第14話彼氏の初めてを奪う4年目の彼女


 このままじゃ、体がもたない。

 

 ふと、俺は気が付いた。ベッドの上だから長時間になってしまうんだと。

 どうせ1日1回は絞られるのなら、まだ短期決戦の方がマシ。

 そう、過酷な環境で長時間プレイできないような場所でシテしまい、さっさと終われば体力の消耗が防げるはずだ。

 そう思った俺は夏樹がシャワーを浴びているときに、お風呂場へ突撃したのだが……


「……あのさぁ」


 お手入れ途中であられもない姿をしている夏樹が冷めた目で俺を見てきた。

 そういや、ドラッグストアで色々と買ってたな。

 というか、俺の家じゃなくて自分の家でれよ。

 

「なんかごめんな」


「……まあ、いいけど。てか、なんで来たの?」


「いや、た、たまにはお風呂場でもいいかな~って」

 体力の消耗を防ぐためにお風呂場でなら短期決戦で終わらせることができるかもしれないなんて、夏樹には口が裂けても言えない。

 だって、言ったら言ったで『短期決戦がいいんだ。じゃ、今日は容赦なしで』と、さらなる激しい攻めを食らわされそうなのだから。

 とまあ、夏樹相手にお風呂場に突撃した理由を誤魔化したら変な勘違いをされた。


「ウソつかなくていいから。お手入れしてるところが見たくて見に来たんでしょ?」


「ちがっ、そういうわけじゃ……」

 俺はあらかじめ夏樹がお手入れすると知っていたようなもの。

 確かに、彼女がお手入れする姿を見たくて突撃した奴に見えなくもない。


「いや、その言い訳は無理」


「……はい。夏樹さんの言う通りです」

 もういいや、言い訳するの面倒くさいし。

 どうせ、4年目だ。

 彼女のあられもない姿を見に来たヘンタイに思われようが気にならない。

 いや、やっぱちょっと気になるわ……。

 そんな葛藤の最中、お風呂場でいまだに足をおっぴろげている夏樹はため息を吐きながら作業を再開する。


「はぁ……、こんな姿を見て何が楽しいんだか」

 てっきり追い出されるかと思っていたが、俺の目の前で夏樹はお手入れの続きを始めた。

 ダメージ軽減のため、肌が柔らかくなっているお風呂上りに剃る人は多い。

 夏樹もそのパターンで、さっきまでは湯舟に浸かっていたのだろう。

 もう、変態と思われてるし、遠慮は不要なわけで……。


「よいしょっと。久しぶりに湯船に浸かったな……」

 俺はお風呂に入りながら、夏樹の観察を続けることにした。


 しかし、俺は馬鹿だった。


 夏樹は綺麗にし終えると、無言でじーっと俺を見つめてきた。

 あー、これはナニか考えてるときのあれだ。

 よし、逃げようと思ったが、もう遅い。



「湊のってみたい」



 夏樹は淡々と告げた。

 たぶん、整えるじゃなくて剃るって言われたからにはツルツルは確定。

 ツルツルは恥ずかしいからヤダ、と言いたいところだが、夏樹が手入れしてる所をずっと観察していた俺がそんなことは言えない。

 『まさか私のは横で見ていた癖に、自分が見られるのは恥ずかしいから無理なんて言わないよね?』と言わんばかりな圧のある鋭い目で夏樹が俺を見てくる。


「……お願いします」

 俺は素直に諦めて夏樹にられることにした。

 話が決まれば夏樹の行動は早かった。真剣な眼差しで、黙々と作業を進めていく。

 そんな彼女に俺は聞いた。


「にしても……。まさか、お前がこんなことをしたいなんて言うなんてな」

 世間から見たら、ノーマルなプレイとは言えず、アブノーマルなプレイ。

 そんなことをクールで素っ気ない夏樹が自らシタいなんていうのは本当に珍しい。


「ま、あれ。湊の初めてをたくさん奪っておこうと思って」


「なんで?」

 

「私のことを一生忘れさせないため」

 クールで素っ気ない彼女だからこそ、余計な事は言わないのを知っている。

 ゆえに、夏樹の言葉は重みがある。

 これ、絶対にないとは思うけど別れるってなったとき……、背後からズブっと刺されるんじゃないか?


「ところで、あの~、さっきから、ちょっと遊んでませんか?」

 最初は四角で、次は逆三角。

 そして、今はハート。

 夏樹は色んな形に俺のあれを整えて遊んでいるのだ。


「せっかくだからね。ダメだった?」


「いや、別にいいけど……。てか、楽しいのか?」


「意外と楽しい」

 と言っても、飽きてきたのか夏樹は作業の速度を上げた。

 そして、俺は丁寧に丁寧に処理されて綺麗さっぱりに。

 なんか恥ずかしいなぁとか思って、お風呂場から離れようとしたときである。


「四つん這い」


「え?」


「せっかくだし、Oオーラインも」

 夏樹に背中を押されて俺はお風呂場で四つん這いにさせられた。

 反論する間もなく、夏樹は手を動かし始める。

 動けば危ないので、俺はしょうがなく耐え忍ぶことにした。

 さっきとは比べ物にならない恥辱を受けているからか、俺の顔はどんどん熱くなっていく。

 急に夏樹の手が止まった。

 まさか、失敗した……のか? 最悪の事態が起きたのかと思ったときであった。

 ズブッと刺さって来た。何がどこに刺さったのかは各々の解釈に任せる。


してんの?」


「手が滑った」

 まるで何事もなかったかのような声音で夏樹は言う。

 いやいや、その言い訳は無理があるだろ……。

 4年目にして、ありとあらゆる俺への遠慮を失いつつある夏樹は、俺に対して色んなことをしたいお年頃。



 でも、さすがにちょっと……、やり過ぎじゃないか?




 遠慮を失い始めた彼女の興味が、ヤバい方向に向かわないようにと天に祈った。




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