第113回 差異を考えて売れる
有名な企業のリーダーの話で面白い話がある。
“ライバルがバラを10本贈ったら君は15本贈るかい? そう思った時点で、君の負けだ”
ここから有用な話を引き出そうとすれば、出版社にとっては同じようなタイトルを揃えたいという思惑が存在しているから、あまり役に立たない話しか引き出せないかもしれない。
ただ、ここから得られる教訓は常に相手が何をほんとうに望んでいるかを考えることだ。これはアメリカの話だが、日本ではこのような視点を持つことによってビデオカメラ市場の成功例があることが有名だ。
ビデオカメラ市場というとカメラの企業や電機産業系の企業が乱立していて常に激しい競争を繰り広げている。ここでシェアを大きく占めた企業であるパナソニックはマーケティング戦略を一度考え直したのだという。
まずビデオカメラというのは高画質な絵を撮れる画素数やデータ容量、録画時間といった売るためにアピールできる要素は数多く存在している。しかし、そうした要素で売るというやり方は多くのライバル企業がやり尽くしている。
小説で言えば、簡単なジャンル的な売り方はもうやり尽くされていると考えていい。無双、VRMMO、悪役令嬢など……なのでどこも同じように見えるのだ。これは消費者側の原因というより、ある程度の市場規模があるところでは差異は見つけにくいということだ。
ウェブ小説では可処分時間の取り合いなのでその競合はYouTubeやウェブコミックだろう。であるとき小説を選ぶというのはどういうことなのかを考えるのが良い気がするのだ。小説というのはどちらかと言えば一人きりで
ビデオカメラ市場に話を戻すと、ビデオカメラではまず顧客がどのシーンで使うかははっきりとわかっている。パナソニックの担当者は気づいたのだ。ファミリー世帯が子どもの成長用にビデオを残すのだ。であるならアピールポイントをそうした視点で整理しなおしていく。
パナソニックは店頭では他社より40倍ズームができますとアピールしたのだ。ファミリー層はビデオカメラを使う場面で、ズーム機能は必須と考えているところと合致するような売り方に変えた。こうしてパナソニックはシェア率を上げた。
相手を一度想像する売り方、検討してみるのはいかがだろうか。
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