第53回 初心者向けWEB小説の書き方

 書籍化する作品と書籍化しない作品を比べたとき、その文章の品質は各レーベルによりまちまちです。しかし、書籍化作品を実際に見てみながらその文章の品質を分析するのは無駄ではないと思います。


 まず押さえていただきたいのは、小説というものは「説明」「描写」「場面」の三要素から成り立っているという点ですね。小説をどこまで腑分ふわけしても、この三要素に還元されるということは、小説の勉強としてひとつ覚えておいて損はないでしょう。

 小説の三要素それぞれを説明します。「説明」は物語を大づかみに述べる文章です。要約とも言いますね。大づかみなので少ない文章で長い時間を表現するのが得意です。数年、いや数千年でも数万年でも時間を進められます。物語をどんどん進めたいときに使ってください。説明は物語を伝える最も古いやり方です。神話は主にそうです。

 次に「描写」です。物語の特定の部分を詳しく伝える文章です。たくさん文章を重ねることになりますが、その間に物語はほとんど進みません。

 最後に「場面」です。物語が今まさに起こっているように伝える文章です。大抵は登場人物の会話を中心にして、それに人物のアクションを伝えるシンプルな言葉で構成されます。


「場面」という構成法は、「描写」のように文章力や表現力が必要でなくても身につきますし、「説明」のように物語をサクサク進める必要がないのが特徴でしょう。読者にその「場面」をありありと感じさせながら物語を進めましょう。

 初めて小説を書くのであれば、「場面」を意識して書くのが形になりやすいと考えます。さらに「場面」というものは、映像作品や小説を通して、創作者の内側によく蓄積ちくせきされている要素でもあるからです。


 さまざまな書籍化された作品はオリジナリティある「説明」や「描写」、「場面」で書き進めていて、固有の文章を生み出しています。小説を書き慣れた人間なら誰しも熟知していることですが、文章の伝え方にはそれぞれ価値があることです。しかし、現代の小説を肩の力を抜いて書くならばキャラクターたちと会話を重ねながら書く、「場面」の力を使ってもらうのが適当ではないかと私は考えます。書く作業は孤独なところも大いにあると思いますから。


 肩の力を抜いてさっと「場面」を書いてみましょう。直すのは後で良いはずですし、会話の上手さというものは何度か書かないと身につきません。

 Take it easyです。やってみましょう。


参考文献:「読書猿Classic: between / beyond readersより 物語は作れたがどんな文章で小説にしていいか分からない人のための覚書」 

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