第45話最後は彼氏ので終わりたい4年目の彼女

 1時間ほど俺の上で暴れた夏樹は、満足気な顔で俺の体の上にかぶさる。

 全体重を俺に乗せてくる彼女は汗だくであり、はぁはぁと息を荒げている。

 とても、男心をそそるけど、下は元気にならない。

 それもそのはずで、1時間で3回も夏樹に絞られたので当然だろう。

 さてと、もうすでに5回出した。

 今日は1日中するというが、時計を見るとまだ14時になったばかり。

 俺の体にぴったりと張り付くように乗っかっている、暴れん坊なクールで素っ気ない彼女に聞いた。


「まだするのか?」


「……するよ」


「まだしたいのなら、ガチで4時間くらいのデカい休憩をください」

 切実なお願いをしたら、俺に覆い被さっている夏樹は俺の下腹部を触ってきた。

 強引に刺激を与えてくるが、イマイチ反応は鈍く元気になるものの、朝一のそれとは比べ物にならないほどに弱々しい。

 夏樹はそれを手で実感すると、不満げな顔で俺に言った。


「……いいよ。長めに休憩しよっか」


「ありがとうございます」

 俺の体の事情を察した夏樹はちょっと長めの休憩タイムを許してくれた。

 安心? したのか、俺のお腹がぎゅるると音を立てる。


「お腹減ったね」


「時間が時間な上、カロリー消費もしたしな……」

 夏樹には今日のご飯はカロリーバーと言われているが、長めの休憩タイムなんだし普通のご飯が食べたいなぁという顔で訴えて見た。

 俺の体の上で汗だくのまま乗っている夏樹が俺に聞いてくる。


「長めの休憩タイムだし、ちゃんとしたご飯を作ってあげよっか?」

 どうやら願いは通じたようで、今日のご飯が味気ないモノでなくなったので俺は嬉しい気持ちになった。

 しかし、夏樹さんは俺の上で暴れたこともあり、かなりお疲れな感じである。

 なお、疲れた感じであるだけで、動こうと思えば普通に全力で動けると思う。

 作ってくれると言ってくれたが、今日はそれはやめよう。


「夏樹も面倒だろうし、今日は宅配ピザでも頼むか?」


「珍しいね。宅配ピザを食べようなんて」


「そういや夏樹と宅配ピザを一緒に食べたことないな~って」


「じゃあ、頼もっか……」

 夏樹は俺の体に乗ったままスマホを弄り出す。

 さすがの俺もちょっとツッコミたくなった。


「なんで、俺の上にずっと覆い被さってんの?」


「ちょっとでも長く湊と肌を重ねたくてね。あー、重い?」


「全然軽いぞ。ほんと、その体でどうやったらあんなパワーが出せるんだか……」


「湊がひ弱すぎるだけだから。で、何食べる?」


「パイナップルピザ」

 敢えて、好き嫌いが激しそうなピザの名前をあげた。

 すると夏樹は怖い目で俺を見た。


「本当に食べたいの?」


「いや、冗談だからそんな怖い目で見ないでくれ……」


「で、何にするの?」


「あー、色々と食べたいし4種類載ってるやつでいいだろ」


「耳の部分は?」


「豪勢にチーズ入りで」


「ポテト、チキンとかは?」

 二人で話し合いながら注文をする。

 全てが決まると夏樹は俺に言った。


「受け取りに行くと半額だから取って来て」


「面倒くさいけどしょうがない。行ってくるとするか……」

 着替えて外に出ようとベッドの上から起き上がろうとする。

 しかし、夏樹が俺に言った。


「やっぱり取りに行かなくていいよ。今日は湊と1秒も離れ離れになりたくない」


「それなら、普通に二人で行けばいいだけだろ」

 家からそう遠くない場所にピザ屋さんがある。

 半額というのはあまりにもデカいので俺は諦めきれなかった。


「まあ、それもそっか……」

 俺と夏樹は外に出ても恥ずかしくない程度の服装に着替える。

 おしゃれでも何でもない服装に着替えた俺と夏樹は休憩がてら外に出た。

 

