2章
第51話彼女のいない日常
夏樹が留学に行ったことで、俺の生活は何もかもがガラリと変わってしまった。
洗濯する頻度は3日に1回に減り、冷蔵庫の中身も随分と寂しくなった。
そして、何よりも変わったのは――
夜に眠れなくなったことだ。
寂しい気持ちで寝つきが悪くなったのも多少はあるが、寝れなくなった一番の理由は疲れていないからだと思われる。
ここ最近は、毎日のようにベッドの上で夏樹に精を搾り取られていて疲労困憊だったこともあり、眠ろうと思えばすぐに眠れた。
しかし、寝ようと思って目を閉じても、夏樹に絞られていないせいか、妙に頭がスッキリとしていて寝付けないのだ。
というわけで、疲労感を得るために久しぶりに自分の手で慰めることにした。
ついつい、エッな動画を格安で配信しているサイトにアクセスをしようとしてしまうも、俺は夏樹との約束を思い出した。
「っと、危なかった……。約束を破ったのバレたら大変なことになる」
夏樹以外をおかずにしてはいけないと約束させられたのを思い出した。
俺は念には念をということで夏樹のあられもない姿を収めた動画を見て、
夏樹の顔が見たい気分だったので、口でして貰っているシーンの動画を再生した。
手を動かして気持ち良さを享受するも、だんだんと俺の手の力は抜けていく。
俺は夏樹が必死に咥えているアレなシーンを見ながらボソッと呟いた。
「寂しい……」
温もりを欠片も感じない夏樹の動画を見て致すのがとてもとても虚しい。
それに加えて、俺のアソコは夏樹に激しくされたせいなのだろう。
ちょっとお馬鹿になってしまったようで、自分の手で激しくシても、あまり気持ち良くなかった。
さらに激しくしたらイケるにはイケるだろうが、本番でイケなくなるかもしれないので、それはやめておいた方がいいだろう。
さてと、ありあまる気力と体力をどう消耗しようか……。
「筋トレするか……」
夏樹と体を鍛えると約束したが、何だかんだで筋トレはまだ始めていなかった。
必死に体を動かせば夜は疲れでぐっすりと眠れるに違いない。
こうして、俺は寝付きの悪さを改善するために体を鍛えるのを始めるのであった。
※
筋トレを始めて3日が経った。
筋肉痛のせいで俺の動きはどこかぎこちない。
これから講義が行われる講義室にある固い椅子に座ると、すでに横に座っていた友達である吉永が話しかけてきた。
「動きが変だけど怪我でもしたのか?」
「ちょっと筋肉痛が酷くてな……」
「へー、何でだ?」
「体を鍛え始めた」
「あー、皆城さんと別れたもんな。男として、今度は彼女に振られないようにと、より魅力を磨くのは当たり前か……」
神妙そうな顔つきで吉永は俺に失礼なことを言ってきた。
「夏樹とは別れてないからな? ただ単に留学で離れ離れになっただけだ」
「あははは、わりぃわりぃ。で、体を鍛え始めたっていうけど、急になんでそんなことを始めようと思ったんだよ」
「寝つきが悪くなったから体力を消耗すれば、寝つきが良くなるかもって思ってな」
もう一つ、体を鍛える理由として、夏樹との夜遊びをもっと楽しむためというのもあるが、わざわざ言う必要はないな。
などと考えていたら、吉永は悪い顔で俺に言った。
「よし、寝れないんだな。じゃあ、お前の寂しい夜に俺が付き合ってやるよ」
「男同士の趣味はないから……」
まあ、吉永が何を言いたいのかなんとなく分かっているけど、俺は吉永からわざとらしく体を引いた。
「ったく、宅飲みに付き合ってやるってだけだっての。別に皆城さんの代わりにお前と一緒に寝てやらねぇよ!」
「ま、だよな」
「というわけで、久しぶりにお前んちで飲み会でもしようぜ? ほら、お前んちガチで壁厚いからバカ騒ぎしても苦情来ないし」
「じゃあ、適当に何人か集めて久しぶりに飲み会するか……」
こうして、俺の部屋で久しぶりに飲み会をすることになったのだが……。
飲み会という単語を聞きつけたのか、酒豪の田中さんが話に混じってきた。
「ねえねえ、お酒飲むなら私も飲みたいな~って」
「……あー」
実は田中さんも俺の部屋で催された飲み会に来たことがある。
もちろん、女子は田中さん一人だけじゃなくて数名でだ。
別にやましいことはないし、普通に今回も部屋に招いてあげたい気もするのだが、最近の夏樹は嫉妬深い。
俺の部屋に女子がやってくるのを良しとしないかもしれない。
「えー、ダメな感じなの?」
「最近の夏樹が怖いんだよ。部屋に女子を招くのは危ない気がしてな……」
「んじゃ、夏樹に聞いてみよっと」
田中さんはそう言ってスマホで夏樹にメッセージを送った。
で、すぐに話はついたのであろう。
満面な笑みで田中さんは俺に言った。
「飲み会するから
「んじゃ、そういうことなら来ていいぞ」
こうして、俺の部屋で飲み会が催されることになるのであった。
※
17時をちょっと過ぎた頃のことだ。
吉永が酒とおつまみを手に俺の部屋にやって来た。
で、開口一番に悪い顔で俺をからかってきた。
「よっ、夏休みはこの部屋で皆城さんと、よろしくやってたんだってな?」
「あー、誰から聞いた?」
「お前と同じく上京してきて、ここら辺に住んでる田畑から聞いた。最近、湊が皆城さんと一緒に歩いてるとこをよく見るし、アイツら絶対にヤりまくってるだろ! って羨ましそうに愚痴られてな。で、皆城さんとはよろしくやってたのか?」
「……まあな。てか、玄関に居ないで上がれって」
長々と話し出した吉永を俺は部屋に招き入れた。
吉永は靴を脱ぐためにお酒とおつまみが入った袋を俺に渡してきた。
俺は何を買ってきたんだろうかと思って袋の中を覗くと、吉永がニヤニヤとした顔で俺に言う。
「彼女と会えないお前にうってつけなお土産も入れといたぞ」
吉永が持ってきた袋の中身をガサガサと漁る。
中にはお酒とおつまみ。
そして、それ意外にもトンデモナイ物が入っていた。
「男性用のジョークグッズなんて持ってくるなよ……」
「ちゃんと新品だから安心しろって」
「いらないからな?」
「そう言わずにとっておけって。彼女がいなくなって寂しいんだろ?」
半ば強引に、吉永が男性用のジョークグッズを押し付けてくる。
返そうと、吉永に突き付けようとしたときだ。
「やほっー! お邪魔しま~す!!!」
今日の飲み会に参加する一人である田中さんがやって来た。
さすがに女子である田中さんに、男性用のジョークグッズを見せつけるのはセクハラといっても過言ではない。
俺は渋々と吉永が持ってきた男性用のジョークグッズを田中さんに見られないようにと物陰に隠した。
なお、軽い気持ちで吉永から受け取った男性用のジョークグッズ。
それを留学から帰ってきた夏樹が見つけてしまい、ちょっと大変な目に遭うことを俺はまだ知らないのであった。
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