第87回 不安から逃れるテクニック

 停滞ていたいする現代社会で不安から逃れるにはどうしたらいいのでしょうか。不安というものは、例えば将来への不安に代表されるように先行きへの不透明さから来るものでしょう。進学はできるのかとか、就職はできるのかとか、もっと言えば結婚はできるのか、老人になって孤独死しないのかなど、不安はどのライフステージにも存在し、尽きることがありません。若者だから夢や希望にあふれているものだとか、大人だからしっかりしているもの、成熟しているもの、老人だから達観たっかんしているものというのは幻想です。どういう世代であれ、思考する限りは不安から逃れられません。

 

 また時間というものを過去、現在、未来と切り分けたときにも過去から未来への大きな流れの上にいる以上、過去からも不安の種はやってくるものです。こうした時間観は人間が古くから文化的に持っています。それだけ自分自身が思考をしているとも言えます。これは逆説的なのですが不安を持つ者はそれだけ考えている人だと思います。

 言い換えれば考えることにとも言えます。この状況、べつに悪いとは言えません。しかし、ここにストレスの重しが追加されると、どうでしょう? ぺしゃんこに潰れてしまいますよね? 


 人間はコルチゾールというストレス物質が体内にあるときストレス反応が体に出ます。詳しいことは各自で深掘りしていただきたいですが、そういうものだと思ってください。心と体は繋がっているのでストレスが体から心をむしばむこともあります。うつ病や統合失調症とうごうしっちょうしょうなどのメンタルヘルスに関わる病気がそうです。ストレスがあることで夜、寝つきが悪くなることから始まると言われています。


 ストレスを溜めないように生きることが大切だと言えますが、そんなことが分かっていたら苦労しないというのも事実です。ストレスがあるときの対処をしっかりとすることと不安を感じないようにする復元力レジリエンスがこれからの社会を生きる者の必須の教養になるでしょう。


 今回はまずタイトル通り、不安に焦点を絞ってみましょう。さきほど不安の状態とは思考している状態だと言いましたが、これを手放す訓練から始めましょう。「え?」と思ったあなた、です。思考を手放すなんてできませんよね、死んじゃいます。ここで言う思考とは未来や過去へ向けた余分な思考のことです。人間というのは現在、この一瞬一瞬に目を向けることで未来や過去から来る余分な思考を排除する手立てを古くから実践してきました。


 お寺でする座禅ざぜんなんかがそうです。ほかにはヨガやドライブ、写実的な絵を描くなど手立てはたくさんあります。ここで具体的にどうするかと言えば、浅くても深くても構いません。呼吸に集中してみましょう。呼吸に集中して何も考えないようにする、考えたらそれをスルーする、雑念として名付けておく、音が聞こえたら雑音として名付けておくというものです。こうした手法を現代ではマインドフルネスと言ったりします。


 では体のほうのストレスはどうすればいいのでしょうか。これは対症療法がたくさんあります。リラックスを心がけてみてください。簡単なストレッチで体をほぐすとか、いまは寒い日が続きますが熱い風呂には入らずぬるま湯にゆっくり浸かるとか、深呼吸をするとかですね。さきほど言ったとおり、心と体は繋がっているので、体の変化は心にゆとりをもたらします。なんだか、ゆとり~~とかぬるま湯~~とか言っていますが、社会に無理に合わせず、自分に優しく生きることも人生には必要なことなのです。ご自愛して軽やかに生きていきましょう。

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