第45回 なぜいまSFなのか? (2)

 さかのぼること90年代ごろ、SF業界はSF冬の時代と呼ばれていました。のちの関係者たちによれば早川書房冬の時代だったなどと言われています。創元文庫は売れていなかったのかは定かではありません。「星を継ぐもの」がふつうに売れていた時代だったかもと思うと面白いですね。その時代、SFという言葉で売り出すと本が売れない状況がつづき、ホラーと銘打って出版された本もあります。


 たとえば「リング」がそうですね。あとは「パラサイト・イヴ」です。この時代においてSFがいままで通り売れる保証がどこにもなく、ファンのあいだでもさまざまな衝突があったとも言われています。「瀬名英明」で検索するといろいろと情報が出てくると思います。身近なSF読者に聞いてみるといいかもしれませんね。


 私たち、アマチュアも作家さんに「SFを書いてよ」ということはあります。けれどなかなかうまくは行きません。なぜでしょうか。

 2020年代はSF夏の時代と言われています。SFが売れ出し、若い読者にも恵まれて、いい新陳代謝しんちんたいしゃと創生が起こっています。いまSFを書くにはとてもいい時代に思えます。けれど、カクヨムでじっさいにSFが書かれない原因はどこにあるのでしょうか?

 単純明快です。全体のレベルがいちじるしく高くなったからです。SF業界のプロレベルで直木賞候補作、あるいは直木賞になるほどの作家を輩出はいしゅつしたこと、そして芥川賞、山本周五郎賞、吉川英治文学新人賞などに受賞する作家がでてきたことが挙げられます。この傾向はインディーズでもおなじです。


 インディーズでもさまざまな文学賞の候補作に選ばれた作家が活躍しています。ゆきのまち幻想文学賞に入選した枯木かれきまくらさんはSFインディーズウェブマガジン、バコプラの主催する第二回かぐやSFコンテストの読者賞を受賞していますし、佐伯さえき真洋まひろさんは星新一賞の最終候補になった方です。ほかにもカクヨムで活動されている白川小六さんは星新一賞でグランプリを取られています。白川小六さんはKADOKAWAから書籍も出ていますよね?

 さらにハヤカワSFコンテスト優秀賞を受賞した十三不塔じゅうさんふとうさんも第二回かぐやSFコンテストで最終候補に選ばれています。ほかにもレビュワーや編集者が選んだ様々な経歴のある作家がつぎつぎとインディーズで活躍されています。彼らのアンソロジー「新月/朧木果樹園の軌跡」はクラウドファンディングが成功して書籍化されました。

 さきにも述べたとおり、SFは関係者の相互評価で形成されているジャンルであり、カクヨムでSFを書いているだけではなかなか評価が成されません。まずはどこかでSF関係者の評価をもぎ取る必要がありますね。

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