第104回 三幕構成の基本から見る書籍化作品とそうでない作品の違い

 まずは書籍化するかどうかは置いておくとします。

 基本的な小説の形を説明するときに三幕構成さんまくこうせいを勉強する作家は多いです。フィルムアート社から出ている「映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術」や「素晴らしい映画を書くためにあなたに必要なワークブック シド・フィールドの脚本術2」や「SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術」などを手にする方もいるでしょう。いっぽうで家計からお金をかけられない、あるいは学生の皆さんにはWikipediaの三幕構成の項目がおすすめです。タダとは思えない解説が載っています。ここから概要を掴んで、専門書を手にすることが良いかと思います。


 雑語りをしますが、たとえば「デーモンルーラー ~定時に帰りたい男のやりすぎレベリング~」( https://kakuyomu.jp/works/1177354054882154317 )の第一話を読むとだいたい三幕構成を意識した作りになっていると思います。プロローグは舞台をざっくりとイメージしてもらうための文章ですが、第一話は三幕構成最初の第一幕前半のバックストーリーから語られています。Web小説ではプロローグでオープニングイメージを提示してから第一話でバックストーリーを語るといった手順の倒錯が見られますが、だいたい同じように物語が進んでいると考えてよいと思います。

 この流れは「異世界ウォーキング」( https://kakuyomu.jp/works/16816452220241655572 )でも同じです。

 

 一方で評価が高くない作品はを考えればいくらでも考えられると思います。なのでWeb小説≒三幕構成と考えられるなら、読者もそこからはパターン認識ですね。こうして見たとき、私たちは紙面から記憶の読書体験を引き出しつつ、読んでいる間で紙面からイメージを統合しています。過去の記憶の読書体験は引き出して読んでいない読者もいますが、それが読書体験の固有のイメージになります。なので面白いというのも過去に見たことあり、なおかつ進行していることに新規性や驚きがあることが良い文章を書くことに繋がります。すこし矛盾しているようなことですが。


 ただ最近考えていることはスクロールによって状況が推移することがWeb小説では基本中の基本で、そこに一定の流れやリズムが存在するというのが面白さに繋がっているという点です。書籍化されるということを考えると、まだ三幕構成的に物語を語っていくことのほうが書籍化には向くのではないでしょうか、と考えています。書籍化を目指そうと言うとき、確定されていることはなにも無いわけですから、まず教えるのは技法なのはお分かりいただけると思います。


 たとえば分衆ぶんしゅうを確保しているような別サイトでは人気がバロメーターとなって書籍化という道筋を辿ると考えますが、カクヨムは分衆を確保して伸びているサイトではないと思います。大手出版社がバックについていることからもお分かりいただけると思いますが、そのターゲットはたくさんいて、さらに流動的ですよね。こうして見たとき、何が書籍化されるかというのはサイトの特性より上のレイヤーの話になると思います。マーケティングや時流といった見えないものが影響してきます。

 そういうときは作家が世の中にアンテナを張ってみるというのが良いと思います。

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