第110回 長編を書いてみてわかったこと。
「書籍化される作品、書籍化されない作品」という連載を書きながら短編を書き続ける日々はそれなりに
短編を書き続けたのは、短編のなかで長編に向きそうな題材を探すためでもありました。ただこれは後になって分かるのは、それほど題材は重視せずとも良いという点ですね。
まずは短編のアイデア段階の話をします。「VRMMOものの亜種」というものを書きたかったので、動物の知性化というSFテーマを選び、動物SFを考えてみたというのが着想です。このアイデアでキャラクターをたくさん登場させられることや、展開はそれほど、プロットで科学に寄せなくても実現可能だという利点に気づきました。場面をいくつか配置しつつストーリーを展開させて、ときどき人をクスリと笑わせる展開、これは短編「スペース不動産」でやったことです。それをやってみるというのは作品の発表順序は前後しますが、書いた作品でも試しています。
キャッチコピーでゲーム的な展開を予想させつつも、SFを書こうとしています。なぜゲーム的な展開を用意するのかと言えば、SFへのハードルを下げるためでした。ネット小説へのざっくりとした印象は良くも悪くもゲーム的であることです。ゲームの言葉で描かれたストーリーを追うものというのがおおよそのネット小説に当てはまると考えています。
一度、書いたところまで確か4万字ほどでアップしてみて、その予感は確信に変わりました。一冊の本にあたる10万字までを書く前にそうした仮のアップを続けることでモチベーションを保つこともしていました。
読者様には
私が特に読んだのは、第二章への言及でした。物語を終わらせるに必要なプロセスは感情的なプロセスであるという点ですね。どういうことかと言えば、展開とプロットを考えながら、私の場合はパンチングなので目印は見えないのですが、物語を終わらせる勢いというのは、物語が溢れだしてくるまで待つというところです。
自分の頭のなかでキャラクターたちのあらゆる葛藤が凪ぐまで待つ態度を持つというのは、堪えて待つということであり、執筆開始から二年という長い期間を耐え抜くには十分な指針でした。
そのあいだ、創作を志すフォロワーたちと悩みを共感できたり、共に考えられたりというのも良い経験でした。短編を書き上げるのとは違った角度から物書きを見られました。長編を書き上げた、あるいは書き上げる直前の心境の変化も面白く感じられました。まるで自分というゲームをひとつ攻略できたような爽快感と自信が身についた気がします。もちろんアップするまでどのように読者に受け入れてもらえるかは未知数です。しかし、自分は物語をきちんと終わらせられるという確信は強いです。こんなにたくさんの人が小説を書いていて皆こうした確信を持っているだろうというのは素直に凄い! と思います。
なぜ書き終えることが良いかという点にも言及します。私のフォロワー様の師匠筋に当たる方の格言なのだそうです。物語は終わらせることに意味があるとその方は仰っているそうです。物語を完成させることで見えなかったものが見え、障壁が見えるようになると思っています。一度、物語を完成させるのは短編でもそうですが、次への解像度が違いますよね?
次回からはどのように書くのが良いかを捉えなおすところから始めるかもしれません。プロットを用意するとかパンチングではない書き方を目指すとか、題材を書きにくいものに変えるなど、いくらでも試行錯誤ができます。着想からそうした相互作用が変わっていくのを眺めるのも楽しそうですね。
ついで言えば長編というものの見方も変わりました。小説には余計なディテールがあるとするのが短編の捉え方ですが、長編にはそうした余計なディテールはむしろあっていいという点でしょうか。短編とは明らかに全体を構成する部分である文章量が違うわけですから、まさにそうだと理解しました。いまはSFの世界では短編がとても盛んに書かれているので短編を書いてしまいがちですが、自分がいずれ勝負したいのは長編なのだということも意識しつつあります。
今回は長編を書いてみたという話題でした。もしよければ応援・高評価をお待ちしております。
参考文献:あなたに「アイディア」の見つけ方を教えてくれる本|パトリシア・ハイスミス著『サスペンス小説の書き方 パトリシア・ハイスミスの創作講座』|monokaki編集部 ( https://monokaki.ink/n/nfd53416565f6 )
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