第13回 書籍収録のボーダーライン

 カクヨムにおいて書籍収録しょせきしゅうろく境界線きょうかいせんはどこにあるのでしょうか。たとえば★の数でしょうか? ★の数は評価数ひょうかすうですからこれが評判になってカクヨムでは読まれている指標しひょうになるのは指摘してきした通りです。しかし書籍収録で見落としがちなのは、結局のところ、編集者が読むという点です。編集者は文章のプロのまえで仕事をしている人なのですから編集者もまた文章ではプロであると思います。


 ここで逆説的ぎゃくせつてきな話をすれば★の数はそんなに重要ではない、ということでしょうか。具体的な例を挙げましょう。「5分で読書 ゼッタイに振り返ってはいけない」に収録されている、笹野にゃん吉さん(https://kakuyomu.jp/users/nyankawa)の「みずたまり」(https://kakuyomu.jp/works/1177354054922192616)という作品です。これはいま(2023/05/01現在)確認しても★0の作品です。つまり書籍収録に関してはそれほど★の数は重要視されていない可能性があると言えます。


 この「みずたまり」という作品は子どものときに持った嫌な感情とでもいうべきものが見事に表現されつつ、グロテスクな描写のホラーとしても良い作品です。カクヨムではたしかに膨大な作品が掲載されていてそのひとつひとつを吟味することはたしかに難しいです。しかし良質な作品を探し当てる編集者がいることはたしかです。現に「みずたまり」のような作品があるわけですから。


 おそらく編集者はカクヨムの検索機能を十分に駆使して、字数の情報からアンソロジーに適した作品を選んでいると思います。

 さきほど挙げた「5分で読書シリーズ」。カドカワ読書タイムの児童書の位置づけです。児童書は現在、出版物のなかでも唯一伸びている部門で2021年の売り上げは推計で1013億円となっています。つまりそれだけ需要があります。「5分で読書」の編集者もここで仕事を大きくかじを切るだけの勝算があるわけです。つまりカクヨムを使って、そこでいい仕事が出来れば飛躍ひやくのチャンスがありますよね? 


 編集者としてはたしかにカクヨムの★の数を見ているとは思います。そのことと良質な作品を探し当てることは矛盾しません。けれど、いま短編を地道に書いているひとにも、カクヨムのコンテストに参加して「5分で読書シリーズ」に収録を狙っているひとにもチャンスがあります。自分の作品は意外なところで評価を受けていることもあります。それはで意外とすぐ近くにあるかもしれません。

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