第59回 エンタメ作品のニーズ

 では我々、作者側に出来ることとは何でしょう。多くの作者兼読者が参加するコンテストと言えばカクヨムコンですが、そこでは人気を得られれば読者選考に勝ち残れるというストーリーが存在しています。しかし、私は実際にカクヨムコンをどのように経験すれば自分へのリターンが返ってきそうかを考えます。つまりカクヨムコンを自分のとするという着眼点です。長編あるいは短編をいくつもコンテスト中に読むのは辛い作業かもしれませんが、評価軸を自分の中に持って評価できると、のちのち公募に強くなります。

 公募というものは、基本的に何が選ばれるかわからないブラックボックスになっていることが多いですが、読者選考という場ではすべてが開かれており、この利点を活用しない理由がないのです。


 過去にカクヨムコンやそのほかの公開式Web小説コンテストで文庫本100冊以上の短編を読み漁ってきた経験から申し上げますと、どのコンテストでも色は存在していて、その色に合った作品が評価対象になり、下読みをクリアすることが分かっています。下読みのないと言われているカクヨムコンは読者にそうした足切りを任せるわけですが、カクヨムコンは中間選考で、その色を濃く反映します。私から見ればカクヨムコンのSF分野はジャンルニーズよりエンタメとしての完成度と男女とともに楽しめる作品が選ばれているように思いますし、コンテストの作品から選ばれたカドカワ読書タイム編集部からの拾い上げ作品でもSF分野のジャンルニーズは満たしていないと考えています。ここで言う、SF分野のジャンルニーズとは、飯田一史のSFマガジン内での連載「エンタメSF・ファンタジィの構造」(2014年4月~)に載っている「壮大」「謎めいている」「知的」の三要素です。


 ですから、カクヨムコンをクリアして書籍化に漕ぎ着けたい人はエンタメ分野の研究をしっかり押さえることが大切です。さきほどの文献に興味深い記述が存在するのも忘れてはいけません。

「日本人のエンタメに対する最大公約数的なニーズは「喜怖哀楽×共」である」

 つまり、喜ばせること・怖がらせること・哀しませること・楽しませること・そしてシェアしたくなる、話したくなることです。もっと深めたい人は「喜怖哀楽×共」を検索してみましょう。

 プロットづくりや筋書きで押さえておきたいポイントですね。どんなエンタメ作品でもこれらの要素が絡まり合って相乗効果を生むように設計されています。物語を作ることとエンタメを満たすことが重なるカクヨムコンでは必須の教養ではないでしょうか。

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