニヤしながら話しかけてきた。


「ま、甘えん坊さんなのもそれはそれで困っちゃうよね?」


「……まあな」

 田中さんの意味深な口ぶりから察するに、夏休みに毎晩のように俺とイチャイチャしてたことを夏樹は話してたっぽいな。

 さ、さすがにプレイ内容までは喋ってないよな?

 喋ってたらマジで恥ずかしいんだけど……。


「それにしても、夏樹が居なくなってからというものの、凄く心外なことが起きてるんだよね」

 唐突に田中さんは怒りだした。

 吉永は怒っている理由を知っているようで苦笑いになった。


「な、何があったんだ?」


「糞な男共から、皆城さんの影に隠れたけど、田中さんも実は凄く可愛いよねってめっちゃ言われる!」


「……あー、ガチで失礼だな。そいつら」


「でしょ!? 確かに思うのは自由だよ。でも、それをわざわざ口に出して言わなくてもいいと思わない?」


「だな。ちなみに俺はずっと前から、田中さんも夏樹に負けず劣らずに魅力的であると思ってたぞ」

 お怒りな田中さんを鎮めるために褒め称えた。

 それはどうやら正解だったようで、田中さんは落ち着きを取り戻していく。


「御手洗君って意外と素直に人のことを褒めること多いよね」


「まあ、夏樹に仕込まれたから……」


「あははは、わかる~。デートの時、おしゃれしてたら褒めないのはダメだよね? って感じで詰め寄られたんでしょ?」


「ご名答。で、何かとすぐに褒めるような癖が習慣になったわけだ」


「逆に湊が皆城さんに影響を与えたことってなんかねえの?」

 吉永が気になると言わんばかりに聞いて来た。

 俺が夏樹に与えた影響について考えたことはないな……。

 お酒が入っているせいで、少しボヤっとした頭で俺は考えてみた。



「服の趣味とか?」



 俺の答えを聞いた田中さんは目を輝かせながら聞いてくる。


「なになに、御手洗君は夏樹に着て欲しい服とかを押し付けてるの?」


「押し付けはしてないけど、こういうのが可愛いんじゃないか~って勧めたりすると、高確率で俺に勧められた服を買うんだよ」


「愛されてるね~。で、そんな彼女と会えなくなってやっぱり寂しい感じ?」

 急にグサッと刺さるような一言を田中さんが言ってきた。

 俺は苦笑いしながら弱音を溢してしまう。


「普通に寂しい」


「で、寂しさを埋めるために他の女の子と浮気するってわけだな」


「ほんと、吉永って失礼だよな。ったく、ほらいい時間だ。二人もそろそろ帰れ」


「んじゃ、田中さんよ。帰るか……」


「だね~」

 田中さんと吉永はそそくさとゴミを簡単に片づけ始めた。

 片付けが終わった後、田中さんは俺にスマホのカメラを向けてくる。

 そして、カシャリとシャッター音が鳴った。


「なんで俺の写真を撮ったんだ?」


「御手洗君は元気にしてるよ~ってところを、夏樹に見せてあげようと思ってね」

 田中さんはそう言って、今撮ったばかりの俺の写真を夏樹に送った。


   ※



~夏樹Side~


 今日は外出の予定もないので、宿泊先で自習をしているときだった。

 ちょっと休憩しようと思い、私はスマホを手に取る。


「ん?」

 スマホには友達から彼氏である湊の写真が送られて来ていた。

 そういや、湊の部屋で飲み会してるって言ってたね……。

 などと思いながらも、私は送られてきた彼氏の写真をじっくりと見た。

 久しぶりに見た彼氏の顔はどこか疲れている様子はないどころか……。


 凄く元気で男らしい顔をしていた。


 友達が送ってくれた彼氏の写真。

 それを見た私はドキドキが止まらなくなる。

 まだまだ再会までは時間があるのに、今すぐにでも会いたくなってしまう。

 気が付けば、愛する人と会えない切なさを誤魔化すかのように、手が大事な部分のひと際敏感な場所に伸びていた。


「んっ……!」


 敏感な場所に久しぶりに触れると、気持ち良さのあまり吐息がこぼれる。

 湊に対して、留学先では一人で慰めないって意気揚々と言った。

 それを守るためにも、私はすぐに敏感な場所を弄るのをやめた。

 しかし、切なくてしょうがない。

 気が付けば、私はそれを誤魔化すために湊に電話を掛けてしまっていた。



『もしもし?』


 切なさを誤魔化そうと思い、湊に電話を掛けたのは間違いだったようだ。

 電話越しに聞く湊の声。ナマの声と比べるとかなり違うが、それでも聞いているだけでアソコのうずきが止まらなくなった。

 弄りたくてしょうがなくて足をくねらせていると、私が何も話さないことを湊が心配しだした。


『おーい。どうかしたのか?』


「あ、あれ、写真見たよ。私が居なくても随分と元気そうじゃん……」


『田中さんが元気そうなところ見せてあげなよ~って感じで撮られた。で、そっちは元気にしてるか?』


「元気にしてるよ。それにしても、湊の方こそ顔色が良くなっちゃって……。そんなに私と一緒に居た時は疲れてたわけ?」

 ちょっとした皮肉を言うと、湊はどこか楽し気に私に話しだした。


『彼女に何度も絞られてないからな。それにまあ、夏樹と会えなくなってからはまだ1回も自分で発散させてないから……。ほら、夏樹の温もりが感じられなくて、一人で抜こうとしても、途中で寂しいからか萎えちゃってな……」


「ふーん……」

 私は必死に素っ気ない感じを装った。

 しかし、私の気持ちはとんでもなく昂ぶっている。

 私と会えないのが寂しくて一人で慰めてるときに萎えちゃったとか言われたら、凄く凄く私のことが好きでしょうがないと言われているようなものなのだから。


『で、夏樹は一人で慰めたりとかはしてないのか?』


「し、してないし」

 さっき我慢できなくなりかけたし、何なら今も我慢しようと必死である。


『本当か? 我慢できなくて弄ってるんじゃ……』


「だから、してないってば……」

 私は聞こえるか聞こえないかの小さな声で言った。


『ふぁ~……』

 湊が大きくあくびしたような声が聞こえてきた。

 ああそう言えば、こっちは昼だけど向こうは深夜だっけ。


「あー、急に電話してごめんね。そろそろ、電話を切ろっか」


『ああ、お休み……。愛してるよ。半年後に会えるのを本当に楽しみにしてる』

 唐突に大好きな彼氏である湊から愛を囁かれた。

 体はより一層と火照り、キュンキュンとアソコの疼きが激しくなる。

 じんわりとアソコのシミは大きくなり、敏感な場所は固さを増していく。

 これ以上、湊の声を聴いていたら我慢ができなくなる。

 私は急いで湊との電話を切った。


「……湊とエッチしたい」


 おへその下あたりを手で触りながら、私はボソッと呟く。

 そして、私をこんな気持ちにさせた原因である、大好きな湊の写真を送って来た友達を少し恨むのであった。





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