第29話裏垢でとんでもないことを呟いている4年目の彼女
俺が目を覚ましたのはお昼過ぎ。
結局、朝まで夏樹にヤラれたので遅めの起床だった。
にしても、昨日は凄かった。
具体的には責められ方もそうだし、回数も凄かった。
ベッドの上で上体を起こした俺は、指を折りながら数えていく。
「お昼の舐め合いで1発」
けっこう辛い体勢で夏樹と体を反対に重ね合わせて舐め合った。
俺が下になったり、上になったり、互いに横向きってのもあったな。
体勢をちょくちょく変えていたものの、出したのは結局1発のみ。
ここまでは、普通のカップルとしては健全なレベルだ。
「お食事会が終わった後」
俺のアレをデカくしようとする夏樹を組み伏せようとしたら、逆に夏樹に組み伏せられていい様にヤラれた。
その際、俺は3発出した。いや、出したというよりも絞られたの方が正しい。
まあ、ギリなんとか……ここら辺までは現実的なラインか?
「そして、延長戦」
寝ている夏樹なら勝てる! と仕返しをしようとしたら返り討ちにされた。
深夜2時から朝7時までの間に……。
合計4発。
最後の3回は水みたいなのがちょびっとしか出なかった。
うん、これはもう全然健全じゃない。
普通にやり過ぎだ。
「はぁ……、そりゃ寝たのに気怠いわけだ」
起きたばかりなのに気怠い俺はベッドから降り、夏樹が買い込んできた安売りだった割と効く栄養剤をグビっと飲んだ。
激しい行為に伴って体重が減りつつある。
元々太ってないこともあり、このままではガリガリになってしまう。
食もそんなに太い方ではないので、これ以上は食べる量は増やせない。
友達と俺の部屋で宅飲みしたとき、『これ不味くて無理だったから差し入れ』とゴミ処理がてらに友達が持ってきたプロテインを飲んだ。
そして、俺は覚悟を口にする。
「……俺はこの生活を耐えきってみせる」
そう、夏樹が留学期間するまで後2週間を切ってしまった。
それまでは、夏樹を満足させられるよう俺は頑張るつもりだ。
海外留学に行っても寂しくないよう彼女のために頑張るのが、彼氏である俺の役割なのだから。
ひとりでにガッツポーズを決めて気を引き締めていたら、夏樹が起きた。
「おはよ。なんか、朝からやる気あるしヤる?」
「いや、さすがにそれは無理。てか、今日は友達と買いものに行く約束をしてたんじゃないか?」
時計を見ると12時30分。
時間は大丈夫なのか聞いたら、夏樹は髪の毛をポリポリと掻きながら言う。
「大丈夫。15時に待ち合わせだから」
「ちょい遅めの時間ってことは買い物して、夜ご飯食べてくるパターンか?」
「んっ」
そうと言わんばかりに夏樹は吐息を漏らした。
そんな彼女を尻目に俺はスマホを弄る。
すると、義妹である
『そろそろお母さんの誕生日が近いので何をあげたら喜ぶと思いますか?』
そういや、母さんの誕生日はそろそろだったっけな……。
なんとも微笑ましいメッセージを受け、俺は相談に乗ってあげることにした。
で、メッセージのやり取りを続けること数回。
理沙ちゃんは俺にこう頼んできた。
『一緒に選んでもらえたりは……』
誕生日プレゼントを選ぶお買い物について来てほしい。
そんな感じのメッセージを受けた俺は
「なあ、理沙ちゃんが母さんの誕生日プレゼントを選びたいから、一緒にお買い物してくれませんか? って頼まれたんだけど……行っても平気か?」
「いや、別にそのくらいは聞かなくていいから。義妹とはいえ、妹なんだから普通に買い物くらい付き合ってあげなよ」
「髪の毛一本で浮気だって勘違いされて、おしおきされたからな……」
わざとらしくどこか遠い目をしたら、起きたばっかで未だにベッドの上に居る夏樹は枕を抱きかかえる。
そして、もじもじとした感じで謝ってくる。
「ごめん」
「もう一度言ってくれ」
ついつい、ごめんという夏樹が可愛くて、俺はアンコールをしてしまった。
※
母さんの誕生日が近いということもあり、誕生日プレゼントを選ぶために俺は義妹である理沙ちゃんと繁華街にやって来ている。
横を歩くおしゃれな普段着姿の理沙ちゃんは、俺にこの前のことを謝った。
「この前は急に押しかけてすみませんでした」
「いいや、気にしてないし。なんなら、もっと頼ってくれてもいい。こんな年で、俺達は兄妹になったんだし、仲良くなるためにも、どんどん関りを増やさないとだからな」
俺は陰キャなので理屈っぽく話してしまった。
