第24話ちゃんと反省している4年目の彼女
カノジョである夏樹にメイド服を着て貰うことになった。
しかも、メイドさんのロールプレイのおまけ付きで。
早速、大学の友達から俺が譲り受けたメイド服に夏樹は着替える。
「はぁ、これでよろしいでしょうか。ご主人様?」
フリフリが可愛いミニスカメイドの夏樹は感情のこもってない声で俺に媚びる。
「可愛いな。マジでありがとう」
大学生の文化祭で使われたメイド服はコンカフェで働く衣装づくりが大好きな子によって手作りされた逸品らしい。ドン〇で売っているようなペラペラの布で作られてなどおらず、しっかりとした作りをしている。
生地代だけでも相当にお金が掛かっただろうし、こんないい物をタダで貰えたのは本当にラッキーなのかもしれない。
「はいはい。お世辞をどうも」
「いやいや、本当に可愛いから」
「……あっそ」
満更でもない顔で夏樹は素っ気ない態度を取る。
こういう、ツンとしてるけど、デレているところが全然隠せてないのが本当に夏樹の魅力的なところだと思う。
とまあ、無事にメイド服を着て貰ったので、俺は早速夏樹にとあることを頼む。
「オムライス食べたい」
「……はぁ。さすがにそれはべたすぎない?」
「だって、メイド服と言えばオムライスだろ?」
「てかさ、そんなにメイド服が好きならお店いけば?」
夏樹は軽い気持ちで俺に言う。
しかし、俺は文化祭のメイド喫茶でも、友達を見に行くという体がなきゃいけないような勇気のない男。
実際のメイド喫茶なんて行けるわけがない。
それにまぁ、
「逆に聞くが行っていいのか?」
「……は?」
何、私以外の女の子と遊びたいわけ?
という殺意のこもった視線で夏樹は俺を睨んできた。
「いや、行く気ないって」
俺はもともと行く気はないが、お前が嫉妬するし行かないからな? と穏やかな表情で夏樹を見る。
「ならいい」
「素直に行かないでって言ってみたらどうだ?」
ツンツン彼女に可愛いことを言われたい。
そんなことを口走ったら、夏樹は怖いことを言ってくる。
「行ったら
「……てか、メイド服を着たいつもの夏樹なんだけど……ロールプレイのおまけはどこへ?」
「ちっ。わかりましたよ。ご、しゅ、じ、ん、さ、ま! で、メイドの私めは、なにをしたらいいんでしょうか?」
やっつけ感バリバリなメイドのロールプレイ。
こう、メイドさんってもっと可愛くて、凄く優しくしてくれて、過保護なんじゃ……。
と思ったけど、これはこれで悪くないので良しとしよう。
「やっぱりオムライス作って欲しい」
「無理。卵がない」
「じゃあ、買いに……」
「着替えるの面倒だから、ご主人様が買ってきて」
横柄な態度のメイドが俺に命令してくる。
くっ、絶対にオムライスが食べたい。
俺はメイドさんの代わりに、ダッシュでスーパーへ卵を買いに行った。
で、俺が卵を買って帰ってくると、夏樹はすでにケチャップライスを作っていた。
何故か、裸エプロン姿で。
「どうしてメイド服をお脱ぎに?」
「メイド服が汚れたら嫌でしょ? ケチャップ落ちにくいし」
「いや、それだとしても、わざわざ裸エプロンな必要は……」
「まあ、あれ。湊には悪い事したし……」
「お前のそういうとこほんと好きだぞ」
しっかりと反省していて、俺に悪いと思っている。
だからこそ、俺が喜ぶだろうと思い夏樹は裸エプロンで俺の帰りを待っていた。
そんな可愛い彼女の綺麗なキュッと引き締まったお尻が目の前にあれば、手を出すのを我慢出来るわけがない。
俺は夏樹のお尻を触った。
「いつも思うけど、私のお尻好きすぎでしょ?」
「俺の頬を夏樹が好きなのと同じだ」
夏樹が俺に触れる時、俺の頬から触りだすことが多い。
それと同じようなものだと言った。
「違うから」
「いや、同じだろ」
「……はいはい」
裸エプロンで料理している夏樹のお尻を触りながら戯れる。
正直に言うと、このまま調子に乗って胸も触りたい。
でも、それはやめておこう。
俺に触れられた夏樹がその気になったとしても……。
おしおきがハードだったこともあり、俺の大事な部分は過去一で元気がないのでその気になった夏樹に答えられる自信がないのだから。
触って強い刺激を与えればなんとか元気……になるってくらいである。
などと馬鹿なことを考えていたら、夏樹が俺に聞いて来た。
「最近、ほんと変態になったよね。どういう心境の変化?」
「それ、俺に言わせていいのか?」
「いや、いいけど」
「夏樹が遠慮しないのに、俺だけ遠慮してるのって馬鹿みたいだろ?」
「……そ、そっか」
思いがけない俺の一言を聞いて夏樹は顔を引き攣らせる。
まさか、俺が変態になったのが、自分のせいだと思ってもみなかったようだ。
いや、普通に考えたらわかるだろ。
「にしても、4年目って遅いよな」
「ん?」
「いやいや、今みたいの俺達みたいに、色んなタガが外れるのってさ、普通はもっと早い頃にやってくるんじゃないかって」
夏樹のお尻を軽くぺちぺちと叩きながら俺は言う。
ちょっとうざかったのか、俺の手を払いのけながら夏樹は俺の方を向いた。
「タガが外れたって言ったけど、まだこれでも我慢してるんだけど?」
「……え? 今なんて?」
なんだろう、俺の聞き間違えか?
あんなにも、好き放題に俺を絞ってくる夏樹さんがまだ我慢をしてらっしゃる?
「我慢してるって言った」
「ああ、そうか。お、おもちゃを俺に使わないのを我慢してるってことか。なんだよ、使う気はないと言ったくせにやっぱり使いたいんじゃないか……」
俺なりに夏樹が我慢しているという内容を予想して口にした。
すると、夏樹は呆れた顔で俺を見つめてくる。
「それもそうだけど、それ以外も我慢してる」
「じゃ、じゃあ何を我慢して……」
怖いけど、俺は自分の身の安全のために夏樹が何を我慢しているのかを聞いた。
夏樹は俺の鼻をツンと指で押す。
そして、平坦な声で俺に言う。
「ばーか」
「え、えっ?」
「いや、さっきのは冗談だから」
俺はホッとした。体に悪いジョークは辞めて欲しいものだ。
にしても……、『まだこれでも我慢しているんだけど?』という夏樹の言葉が、どうしても冗談に思えないのは俺の気のせいだろうか?
「そ、そうか。んじゃ、邪魔したら悪いしあっちに行くな」
ちょっとした恐怖を味わった俺は、料理中の夏樹の邪魔をしないようにというのを建前にキッチンから逃げることにした。
だがしかし、夏樹はそれを許してくれない。
夏樹はキッチンにある包丁を俺の方に向けて言う。
「あのさ、湊のために裸エプロンしてるんだけど?」
「……はい、ここで見守らせていただきます」
包丁を向けられて、あっちに行くなと脅された。
最近の夏樹はわりと怖いので、逆らったら何をされるのかわからない。
俺は大人しく裸エプロンの夏樹の後ろ姿を見ながら、オムライスの完成を待った。
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