第37話勝ち負けはそもそも気にしていない4年目の彼女
何されたって構わないと言わんばかりな夏樹を見て、俺は我慢ができなかった。
酔いが回っていたこともあり、いつも以上に激しく責め立てた。
嫌われたくない、好きでいて欲しい。
なるべく優しくしようと思って、相手を傷つけないように振舞っていた。
夏樹にとって、それは実に保守的でツマラナイ男だったのかもしれない。
なにせ俺に乱暴にされた夏樹は――
いつも以上に乱れていたのだから。
「もしかしてだけど、俺って下手だった?」
優しくするあまり下手糞だったのかもしれないと不安になった俺は夏樹に聞く。
すると、水を飲んで休憩していた夏樹が気まずそうに頬を掻いた。
「下手じゃないけど、物足りなくはあったよ」
「もっと早く言ってくれよ」
「彼氏のプライドを壊すのはちょっとねって前は思ってたし」
「ぐ、具体的にはどこら辺がダメだった感じ?」
「体重を私に掛けないようにしてたところ。体重移動が弱いから、奥まで響いてこなくてね……。だからまあ、今日は遠慮なかったし本当に良かった……」
夏樹はうっとりとした目で自身のお腹を擦った。
どうやら、本当に今日は大満足してくれたらしい。
「まあ、あれだ。体重掛けたら、夏樹が潰れないか心配でな……」
「人ひとりくらいじゃ潰れないって」
「てか、もう一度言うけど、もっと早く不満を言ってくれたらよかったのに……」
「優しいから傷つけないようにしてあげてたんだけど?」
「……まあ、わかるけどさぁ」
夏休みの前と夏休みが始まってから、俺と夏樹の関係は明確に変化している。
最近になって、恥と遠慮が無くなったからこそ、馬鹿真面目に夜のお遊びについて話し合っているのだ。
夏樹が俺に『下手糞』や『激し目』がいいと言えなかったのも良く分かる。
が、しかし、さりげなく教えてくれても良かったんじゃ?
と、グズグズとした気持ちを抱いていたたら、夏樹は俺に呆れたような顔をする。
「あのさぁ……、ぐちぐちとうるさいけど、一応私は態度にしてたよ」
「……詳しく教えてくれ」
「湊が私を誘ったとき、私が素っ気ないって思わなかった?」
「えっと、俺の行為に不満があったから、誘われても塩対応だったのか?」
「そういうこと。さすがに冷たくされたら『俺、下手なのか?』って気が付くかなって感じ」
「……てっきり、恋人も4年目だし、行為に飽きてきたのかと思ってた」
「なわけないから。4年目っていっても、湊が一人暮らしを始める前は月に2、3回。そんな頻度で飽きるとか修行僧なの?」
ごもっともなことを言われてしまい、俺は肩を縮こまらせる。
すると、夏樹は根掘り葉掘りと抱いていた不満を俺にぶつけてきた。
筋力がないから持久力がないだの、彼女とやるとわかってるなら前の日は抜くのはやめとけだの、終わったらすぐ抜くのが素っ気ない感じがして嫌だっただの、終わった後の処理を私がしてあげたいのにすぐ自分で綺麗にしちゃうだの、本当に色々と言われた。
さすがに遠慮がなさすぎて、俺はちょっと泣きそうだ。
「夏樹さん。そのくらいで許してください……」
「……わかった。まあ、あれ。でも、今日は凄く良かったから今日みたいな感じでよろしく」
「頑張ります……。ところで、なんでその……、また俺のアソコをおさわりに?」
今日は激しくしたことで、夏樹も大満足。
朝までコースは阻止できたと思っていた。
しかし、どうやら良かったは良かったとはいえ……。
「まだ足りないから?」
まだまだ合格には程遠いらしい。
夏樹は俺にまたがり、そのままいれようとしてくる。
「あー、さすがにそれはやめような?」
「前々から思ってたけど、湊ってちょっと早いんだよね。出したらヤバい状況なら、もっと長持ちするかなって」
いや、絶対に俺は出るの遅い方だと思う。
夏樹のせいで常にタンクはカラカラに近い状態だし、出しばかりでキツイのにお構いなしに弄られるのだ。
そう易々と出したら、本当に身が持たない。なので、俺は出す回数を減らすために我慢を頑張っている。
「とはいうが、さすがにおふざけがすぎる。冗談じゃなくて普通に怒るぞ?」
「……湊って真面目だよね」
「そりゃ真面目になるだろ。好きな人を不幸になんてしたくないし」
「ごめん……。気軽にやっちゃダメなことだった」
夏樹はしゅんと落ち込んだ。
そんな彼女を励ますかのように俺は冗談を言う。
「遅いか早いか確かめてみるか?」
スマホにタイマーを表示させて夏樹に見せた。
俺はアホだ。よく考えれば、夏樹に挑発的なことをしたら大変なことになることのを身をもって知っていたはずだ。
俺を見る夏樹の目つきが獲物を狩るハンターのように鋭くなった。
「ねえ、湊。勝負にしない?」
「しょ、勝負って?」
「もしさ、5分以内に決着が着いたら、私のお願いを一つ聞くとか?」
「……いや、それはその」
「普通よりも遅いんじゃないの?」
夏樹は俺を煽ってくる。
見え見えな挑発だが、制限時間は5分以内だ。
さすがの俺もそこまで早くないし、負けるわけがない。
「ああ、いいぞ。俺が負けたらお前の言うことを何でも聞いてやる」
と息巻いたものの、俺は念には念を入れておくことにした。
「後ろを弄るのはなしでお願いします……」
「ちっ……」
「おまっ、やっぱ狙ってたのかよ……」
ダサいことをしても守りたいものがある。
本当に言っておいて良かったと俺は安堵した。
「ま、いいや。で、勝負はするってことでいい?」
「ああ。俺から勝負を仕掛けたしな。てか、今の状態だと俺が有利すぎるしハンデをやろうか?」
「ふーん……」
夏樹はそう言いながら、タイマーをセットする。
タイマーのスタートボタンを押すかと思いきや――
夏樹はゴソゴソと棚からローションとストッキングを取り出した。
そして、夏樹は悪い顔で俺を見る。
「ハンデくれるって言ったでしょ?」
騙されていた。俺はアホで馬鹿だった。
クールで素っ気ない彼女は狡猾であることを忘れていた。
たぶん、夏樹は最初から勝負の勝ち負けなんて気にしていなかった。
そもそもの夏樹の狙いは――
再び、俺をローションとストッキングで責めて鳴かせることだ。
「そ、それは反則技じゃない?」
震える俺を夏樹は笑い、白くて綺麗な手で俺の大事な部分に触れながら言う。
「珍しく今日は湊が私に激しくしてくれたしね? 私も激しくしないとダメだよね?」
嫌な汗をかきながらも、俺は勝負から逃げないことにした。
なに、たった5分耐えればいいだけだ。
き、きっと、大丈夫だ……よな?
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