第27話

 ネメシスの指輪の影魔法は影に関することは大体出来る。

 私が使っているシャドウバインドのような戦闘系から、影収納などの補助系まで幅広く対応出来る便利な魔法だ。

 影移動なども出来るが、空間系の魔法では無いので瞬間移動は出来ない制限もある。

 出来ること、出来ないことが分かり易い魔法とも言える。

 私は使わないが、シャドウニードルなどの物理系の魔法も使える筈だ。

 バインドは物理系の魔法なので、それを攻撃に応用するだけなのだから。

 ただ、影なので空中の敵には当て辛い魔法ではあるが、それが指輪を装備するだけで使用出来るのだから破格の性能なのは言うまでも無い。


 ユイが使っているマナ銃もただ、マナを銃弾にして撃つだけの装備では無い。

 私のマナバレットをモチーフにしているなら、追尾など造作もない筈なのだが、魔銃にはそんな機能が無いので出来ないと思い込んでいるだけなのだ。

 何なら盾とかも出せるのではと私は思っている。

 大きさなどは制限が有りそうだが、撃った弾が盾状になっても面白いと思う。

 特訓の間にユイに試してもらおう。


 私は今、卵を温めている。

 ユイが戦闘をしているので私が預かっているのだ。

 私のマナと、魔力を均等に注いでいる。

 アオイに斥候役を任せて、エマとユイに討伐して貰っている。

 2人には私から離れすぎないように注意はしてある。

 アオイも斥候役に慣れていないので、1匹ずつ釣って来るとは限らないからな。

 下手をすると4、5匹のワイバーンが来たりするがそこはアオイにも頑張って貰って討伐している感じだ。

 死にたくなかったら強くなれば良いのだし、アオイが適切な魔物を釣ってくれば良いだけの話なのだ。


 今も、アオイが5匹のワイバーンを連れて戻って来てしまった。

 アオイが半ベソになりながら謝っている。

 エマが2匹を連れてドッグファイトをしているが、3匹がアオイとユイに向かって来てしまった。


 出来ればエマに3匹引っ張って行って貰いたかったが、エマも一杯一杯のようだ。

 私が手助けをしても良いのだが、皆んなの成長の為にどうしようかと悩んでいたらお腹の辺りがモゾモゾいいだした。


 何ぞ?と思ったら突然お腹の下から飛び出して来た物体が。


 「ルュュュュュュュュュュゥ」


 と鳴き叫ぶと、ユイのところまで飛んで行き口からブレスを吐き出した。

 アレは多分マナを利用したブレスだな…。

 卵から産まれたばかりの雛鳥が吐くブレスの勢いでは無いが……。


 「ルュゥルュルュゥ(父上酷いです)

 ルュゥルュゥルュゥルゥ(母上が困っているのに)

 ルュゥルュゥルュゥルュゥ(手助けしないなんて)」


 産まれてきて直ぐに、反抗期とは如何に?

 産まれて来たグリフォンは鷲の顔が金色の羽で覆われていて前脚は猛禽類の鉤爪を持っていて後脚と尻尾がライオンのようになっている。

 ライオンの部分が真っ白な毛並みをしているが、羽の部分だけは漆黒の色をしていた。

 大きさは私が産まれたときと同じぐらいの仔猫サイズだ。

 前脚が猛禽類なのが標準装備なのか?

 私と多少違うのは何故なのだろう?

 少し困惑しているとユイが駆けつけて来た。


 「綺麗な色の子が産まれて来ましたね。

 さっきはありがとうね。

 助けてくれて。」


 「ルュゥルゥルュゥルュゥルゥ(母上を助けるのは当たり前なのです)」


 「鳴き声もピーちゃんとは違うんですね。

 そうですね、貴方の名前は[ルウ]です。

 これから宜しくねルウ。」


 「ルュゥルュゥルゥ(ありがとうございます)

 ルゥルュゥルゥルュゥルゥルュュゥ(ルイは母上を護りますからね)」


 その瞬間ルウとユイが一瞬光輝いた。

 光は直ぐに収まったが、2人?が繋がったように見えるのは気のせいではないだろう。


 「何か感動的な流れになっているようですが、私のことをお忘れではないでしょうか?

