第61回 創作論フォローのリスク分散は有効か?

 この連載も60回を超えました。最初期から追ってくださっている読者のみなさんには感謝しきれません。レビューを書いてくださった読者様もありがとうございます。この連載自体が始まったのは今年の4月です。一度休載を挟んで7月に再開後も読者に恵まれました。この1ヶ月で得たものは大きいです。


 フォローをいただいた読者様のほかのフォローをたまたま見に行くことがあって、どんなものを読んでいるのかと興味深く観察させていただいたことがあります。だいたい、初心者向けのに載っている作品と共にフォローをいただいているというのが感じたことです。またカクヨムの関連小説にも同じ層といえば良いのか、アルゴリズムによって決められた同じターゲット層の創作論と並ぶこともあって一緒にフォローしてもらうことが多いと思っています。


 カクヨムでいい活動がしたいと思う、そういう立場の人たちが集まっているのだと考えています。人気を得たい、評価を得たい、読まれたい……。ただし断っておくとその願望を満たす手段や手法はもうすでに開拓されきっています。カクヨムのアーカイブや累計ランキングに載っている作品を読んでみましょう。

 話を戻すと、豊かさを享受きょうじゅするためにリスク分散の手法が選ばれているようですね? つまりライトユーザーの人たちが当連載にもフォローをしてくださるわけです。

 さきほどリスク分散と言いましたが、もともとリスク分散は資産運用の手法です。安定した運用を得るためにリスクを分散して、分散した投資を行っておく、良い判断です。しかし損をしにくいといったメリットの他に、リスクを分散した結果、大きな利益が得られにくいというデメリットが存在することは知っていますでしょうか? ですがライトユーザーのみなさまには失敗をしにくいという点においてリスク分散は一定の効果があることは認めざるを得ません。ただしあることを除いては。


 ここでもう一度、カクヨムの活動において創作論・評論が意味するところでどんなニーズがあるのかを考えてみたいと思います。

 ひとつは共感でしょう。あのひとも頑張っている、私も頑張ろうというような共感ベースのニーズです。こうした創作論・評論は爆発的な人気も得やすくベストセラーになりやすい創作論の一形態です。

 もうひとつは情報発信です。単純にこれまで知らなかったことを知ったり、話したくなったりするニーズです。データベースの開示や豆知識といったものでしょう。

 最後に来るのが教育です。教育というものは、簡単に成果が出ないニーズです。しかし、カクヨムライフおいて最も見過ごされてはならない分野で何かを成そうとするならば現実にお金だって発生するニーズです。

 

 カクヨムで活動するならば作家活動であれば、共感だけでは自分を充足させることができても、前に進むことはできません。情報もそうです。教育だけが前に進めること、まずこの点が重要です。

 ですが、いきなりこの教育に時間を割くのは得策ではありません。教育は時間をかけていいのです。しかしライトユーザーの皆さんが5年後ないし1年後もここにいてくれるかは疑問符がつきます。私はカクヨムを始めて7年経ちますから、離脱率という指標を知っています。カクヨムというサイトでは作家は6万人いると言われていますが、一年単位で見ればすこしずつその数は減ったり増えたりしているはずです。読者の期待度の下落は創作論においてあるわけですね。それを補うためにライトユーザーがいるとでも指摘しておきましょうか。


 私は教育にある程度の時間を割きました。そのあいだは創作論を味見程度に読んでいましたが、トレンドに挙がる創作論はどれもカクヨムのシステムに関係する創作論や人付き合いといった共感のニーズに応えるものでした。新しい知見はいま編集者の意見が公表されたことでしょう。さらに★100以上の作品は半永久的にランキングに乗り続けることもあってか、固定化しつつあります。これは読者や評価する読者が一般教養として、そうした連載を選んでいるということであって、を招きます。みんな知っているので読まれないということです。


 カクヨムで活動し創作論を読む、賢い読者の皆様は「リスク分散×教育」にプランニングするのがいいと思います。しかし大切なのは長期的な展望を持った運用とこつこつと積み立てすることなのです。つまり3ヶ月以上の更新がある創作論を選ぶべきだと思います。なぜかと言えば、そうした連載のほうが軌道に乗っている=一定数の読者を確保している=作者のモチベーションが維持されている、と読めるからです。 長期運用・積み立て・分散投資が揃ってリスク分散の効果が上がるとお考えください。この連載を超えて読者の皆様がなにかを勝ち取れるように祈っております。

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