失敗したと思うも圧倒的陽キャの理沙ちゃんは眩しい笑顔で俺に答える。
「ですね!」
「あ、ああ。で、母さんに何をあげるのか決めたのか?」
「えっと、実用性の高いハンカチをあげようかなと。花とかも考えたんですけど、たぶんそういうのはお父さんがあげちゃうと思うので」
「だな。じゃ、母さんが好きそうな柄をちゃんと教えるから、参考にしてくれ」
「はい! あ、お
「日本酒の飲み比べセット」
「あー、確かに。お父さんと毎日のように晩酌してますし、お酒が好きですもんね」
一人暮らしを始めて母さんと会う機会が減った。
でも、楽しくやっているようで何よりだ。
なんて思いながら、俺は理沙ちゃんに恥を忍んで俺は切実なことを聞いた。
「で、新しい家族が増えそうな……、気配とかは?」
母さんは俺を若くして生んだ。
今も、若いとまではいかないが、普通にまだまだデキるであろう年齢。
それがゆえに、ずっと気になっていたことを俺は理沙ちゃんに聞いた。
「お義兄さんって、すごいこと聞いてきますね」
「あ、ごめん」
「いえいえ、お義兄さんの知りたいことはもっともですよ。で、ですね……。まあ、わんちゃんあるかも? って感じです」
「そ、そうなのか……」
「たまに二人だけで夜ご飯を食べに行ってますし、平日休みが被った日は二人でお出掛けに良く行ってます。もしかしたら、そのときに……って感じですね」
うん、確かにそれは怪しいな。
年の差が20も離れたきょうだいができるかもしれない。
そうなったら、どうなるんだろうな……と思うも、イマイチ想像を膨らませることができなかった。
「さてと、悪いな変なこと聞いて」
「そうですよ。お詫びとして、何か奢ってくださいね」
「ん、わかった。ま、もとより家族仲を深めるために今日は理沙ちゃんに何か奢ってあげようと思ってたけど」
「期待してます」
なんて話をしていた時であった。
理沙ちゃんにとあるお願いをしようと思っていたのを思い出す。
「あー、奢る代わりにと言ったら何なんだけどさ。今度、彼女が留学に行くわけで、向こうで頑張れよ! って感じでプレゼントを渡そうと思ってるんだけど、意見を聞かせて貰ってもいい?」
「もちろんです。というか、お義兄さんって彼女さんいるんですね」
「まあな。見る?」
クールで素っ気ない彼女は可愛い。
普段は自慢しないのだが、身内くらいには自慢してもいいだろう。
俺は夏樹の写真を理沙ちゃんに見せた。
「モデルさん?」
彼女を褒められて嬉しい俺はニコニコしてしまう。
そんなときだった。
理沙ちゃんはあれ? という顔になる。
「どうかしたか?」
「このお顔、どこかで見たような?」
理沙ちゃんは通行人の邪魔にならない場所へ逸れる。
そして、スマホを弄ること1分。
俺にとあるSNSのアカウントを表示させたスマホを理沙ちゃんが渡してきた。
「そのアカウントさんのプロフィール写真と少し似てないですか?」
プロフィール写真に写る女の人は黒いマスクをして口元はわからない。
だがしかし、プロフィール写真の画像に映る人物は間違いなく夏樹だと思う。
だって、この黒いマスクをした夏樹の写真を撮ったのは――
俺だ。
えーっと、アカウント名は……
なつき
うん、そのまますぎてびっくりだ。
てか、俺はこのアカウントを知らないし、リアルな知り合いに内緒な裏垢か。
どれどれ、どんな内容を投稿して……。
なつき
『すきすきすきすき』
なつき
『頑張って10回イかせられるようになりたい』
なつき
『彼氏のためなら何でもできる』
なつき
『この前、好き過ぎて内緒でご飯に唾液入れちゃった。気が付かないで食べてて、わりと興奮した』
なつき
『口移しで何かご飯を彼氏に食べさせてみたい……』
なつき
『口移しでジュース? 飲ませあったけど良かった。またしたい』
なつき
『絶対にもう逃がさない』
なつき
『後ろの穴って責める機会ないかな……』
とんでもない投稿の連発だった。
俺はまさか……と思い、画像がアップされてないか確認した。
ふぅ、どうやらネットリテラシーはちゃんとしているようだ。
プロフィール写真以外の画像は1枚も投稿されていなかった。
俺は理沙ちゃんにスマホを返しながら言う。
「いや、全然知らない。目元が良く似た他人だろ」
さすがにこのアカウントの持ち主を、自分の彼女だと言える勇気はなかった。
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