第57回 創作者向けエッセイ(2) 

 物心ついたときには絵を描き、空き箱を切って貼って立体物を作っていたのが私の創作の始まりです。いわゆる工作好きですね。

 小学生になってもポケモンカードのオリジナルカードを作って友達と遊んでいました。中学生になっても創作欲はますます大きくなり、美術の時間は楽しく過ごしたし、放課後はCGソフトを使って遊んでいました。しかし、あまり上手くはなれませんでした。

 

 CGの勉強がしたいと思って、入ったのが東京都立工芸高校。卒業生には有名なクリエイターが多いですし、さまざまな一流のクリエイターを育ててきた学校です。刺激的な毎日でした。

 そこで画像編集、動画編集、CG、広告デザイン、タイポグラフィ、プレゼンテーション、ほかにも、ほかにも、詰め込めるだけ詰め込みました。マニアックな話、一部のCGソフトで使われるベジェ曲線はアドビ社のイラストレーターというソフトで使われる曲線と共通しており、二次元の画法が三次元の彫刻法へと接続されるのが、実に面白い点だと考えています。

 CGへの熱い思いはその頃には思い出になっていましたし、大学受験も迫ってきていました。


 大学ではデザインを学びました。病気で中退するまで勉強はしました。

 そのころからピクシブで同人活動をして小説を書くことに喜びを得ました。公募に挑戦し、失敗します。それからSFファンジンに投稿を始めました。書き始めて3年ほどでカクヨムweb小説短編賞に応募をし始めます。

 最終候補に3回ほどなりました。

 

 Twitterを介した10文字ホラー大賞に応募し、編集者の目に留まり、作品を「10文字ホラー1」に掲載させていただきました。

 自分の作品の載った本が出るのは深い感慨かんがいがありますね。

 作家として高校生のときによくしていたのはノートを取ることです。自分の位置を知るというか立ち位置や感情を整理するのに役立ちます。

 ノートを取ることで自分の思想を持つことや作品のアイデアをストックすることを覚えました。読書もたくさんしました。小説だけでなく本をたくさん読みました。

 物作りにはコンセプトを立てることが重要だと感じたのもこの頃です。


 コンセプトというのは、概念を意味する言葉で、ふつう企画・広告などで全体を貫く基本的な観点・考え方をいいます。

 作る前に集めた資料、ノート、メモなどを全部使って考えます。でも最初は難しく考える必要はありません。小説の場合でしたら「こういう物語が書きたい」で十分です。

 メモやアイデアは書き留めて保存するようにしましょう。ワンシーンだけでも取っておけば、思わぬつながりを見せる可能性があります。


 さて執筆です。

 短編であれば1万字程度のものは3日ほどで書き上げます。時間が残れば推敲すいこうや直しに注力します。

 こうして出来上がった作品をカクヨムで発表しています。公募にも継続して挑戦しています。カクヨムではとにかくたくさんの小説を読んでいます。自主企画の運営も楽しくやっています。いろいろなクリエイターと出会えるのがカクヨムの魅力ですね。

 物作りというのは自分で気づき、学ぶ態度のことを言います。

 これができていないと失敗を繰り返すばかりか、成長できないと言っていいです。

 そのために様々な創作論がカクヨムでは発表されているわけですが、そのほとんどは同じようなことを言っています。誰もが歩む道ですからそこに落ちているものはほとんど同じです。


 考えてみると、ふたつの方法論が浮き彫りになってきます。ひとつはカクヨムのシステムを攻略したいという欲望で、もうひとつは面白い作品を書きたいという欲望です。システム論に目を向けたとき、このロジック、最近では飽和ほうわ状態になってしまっていると言っていいです。お腹いっぱいですね。

 システム論は頭のいい人が辿り着きやすい罠です。

 なぜかと言いますとシステム論にはそもそもロジカルに考えていけば、結局読まれる小説とは「作品」というシンプルな答えをけられないからです。システムで選ばれている以上、そこにはトレンドがあり、変動する。変動があるからにはその都度で対策を練りなおさなければならないのです。非効率でしょう。


 最初から基礎体力を持っている人間には勝てないわけです。

 これがです。とも言ってもいいでしょう。

 何が言いたいかといいますと汗をかいてきた人間には、楽している状態では太刀打ちできないということです。そして、システム論(ランキングや評価数の数値、注目の作品に載る……など)も、バズりも、運でさえ、すべて面白い作品を書くことによって初めて活きると考えます。

 繰り返しますが、物作りとは学ぶ態度です。学んで強くなりましょう。

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