第46話ベッドが汚れて怒る4年目の彼女
夏樹の体に道具を使ってもいいとお許しを貰えた。
休憩中におもちゃ屋さんに行こうとしたら、今日は俺とずっと一緒にいたいらしく、買いに行くなら手足を縛って後ろを攻めるよ? と脅された。
仕方がなく、俺は家で使えそうなおもちゃを探して見たらいい物があった。
俺の後ろを虐めるために夏樹が買ったやつがな?
「これ使っていい?」
「それは湊専用だからダメ。あと、
「震える系か……」
夏樹の静止を振り切ってでも、外へ買いに行けば良かったと後悔した。
さすがに震える系は俺の部屋のどこを探しても……。いや、待った。
俺は去年の母の日に送ろうとして買ったのだが、もう持ってるから要らないと言われたとあるモノの存在を思い出した。
ガサゴソと棚を漁ると、新品のまま放置されていたそれはすぐに見つかった。
箱から取り出して俺はそのままベッドで寝転んでいる夏樹へと迫る。
「俺の上で暴れて疲れただろうし、これでマッサージをしてやろう」
「へー、マッサージガンなんて持ってたんだ」
「母の日にプレゼントしようとしたら、もう持ってるって言われてな……」
母親にそんなものを送ろうとしたの? と夏樹は細い目で俺を見てきた。
だがしかし、俺にはやましい所はない。
肩、腰、首、のコリをほぐすための、銃に似た形をしたぶるぶると震えるマッサージ機、通称マッサージガンと呼ばれるモノの箱を見せつけた。
「箱を見ろ箱を。お前が思ってる用途に使うために買ったやつじゃないからな?」
「はいはい」
「で、コレで夏樹のことマッサージしていい?」
「……別にいいけど」
お許しを貰えたので俺はマッサージガンのスイッチを入れた。
電池は残っていたようで丸型のアタッチメントの部分は振動しはじめる。
こけし型の電動マッサージ機とは違って、丸い形をした振動している部分は浅く上下にピストン運動をしている。
俺は夏樹に押し当てる前に自分の肩に押し当ててみた。
「お゛お゛お゛お゛、こ゛……こ゛れ゛は゛……」
「そんなに気持ちいいの?」
俺が気持ち良さげな震えた声をあげると、さっきまで興味のなさそうだった夏樹が真面目な顔で食いついてきた。
俺はマッサージガンの電源を一回止めてから答える。
「普通にマッサージ機として優秀過ぎてびっくりした。いや、これはガチで世間からマッサージ機として認知を得てるのに凄く納得できた」
「貸して」
「いや、もうちょっとだけ……」
マッサージ機として優秀すぎるマッサージガンを俺は自分で試していく。
あぁ……、これ割とガチでいいな……。
後で売れるかもな~とか思って、新品のまま放置なんてしちゃってたけど、もっと早くに開封して試してみればよかった……と後悔するレベルだ。
とまあ、良さを実感していると、夏樹が凄く物欲しそうな目で俺を見ていた。
「そんな可愛い目で見ないでくれ。わかった、わかったから」
「べ、別に使いたいなんて言ってないし」
「凄く使いたいなぁって顔してるからな?」
「そういうなら早く私に使えば?」
「じゃ、まずは肩から……」
俺は夏樹の肩にマッサージガンの振動している部分を押し当てた。
すると、クールで素っ気ない彼女の顔がだらんと気持ちよさそうに弛んだ。
ぶるぶると震えている夏樹は気持ち良さそうにボソッと感想を漏らす。
「んっ……。これいいかも……」
「だよな。ガチでマッサージ機として優秀すぎるよな?」
共感を訴えかけながら、俺は夏樹の体のコリというコリを解していく。
しかし、初期充電はたいしてされていなかったのだろう。
マッサージガンは徐々に勢いを失っていき……
止まってしまった。
「もう終わり?」
どうやら相当にお気に召したようで、夏樹は悲しそうな目で充電が無くなり動かなくなってしまったマッサージガンを見た。
しかし、ちょっとお高いのを買ったので問題はない。
「充電しながら使える奴だから平気だぞ。で、次はどこに押し当てたらいい?」
「太ももとかやってみてよ」
「俺の上で暴れたとき、足の筋肉も凄い使ったもんな……」
夏樹の暴れっぷりを思い出しながら、俺は夏樹の太ももに電源ケーブルを繋いだことで、ぶるぶると元気を取り戻したマッサージガンを押し当てた。
すると、夏樹はちょっとくすぐったそうに身をよじらせる。
「そこ気持ちいけど、ちょっとくすぐったいかも……」
「へー、じゃあここら辺は?」
妙に艶めかしい感じで反応するもんだから俺は我慢できなくなった。
