第38回 キャッチコピーの色

 カクヨムでは小説設定の編集欄でタイトルの色を自由に設定できます。カラーパレットは54色。かなりの色数がありますよね。

 小説のタイトルの色はもちろん小説のイメージに合うものが適切だと言えます。今回は初歩的な色彩論しきさいろんを書いてみようと思います。


 これは覚える必要はありませんが、色にはモニター画面と印刷物とでは色の混色法こんしょくほうが違います。赤・緑・青を色の三原色さんげんしょくとする加法混色かほうこんしょくとシアン・マゼンタ・イエローからなる減法混色げんぽうこんしょくです。

 

 カクヨムの画面では基本的に加法混色かほうこんしょくです。なので書籍化した場合などで印刷物になったら作品のカラーイメージに若干のズレが生じます。

 書籍化したいひとは編集者とよく相談しないといけませんね。ここまでは蘊蓄うんちくです。

 色の考え方は色相しきそう明度めいど彩度さいどで決まります。 

 色相しきそうとは色を特徴づける色みですね。だいたい小説のイメージは色相から考えるのがいちばんいいと思います。愛憎渦巻あいぞううずまく世界なら赤、青春ものなら青、いやしの物語なら緑、子ども向けの童話なら黄色など、基本的な考え方は誰でも身につけられます。

 色の選択を考えることで効果的に読者を作品世界に誘導ゆうどうすることも可能です。

 寒色かんしょく系(青・青緑・青紫)を選べば寒さや冷たさをイメージさせ、暖色だんしょく系(赤・橙・黄色)を選べば暖かさをイメージさせます。そのどちらでもない色を中性色ちゅうせいしょくといいます。


 明度めいどとは明るさの度合いを言います。カクヨムでは同じ色相のものでも複数の明るさの違う色が用意されています。

 明るさは一番有名な話で、軽重けいじゅう感覚がありますね。

 明るい色は軽く感じる、また暗い色は重く感じるというものです。

 この考え方はシリアスな展開であれば暗い色を選び、コメディなどであれば明るい色を選ぶといいと思います。


 彩度さいどとは鮮やかさの度合いです。

 これらの応用のかたちもあります。

 ひとつは暖色系で彩度が高い色。これは興奮色こうふんしょくと言います。セクシーなストーリーに使えそうですね。いっぽうで寒色系で彩度が低い色は沈静色ちんせいしょくといい、落ち着かせる効果があります。

 暖色系で明度が高く、彩度が低い色はやわらかく見えます。

 また寒色系で明度が低く、彩度が高い色は硬く見えます。 

 ハートフルなストーリーや重厚なストーリーに使えそうですね。


 こういう考え方もあります。進出色しんしゅつしょく後退色こうたいしょくです。暖色系や明るい色が進出して見え、寒色系の色や暗い色が後退して見えます。

 また同じ大きさなのに大きく見える色と小さく見える色があります。白と黒を比べたとき黒のほうが小さく見えます。この関係を膨張色ぼうちょうしょく収縮色しゅうしゅくしょくといいます。なので膨張色は進出色の属性を持ちますし、収縮色は後退色の属性を持ちます。


 二つの色を並べると考えます。そこで赤や黄色、そして青や深緑を並べます。すると赤や黄色は迫ってくるように見えますし、青や深緑は退いているように見えます。 

 よく黒しか小説のタイトルに選ばない人がいますが、全体としてちいさく遠ざかって見えていると考えていいと思います。


 自らの小説イメージと心理的効果を組み合わせて読者にアプローチを仕掛けてみてはいかがでしょうか。この連載はやさしいイメージで進めたいので緑の明るい色にしています。また書籍化以外の話も書くので軽い印象を目指しています。

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