第26話ずっと舐めて欲しかった4年目の彼女
「やっぱ二人は狭いな」
お風呂に一緒に入ってる夏樹に言った。
すると、話しかけられた夏樹は甘えるようにピタッと俺に体を寄せてくる。
「別にいいじゃん」
「にしても、さすがに疲れた……」
俺は苦笑いで夏樹の方を見る。
すると、夏樹は照れ隠しで口元を湯船に溜まったお湯に沈めてしまった。
夏樹が恥ずかしがるのも無理もない。
何せ、俺達がお風呂に入ったのは――
今日をそのまま過ごせるような状態じゃなくなってしまったから。
俺に耳を舐めなられて、くすぐったさを感じながら気持ちよさそうに震えていた夏樹はというと、耳だけでは飽き足らず、『他のところも舐めて?』と頬を赤らめながら俺に頼んだきた。
次第に行為はヒートアップしていき……。
今の今まで、クールで素っ気ない夏樹はココを舐められるのは嫌だろうなって、俺が思っていた場所も舐めて欲しいと言われた。
『ココも舐めて……』
切なげな顔をして舐めて欲しい綺麗な場所を指で弄る夏樹に頼まれてしまえば、ヤらないわけにはいかなかった。
ただ俺に舐めれるだけなのもあれだったのか、気が付けば夏樹もお返しと言わんばかりに俺のことを舐めていて……。
仲良く二人してベタベタになってしまったというわけだ。
「……あのさ」
刺激的な思い出に浸っていたら、夏樹が俺に話しかけてきた。
「ん、どうした?」
「通訳になるのやめよっかな……」
寂しそうな声で夏樹は言った。
夏樹は通訳になるのが夢。だから、半年間、海外に留学へ行く。
高校1年生の頃から勉強に力を入れていて、帰国子女である俺に英語を教えて欲しいと頼んでくるくらいには本気である。
「複数の言語を使いこなせる格好いい大人になりたいんじゃないのか?」
「あー、それはウソ」
だと思った。
幾つもの言語を使いこなせる格好いい大人になりたい。
そんなことを言う夏樹の顔は、いつもどこか上の空な気がした。
通訳になりたい理由は別にあるんだろうな、と思ってしまうくらいにな。
とはいえ、話したくないのなら無理に聞く必要もない。
俺は今の今まで、強く聞き返したことはなかった。
でも、今日になって夏樹が通訳になりたい本当の理由を教えてくれるらしい。
「へー、そうだったのか。で、通訳になりたい本当の理由は?」
白々しく俺は聞き返した。
夏樹は愛想笑いをしながら、本当に通訳になりたい理由を話し始めた。
「私が中3の頃にさお父さんがポンコツ通訳士のせいで仕事で大変な目に遭った。会社が傾くレベルくらいの本当にやばいやつで、首吊るかも……ってかんじなやつ」
わりとハードな話をされて俺はビビってしまう。
そんな俺を見て、夏樹は心配はいらないよと補足をしてくれる。
「今は何とかなってるからそんなビビらなくていいから」
「そ、それならいいんだけどさ」
「で、話を続けると、私はもう二度とお父さんが酷い目に遭わないように、私がちゃんとした通訳になって助ける! って感じで、通訳士を目指すようになった」
「うん、夏樹が通訳になりたい本当の理由を話してくれなかった理由が、めっちゃ分かった」
何で通訳になりたいの? って軽い気持ちで聞いたのに、
今みたいなめちゃくちゃ重い話をされたら、どんな顔をすればいいか分からなくなるからな……。
「でしょ? だから、なんで目指してるの? って聞かれたら、格好いい大人になりたいからって言ってる」
夏樹は苦笑いしながら俺に話を続ける。
「思春期にもなれば親とあまり話さないじゃん?」
「そうだな」
「最近、私もあまりお父さんと話してなくてさ……」
「まあ、あるあるだな」
「この前、久しぶりに色々と話した。まあ、話したというか、お前は彼氏の部屋に遊びに行きすぎだ! って怒られた感じだけど」
やっぱり俺の部屋に来すぎて、親に何か言われてるんじゃないか……。
夏樹にツッコミを入れそうになったが、まだ話は続きそうなので俺は黙っておく。
「ポンコツ通訳士のせいで酷い目に遭ったお父さんを助けるために通訳になろうと海外留学に行って勉強してくるんだから、彼氏と会えなくなる間際の、今くらいは多めに見てくれてもいいでしょ! ってキレたら……」
「お、おう」
相槌を入れた。
すると、夏樹はムスッとした顔で俺に告げる。
「お前の気持ちは凄く嬉しい。でも、今はお父さんは英語を話せるぞ? あと、会社がデカくなったから『まともな通訳』も十分に雇えてる……、だって」
「あー、うん。ご愁傷様」
「まあ、私も前から、通訳になったところで、本当にお父さんの仕事を手伝うかどうかは微妙なところだったのはわかってた。でも、改めて私が通訳になろうと志した部分を否定されたような感じなわけで……」
父のために通訳になると志したものの、本当に父のために手に入れた力を振るうかどうかは微妙なところだと理解していたらしい。
とはいえ、なんとなく夏樹の気持ちがわかる。
「夢が壊れた気分にはなるな」
「そういうこと。だからまあ、いっそのこと湊と離れたくないし、通訳になるのやめようかな……って」
寂しそうな感じで言う夏樹に、間髪を入れずに俺は言ってやる。
「いや、嘘つくなよ。ここまで頑張ってんだし、絶対にこのまま通訳になってやるってのが夏樹だろ?」
「よくわかってるじゃん。まあ、うん。試しに『通訳になるのやめよっかなって……』って言ったら、湊はどんな反応するかなって気になって話してみただけ」
可愛くない奴という顔で夏樹は俺を見た。
そして、何故か俺の頬をつねってくる。
「なんで、つねる?」
「お前のことは良くわかってるぞ? って湊の顔つきに、なんかムカっとした」
「……そりゃあ、4年も付き合ってたらな?」
俺は自慢げに語った。
そしたら、夏樹はボソッと俺に言う。
「ずっと前から湊にアソコを舐めて欲しいと思ってたことは、全然察してくれなかったくせに」
「……いや、人によってはダメって人も多いし、クールで素っ気ない夏樹さんのことだから、舐められたくないんだろうな~って思ってたわけで」
長ったらしく、いい訳をする。
そしたら、夏樹は俺に呆れたような感じで言った。
「はぁ……、湊が舐めやすいように、ちゃんと綺麗にしてあったでしょ?」
いや、さすがにそれで舐めて欲しいというのを察しろは難易度が高すぎだろ……。
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