夏樹の太ももに押し当てているマッサージガンを移動させていく。
徐々に移動させるにつれて、夏樹の反応はどんどん激しくなる。
ただマッサージをしているだけなのに、まるでそうではないかのようだ。
「あっ、ちょっ、まっっ、そこっつ、んっ、だめっ……」
「なんで?」
「だっ、そこっ、あっぅ、いやっ、ほんとっ、それ以上、上は、ほんとっ、ダメだから……、ほんと、だめっ、だから……ね? ねっ?」
「上ってここら辺?」
「ちょっ、みなとっ、ばかっ、やめっ、あっ、やばっ、んっ…… それ以上上は凄くっ、って、でちゃっ、……いそうになるからぁ……」
夏樹は身をよじらせてマッサージガンから逃げようとする。
しかし、俺は夏樹の体に押し当てるのをやめないどころか、電源コードを繋いだことで解放された機能の一つであるハイパワーモードのボタンを押す。
そして、夏樹がダメと言っている場所に強く押し当てるのであった。
※
夏樹はベッドの上の大惨事を見た後、呆れた顔で俺に言う。
「あのさ、本当になにしてくれてんの?」
「ごめんって」
「出ちゃいそうだから、やめてって言ったよね?」
「いつも俺は夏樹にやられっぱなしだし……。たまには夏樹を負かしたくて……」
「それはそうだけど。やるなら、ちゃんと汚してもいい場所に移動してからにして欲しかったんだけど?」
「え? 怒ってるとこ、そこなの?」
強引に粗相させれたことには怒ってない様子の夏樹に俺は驚いた。
「トイレでシテるとこ見せて? って湊に言われて、見せてあげようとするくらいだし、粗相してる所を見られたところで別に怒るとまではいかないからね?」
「あー、それもそうか……」
などと納得していると、ベッドの上を汚してしまった夏樹はグチグチと俺にお小言を言ってくる。
「ちなみに、私はいつも気を使ってるよ」
「何をだよ」
「湊にストッキングを使うときベッドの上でやらないでしょ?」
「言われてみたらいつも床でやられてるな……」
「で、今日の続きはどうするの? さすがに、自分ので汚れたところには寝転びたくないんだけど?」
シーツをダメにした落とし前をどうつけてくるんだ?
と怖い目で夏樹が俺を睨みつけてきた。
「きょ、今日は大人しく終わりで良いだろ。ほら、別にしないなら、1日くらいならシーツを外してマットレスに直接寝ても……」
「は? 何終わろうとしてんの?」
「はい、すみません……。今日は1日中するって約束でした……」
「で、どうすんの? ずっと立った状態でやるの? それとも床でやるの? 私は平気だけど、湊はベッドじゃないと凄く疲れるんじゃないの?」
まだまだ夏樹はやる気満々らしい。
これでおしまいにしようって発想にならないのがホント怖い。
さてと、俺が水浸しなったシーツを見ても焦ってない理由を夏樹に教えるとするか。本当は教えたくなかったけど、こればっかりはしょうがない。
夏樹が出したやや黄色みのある液体で世界地図みたいな模様が描かれたシーツを俺は意気揚々と少しだけ捲る。
すると、撥水加工のシーツがお目見えになった。
「まあ、あれだ。普通のシーツの下に撥水加工の防水シーツを仕込んであるし、シーツの予備も実はある」
夏樹と頻繁にするようになってから、念には念をということで撥水加工の防水シーツを普通のシーツの下に仕込んでおいたのだ。
俺と夏樹が寝ているベッドのマットレスはかなり高い。
匂いが染みついたからといって、そう易々と買い替えるのはできないからな……。
「……なんか最近は寝心地が少し変わった気がしてたんだよね。まあ、湊のベッドだから文句言うのはあれだと思って黙ってたけど、そういう理由でだったんだ。何で、私に教えてくれなかったわけ?」
「いや、撥水加工の防水シーツや替えのシーツを買ったって言ったら、もっと夏樹にベッドの上で激しくされるんじゃないかな~って怖くてな……」
「なるほどね」
「さてと、シーツは新しいのにもう替えとくか?」
「替える前に、もう1回くらいマッサージしてくれてもいいよ……」
夏樹は物欲しそうな上目遣いで俺を見てくる。
そんな可愛い目でお願いされたら、俺も夏樹にしてあげないわけにはいかない。
俺はベッドの上に無造作に置かれているマッサージガンを再び手に取って、電源ボタンを押すのであった。
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