 出来れば助けて下さいよー。」


 「ルュゥルゥルュゥルュゥルュゥ(父上の主なので父上が助ければ良いのです)」


 「ルウちゃんそんなこと言わないで欲しいな…。

 エマちゃんも私の大切な人だから。

 ピーちゃん助けてあげて。」


 私が、了承する前に。


 「ルゥルュュュゥルュゥ(私が助けに行きます)」


 仔猫が空を駆け上がり、エマを追っているワイバーンに迫る。

 ルウは魔糸を出してワイバーンの首に引っ掛ける。

 その勢いでワイバーンに辿り着くと糸で首を落としてしまった。

 エマを追っているワイバーンがそれに気付き、ルウに迫るがルウの火魔法がワイバーンの頭に命中してワイバーンがそのまま落ちて行く。

 それを追ってルウが自分の影にワイバーンを収納した。


 何アイツ?

 ドンダケスキル持ってるの?

 羽の色は違うがアイツは通常種じゃ無いのか?

 影魔法使える時点で通常種では無いかも知れないけど…。

 

 「ルゥルュゥルュゥ(ルウが助けて来ました)

 ルゥルュゥルュュゥルュゥ(ルウのことを褒めて下さい)」


 「ありがとう、ルウ。

 エマちゃんを助けてくれて、どっかのパパより頼りになるわ。」


 「ルュゥルュゥ(勿論なのです)

 ルュゥルュゥルュゥルゥルュュゥ(役立たずな父上とは違うのです)」


 「ピュィピュィピュュィ(マザコンのことは無視して)

 ピュィピュィピュィピュィ?(取り敢えず帰ろうか?)」


 「そうだな、衝撃的すぎて理解が追いつかねぇや。

 帰って整理しようぜ。」


 「ピーちゃんが私のことを守ってくれないのに、ルウちゃんはユイのことを護るって言ったよ?

 この違いは何なのピーちゃん?

 私は待遇の改善を求めるよ。」


 「ピュィピュィピュィピィ(分かったから帰るぞ)

 ピュィピュィピュィピィ(帰ってから話そう)」


 私はユイとアオイを乗せて飛び立つ。

 エマは拗ねているのか私には乗りたがらなかった。

 ルウはユイの影に潜っている。

 どうやらそこが落ち着くようだ。


 7階層より戻り、飛んで一気に1階層まで戻って来た。

 受付で売却を頼み、解体場に行く。

 アオイがワイバーンの皮膜を欲しがったので、それを幾つか貰い後は売却した。

 そのときに改めてルウの登録もした貰う。

 勿論テイマーはユイで登録だ。


 ルウも嬉しそうに鳴いている。

 鑑定をするか聞かれたが何故かユイが拒否していた。

 魔物はテイムしていないとダンジョンから出れないので、拒否しても問題はないようだ。

 なので私達は上野から羽田に戻って来た。

 まだ、大工さんは仕事をしていたが、お構いなく母屋の居間に集合した。


 「ユイちゃんは何でルウの鑑定をして貰わなかったの?」


 「それなんですが、私[鑑定]のスキルが生えたようです。

 後、影魔法も指輪無しで使えるようになりましたのでネメシスの指輪はアオイちゃんに渡そうと思います。」


 「ユイは何故影魔法を覚えたんだ?

 私も影魔法が使えると、斥候役に役立つから助かるけどな。

 どうして何だ?」


 「ルウちゃんが強化種?らしいのですが、それのお陰ですね。

 ルウちゃんは皆んなから魔力を貰って、通常種より強化状態にあるようなんです。

 火魔法はエマちゃんから、糸精製をアオイちゃんから、ピーちゃんからはブレスと影魔法を、私からは回復魔法を覚えたんだようです。」


 ルウの持ち物にものまねするようなミント何か持たせて無いけどな。

 何故かしら私達のスキルを継承したようだ。

 

 「私の称号に[強化種の母]と言うのが新たに加わりました。

 それに強化種から1つスキルが貰えるとあるので私は影魔法にしました。

 これなら、アオイちゃんの機動力も補えますからね。

 私自身も影魔法はそのまま使えますから、問題無いですよね。」


 確かにエマが影魔法を自力で使えたほうが、アオイは助かるだろう。

 アオイに機動力が加われば斥候役も問題なくこなせるだろう。


 「ユイちゃんの鑑定の力は信じるけど。

 何でそんなにルウのことが分かるの?

 私ピーちゃんのこと殆ど分からないよ?」


 「何とも言えませんが、力関係が関わって来ると思います。

 今はまだルウより私のほうがレベルが高いので、ルウのことを鑑定できますし、何よりルウの母として何となくルウのスキルや称号は把握できますよ?

 エマは違うのですか。」


 「全然違うよ、ピーちゃんは多分拒否しているのかな?

 ピーちゃんが何のスキルや称号を持ってるか分かんないもん。」

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