  ※


 注文したピザを受け取りに外へ出た俺と夏樹は手を繋いで歩いている。

 俺の部屋は大学の近くなこともあり、知り合いがときたまそこら辺に出没する。

 だけど、そんなのお構いなしに夏樹が俺の手を握って来たのだ。


「前までは見られたら恥ずかしいからって、俺の部屋のご近所では手を握ってくれなかったのにな」


「別にいいかなって。誰に笑われようとも湊が居てくれるし」


「重いなぁ……。まあ、あれだ。俺に何かあったら遠慮なく見捨ててくれていいからな?」


「たとえば?」


「怪我して体に障害を負うとか色々」

 急に真面目なことを言いだした俺を夏樹はクスリと笑ってきた。


「急に何言ってんの?」


「夏樹に何回も絞られたせいで、深めの賢者なお時間のせいだな」

 欲という欲がそがれた今、俺の頭は冴えてはいないけど、ちょっとした不安も見逃せないくらいに、思慮深くなっているのだろう。


「てか、たったの5回でしょ?」


「あのな、普通は5回もしないから……」


「友達は10回絞ってやったって言ってたよ」


「お前の友達がおかしいんだよ……。無理して、その友達に張り合おうとしなくていいんだからな?」

 ちょっと釘をさした。

 しかし、夏樹は他人と自分を比べるのが大好きで負けず嫌いだ。


「は? 私は湊が12回逝くまで絶対に諦めないからね?」


「……そんなに出ないって」


「出なくてもイケはするでしょ?」

 やるといったらやる子である夏樹さん。

 そんな彼女に俺は気になっていたことを聞いた。


「そういや、夏樹ってシテるとき何回くらい良い感じになってんの?」


「調子いいと6回。てか、もっと満足させてくれてもいいんだよ?」


「頑張ります……。あー、でも、もっと満足したいなら道具使わせてほしい」

 夏樹を満足させるのと長時間するには我が身ひとつだけだと頼りない。

 道具の使用の許可を求めるのだが……。

 夏樹は不機嫌そうな顔で俺の手をギュッと握りしめてきた。


「湊のだけで気持ち良くなりたいし道具使われるの嫌なんだけど?」


「お前はストッキングとか使うじゃん」


「それはそれだから。私は湊以外で感じたくないし」

 頑なに道具は使われたくないと夏樹は言う。

 それはそれで、俺のが大好きみたいで嬉しいには嬉しいけどさ……。


「正直なところ使ってみたい……。これでも、ダメか?」

 夏樹のことを自分以外のモノで弄ってみたい。

 そんな出来心を俺は捨てきれないでいる。

 頑なに俺以外を拒否してくる夏樹はちょっとそっぽを向きながら言う。


「……まあ、最後はちゃんと湊のでイカせてくれるならいいよ」


「じゃ、休憩中に買ってきていい?」


「はぁ……、すけべなやつ……」


「そりゃあ、ずっと前から使ってみたかったんだからしょうがないだろ」

 正直なところ、道具を使ってもいいというお許しを貰えて凄く嬉しい。

 俺はうきうきとした感じで答えた。


「ほんと、男子高校生みたいで笑える」

 夏樹は俺のことをからかってきた。

 いや、男子高校生みたいで笑えるって言うけど、お前には言われたくない。

 俺は夏樹の頬をツンツンとつつきながら笑う。



「暇があれば、すぐに俺に跨ってくるお前に言われたくないぞ?」



 夏樹は不機嫌そうにそっぽを向いた。

 で、いじけたように俺に言う。


「うっさい」

 あんまりイジメるのも可愛そうというか、しっぺ返しされそうなので俺は黙る。

 それから、程なくして俺と夏樹はご近所にあるピザ屋へと辿り着いた。




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