第33話彼氏にお世話されたい4年目の彼女
夏樹から手錠の鍵を取り返そうと必死に口を動かして20分。
あとちょっとで夏樹から取り出せそうだったのだが、焦ってしまい鍵を奥に押し込んでしまって完全に取れなくなった。
なんかムカついてしまい、俺はやけくそに口を動かした後、夏樹の一番敏感な部分を軽く噛んだ。
そしたら、夏樹はというと、
「ん゛っっっつ~~~!!!」
先程までゆったりと弱い刺激を受け焦らされていたこともあり、いきなりの高刺激に夏樹は顔を歪めて声にもならない声をあげた。
そして、夏樹は数秒間に渡って、びくびくっと体を震わせた。
程なくして、落ち着いてきた夏樹は俺を恨めしい目で睨む。
「……いきなり何してくれてるわけ?」
「鍵が取れなくてムカついた」
「今度、湊のも噛むから」
「そうは言うけど、気持ちよさそうに見えた気が……」
というと、夏樹は俺の顔を太ももで挟みこんで言う。
「普通に痛かったから悶えてたんだけど?」
「……ごめん」
どうやら、力加減をミスったようだ。
普通に痛かったとのこと。気持ち良くて震えていたようではないらしい。
だがしかし、夏樹は太ももで俺の顔を押しつぶしながら平坦な声で言う。
「まあ、悪くはなかったけどさ」
やっぱり普通に気持ち良かったんじゃないか。
夏樹は俺の一噛みで満足したのだろう。普通に手錠の鍵を指で取り出して、俺の手錠を外してくれた。
その後、夏樹は軽くシャワーを浴び、俺もうがいをしてサッパリとした。
で、暇が訪れると夏樹は俺に信じられないことを言う。
「そろそろ、少しの間デキナなくなるかも」
「欲しがりな夏樹がデキないって、頭でも打ったか?」
「いや、生理だから」
付き合い始めて4年目。夏樹は堂々と、デキなくなる理由を教えてくれた。
「察しが悪くてすみません」
「ま、湊が察しが悪いのは今に始まったことじゃないから別に気にしないけどさ……」
「な、なんだ?」
「私が辛い目にあうのに湊は嬉しいの?」
自分が気持ち良くなれないときは夏樹は絶対にしない。
まとまったお休みの日を貰えるとわかり、俺はちょっと嬉しくなっていた。
夏樹はそれがお気に召さなかったようだ。
「あ、いや、そういうわけじゃ……」
「まあいいや。てか、今回から湊を避けなくてもいい?」
生理中の夏樹はすこぶる機嫌が悪い。
普段から素っ気ないが、いつも以上に素っ気なくなる。俺への当たりもいつもよりも強くなる。
なので、夏樹は期間中は若干俺から距離を置いていることがほとんどだ。
「避けないも何も、お前から俺を避けだしたんだろ」
「付き合いたての頃、湊に怒られたのがちょっとね……」
「あれは本当に悪かった」
俺は苦い記憶を思い出す。
夏樹になんで今日は機嫌が悪そうなんだ? と不機嫌な感じで怒った。
付き合い始めてから間もなかったこともあり、夏樹も恥じらいがあった。
ゆえに、夏樹は生理のせいで……なんて言えるわけがない。
なのにまあ、不機嫌なのは、俺に理由を言えないやましいことか? なんて、デリカシーのない言葉をぶつけてしまった。
恥じらいもあり、生理と俺に言えず、どうしていいか分からなくなった結果。
夏樹は俺の前で泣いた。
どうやら、まだそのことを根に持っていたというか気にしていたらしい。
「あれは私がハッキリ言わなかったのも悪いから気にしないでいいよ」
「いやいや、付き合ったばかりなのに生理で機嫌が悪いとか、彼氏に言える方がおかしいだろ」
今でこそ、俺と夏樹はデリケートな話題を話せる。
それは長い年月の積み重ねがあるからだ。
※
手錠の鍵を夏樹から取り出すというお遊びをしてから2日後。
夏樹は見るからに体調が悪そうで不機嫌そう。
でも、そんな彼女はというと、
「お腹痛いからさすって」
めっちゃ甘えてくる。うざいくらいに甘えてくる。
もしかして、今の今までも期間が来たら、不機嫌で俺に嫌な気持ちをさせたくないために避けていたんじゃなくて……。
甘えたくてしょうがなくて、俺にウザがられないようにだったのかもしれない。
そんなことを考えながらも、俺は甘えてくる夏樹に構う。
「他にして欲しいことは?」
「お腹空いたからご飯」
「ん、わかった」
「できたら、湊の手作りで」
「……不味くても文句いうなよ?」
「言う」
わがままだなぁとか思ってしまったが、可愛いので許せる。
そしてまあ、俺は気が付いた。
「4年も付き合ってるのに、気が付いてあげられなくてごめんな」
夏樹は不機嫌だし、俺に近づかれたくない。だから、俺も夏樹を避けていた。
でも、近づかれたくないとはいえ、夏樹はたぶん俺に優しくされたくはあった。
なのに、俺は夏樹のためを思って会わないことが正解だと信じていた。
4年も付き合っているのに、わからなかったのは馬鹿だなぁと俺は苦笑いする。
そして、格好つけるのが少し恥ずかしくて俺は夏樹に冗談交じりで言った。
「俺は婚約者なんだから、好きなことを何でも言っていいからな?」
「ありがと……」
夏樹は素っ気ない感じで返事をくれた。
ありがとうに余計な言葉は一切ついていないのが、交じりっ気のない本心みたいな感じがして俺にとっては凄く心地よい。
「さてと、何食べたい?」
いつもよりも甘えん坊でお腹を空かせている彼女に聞いた。
すると、嬉しいことを言われてしまう。
「湊の手料理なら何でも嬉しいよ」
で、俺は腕によりをかけて料理を作った。
出来上がったので、夏樹の元へ持っていく。
気怠そうに動画を見て暇を潰していた夏樹はというと、俺の料理を口にする。
しっかりと味見をしたので、味には自信があるが俺は不安になった。
夏樹はそんな俺に言う。
「あのさ、そんなに見つめられると食べづらいんだけど?」
「夏樹の口に合ったのか心配なんだからしょうがないだろ」
「はいはい。美味しいよ。だから、いつまでもそんな顔で見ないで」
美味しいよと言われて俺はホッとした。
それがまあ、夏樹は面白おかしく見えたのだろう。
くすくすと俺のことを笑った。
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