第31回 カクヨムコン8で出来映えの良かったSF短編作品①

 先日、私は別サイトのSF系公募の一次審査を通過しました。

 それを記念して今回はSFを読むならコレ! という作品を紹介したいと思います。記事は昨年のものです。

 

 カクヨムコン8ではSF短編、660作品超に目を通しました。今回は特に出来栄えの良かった作品のレビューをします。基本的に評価軸はストーリーに驚かされたか、文章の上手さ、科学的記述つまりジャンルSFへの理解の三点で評価しています。さいごにはベストチャレンジ賞を発表します。


(1)本音がルビに出る世界/令和の凡夫

  https://kakuyomu.jp/works/16816927862298460338

 

 表題の通りの内容。様々な場面で本音が言葉通りではなくルビという本心として見えるというアイデアの光る作品でした。ルビというのは文章表現上のお作法のひとつでしかないはずが、それを場面としてうまく読者に読ませるのが良かったと思います。結婚披露宴けっこんひろうえんのエピソードが傑出けっしゅつして面白かったですね。

 日本語は表音ひょうおん文字の仮名と表意ひょうい文字の漢字のふたつの混合です。この概念感覚にルビという第三の概念感覚を上乗せしたというところが言語SFとして評価が高いです。


(2)心音カデンツァ/冬原水稀

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860825703435

  

 ロボットあるいはアンドロイドの物語。ストーリー自体に大きな驚きはないですが、じんわりと心に残る印象的なストーリーでした。静けさと動きの対比が良かったです。ロボットに搭載されたある機能、その機能を失わせる理由と人間にはやはり存在というものが必要というテーマ性にぐっと来ました。


(3)ベイビー・プレゼンテーション/rei

 https://kakuyomu.jp/works/16817330650429416405


 近未来、子どもを産むことと育てることの意味が変わってしまった世界のお話。デザインされた子どもと親が対話する内容で、子どもに思い通りの性格を与え、親の思い通りのレールのうえに乗せるということは結局、親のエゴなんじゃないかな? などと感想を持ちました。親子というものを考えさせられます。この生まれた子どもはさいご、AIが指し示した通りに成長していくのかと思うと、この親の一抹の不安は、読者に問いを投げかけてくれます。果たしてこれでよかったのだろうかと。


(4)管理外の一日/和泉茉樹いずみまき

 https://kakuyomu.jp/works/16817330650045480128


 ドーム型都市を舞台に、男女の微妙な距離感を表現した秀作。すべての気象現象が管理されているのにも関わらず、この日、予想外の雨が降る。この展開だけでも面白く、この雨が何なのかということが読者をぐいぐい導く内容になっています。しかしながらそれはお話を駆動させる導線でしかないというのも上手さが光る作品です。雨上がりの日に読みたい一作ですね。


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