第39回 起承転結

 去年の暮れの記事です。

 きのうは新宿の花園はなぞの神社に行ってきました。お目当てはとりの市です。7、8年ほど前だったでしょうか。夜、偶然通りがかった花園神社で活気あるお祭りに遭遇そうぐうしました。屋台が並ぶお馴染なじみの風景に見慣れないものがたくさん売っていました。あとで調べたらそれは「熊手くまで」というらしいです。

 酉の市は毎年11月に開催されます。酉の市の話が舞い込むといよいよ年末の手前、あるいは年末という気がしてきますね。

 熊手は農具ですね。日本では、一説では幸運や金運を「かき集める」という意味を込めて商売繁盛しょうばいはんじょう縁起物えんぎものとして売られているそうです。また去年のものよりひとまわり大きいものを買うと良いとされます。手のひらに収まるサイズから大きいもので一メートルを超えるものまであります。

 人々が幸せになりたいと願いを込めて希望を託す、そういう場所は居心地が良いです。

 花園神社を一周したあと、新宿三丁目の三番街にあるカフェ アルルへ向かいました。ここは言わずと知れたレトロ喫茶です。なかへと入るとオレンジの優しい光に照らされた店内で居心地がいいです。ちなみに喫煙きつえん可能です。友達に喫煙者が多いので助かります。


 看板猫の次郎長じろちょう石松いしまつがいます。白い毛並みにまだらの入った、ふだんは大人しいのに気に入ったお客さんの前ではデレデレになってしまう次郎長。気分屋でいつもお客さんのあいだをあちこちふらふらしている石松。キャラクターの違う二匹の猫にいつもお客さんたちはメロメロになっています。私はモブなのでひっそりとその様子をいつも見ています。


 ホットを注文しました。

 三年くらいまえだったと思いますが、はたらく細胞BLACKというアニメがありました。もととなった漫画、はたらく細胞は赤血球せっけっきゅう白血球はっけっきゅうを擬人化した面白い漫画でした。ちなみにアニメ化されていますしYouTubeでもスピンオフ漫画の動画がありますね。はたらく細胞BLACKも漫画化してアニメ化しました。はたらく細胞BLACKは、はたらく細胞が勇気と友情と協力のストーリーだったことにたいして恐怖や絶望、そうした負の感情に作用する大人の漫画に仕上がっています。ときにお色気もあるのでみなさんにはおすすめしたいですね。

 そのカフェイン回が私は特に好きです。

 カフェインはコーヒーやお茶、さいきんではエナジードリンクに入っている成分で馴染み深いと思います。試験前などにお世話になった学生の方もいらっしゃるはずです。私もコーヒーは常飲しています。朝、目覚めてすぐ、あるいは休憩時間や深夜によく飲みます。カフェインには頭が冴え、眠気が覚める覚醒作用かくせいさようがあることはよく知られています。また興奮作用もありますね。

 カフェイン回ではそのカフェインを常用すると、どのように体に影響が出るのかというお話をしています。この回はぜひ見ていただきたいのですが、あらすじを言うと、問題のある体の、赤血球が元気に酸素を運んでいるときに同僚の赤血球が先輩の赤血球に連れられてとある場所に行きます。そこではシャワーの如くカフェインが降り注いでいます。体の持ち主がエナジードリンクを飲んでいるのです。結果的に赤血球たちは元気になり、よく働くようになります。つまり疲れを感じなくなります。しかし、カフェインを取りすぎた体は鼻血を出してしまいます。カフェインを浴びすぎた赤血球は力が出せなくなり逃げられずに外部へと流れて死にそうになります。

 教訓としてカフェインというのは体が疲れているときはむしろ取らないほうがいいということです。ついつい気付けの一杯として飲んでしまいますが、これはよくないです。疲れている作家さんはコーヒーやお茶などを飲むまえにしっかりと体を休めましょう。体を休めたり温めたりして自分をいたわる、そうすることで心に余裕が生まれ、いいサイクルに乗れます。夜、すこしでも寒いときは白湯などをおすすめしたいです。


 ラノベ作家のさかき一郎さんが興味深いツイートをしていました。物語の起承転結きしょうてんけつをサッカーになぞらえて説明しています。興味のある人は榊一郎さんのツイートを読んでいただきたいのですが、かんたんに説明しますと、起承転結の起は見ているひとにサッカーの基本ルールを教えるところから始まるというものです。どういうことかと言いますと、この物語がどういうもので主人公は誰か? などを教えるパートだということです。

 さらに承のパート。ここでは基本ルールの上に追加される細かなルールや戦術などを教えます。世界の細かな設定、サブキャラクター、ストーリーの可能性の提示などです。

 つぎに転。裏技の登場などでお客さんを喜ばせます。つまり「こういう手があったか!」と思わせることですね。驚きがキーワードになるパートです。奇策きさくを含めた予想外の戦術が読者に爽快そうかい逆転劇ぎゃくてんげきとして受け止められます。

 最後は結。これはゲームの勝敗ですね。結論は書きましょう。


 ここで私が膝を打ったのは、各パートの文量の問題です。映画では全体の構成は三幕構成さんまくこうせいになっているため、時間という量的な数字で測れます。さいしょの30分はいわゆるターニングポイントまでの第一幕、それから1時間は第二幕、さいごの30分は第三幕。これはハリウッドの脚本術で、ある程度、形式化されているセオリーです。

 しかし――――

 起承転結ではそれぞれのパートの量は等分で四分割ではありません。つまり起は、みじかく、承はたっぷりと丁寧ていねいに語り、転へと繋ぎます。つまり承と転がもっとも雄弁ゆうべんに物語を語るのです。そうしてお客さんを楽しませたところで結でフィナーレを迎えます。

 なので承のパートは丁寧にしっかりと描かなければいけませんよね。

 こうした気づきを得られるので様々な情報は集める努力は欠かせません。熊手ではありませんが使えるものはなんでもかき集める姿勢は大事です。そのなかにみなさまの幸運が紛れていますように。そう思いつつ今回は終わります。

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