第23話
「ピュュュュュュュィ」
そのとき私は意味のない鳴き声を発した。
身体が熱を帯びお腹の一部が熱くなる。
「ピュュュュュュュュュュュュュィ」
私は卵を産んでしまった…。
「ピュィピュィ(魔力を流せ)」
ユイに卵に魔力を流させる。
こうすることで卵は魔力をくれるものを親と認識する筈だ。
これはグリフォンとしての本能がそう言っている。
ユイが卵に魔力を流した後に私は魔力と
「ありがとうございます、ピーちゃん。
この子は大切に育てますね。
私とピーちゃんとの初めての子ですからね。」
エマと一緒にいても私は卵を産まなかっただろう。
アオイもそうだ。
エマはあくまでもパートナー若くは主として私を見ている。
アオイは私のことを素材だと思っているだろうし。
ユイだから卵を産み出し育てる決心が付いたような気がするが…。
「ピュィピュィピュィ?(影に収納出来るか?)」
「やってみます。」
卵がユイの影に沈んで行く。
私のストレージだと時間が止まってしまう。
影魔法で収納も出来るが、ユイの影魔法のだとユイの魔力に包まれるからそのほうがいいだろう。
卵がユイの魔力に馴染む頃には卵も孵るだろう。
「ピュィピュィ(それじゃ行くか)」
「はい、行きましょう。
今日も牛さんで稼がないと。」
それから私達は5階層まで一気に飛んだ。
ユイは終始ご機嫌だ。
5階層に着いてアークバッファローを探す。
草原の土煙を探せば良いので直ぐに見つかる。
ユイに影魔法の使い方を教えながら、アークバッファローを捕らえて行く。
影の特性上空中からは吊るす事は出来ないが、何匹か纏めて影に取り込むことは出来る。
捕まえたら魔物の居ないところまで戻り影から拘束したまま出して仕留める。
これを繰り返すだけで、今日のノルマは達成する。
ユイも影魔法の特性を理解しだし、狩りにも慣れて来る。
最後にもう1回だけ狩りをして帰ろうかと考えていたら、群れの中に一回り大きな個体がいた。
多分フィールドボスのグランドバッファローだろう。
グランドバッファローは土魔法を使って来るので要注意な魔物だ。
空中にいても攻撃手段があるからだ。
「ピュィピュィ(どうするユイ)」
「最後に今日のお土産を持って帰りましょう。」
笑顔でそんなことを言われてしまったら
「ピュィピュィピュィピュィ(危なくなったら影に逃げろ)」
「大丈夫ですよ。
私達の赤ちゃんの為にも頑張りましょう。」
今から頑張っても卵には関係無いと思うが、何も言わないでおこう。
私はグランドバッファローに向かって降下する。
グランドバッファローは私達に向かって土の塊を飛ばして来て牽制しているようだが、私の風魔法で全て逸れて行く。
地上にいる者に対しては絶大な威力を発揮する土魔法だが、空中には威力は半減だ。
ユイが透かさず影魔法で拘束するが、シャドウバインドだけでは辛うじて動けるようだ。
ユイの魔力だけではグランドバッファローに打ち勝てないのだろう。
私のシャドウバインドでも拘束して行く。
完全に動きを止めたグランドバッファローの首筋を風魔法で切り裂いた。
「ブゥモゥゥゥゥゥゥゥゥッ」
グランドバッファローが断末魔を上げて倒れて行く、アークバッファローの群れがその叫びを聞き逃げ出して行く。
グランドバッファローの血抜きをして私が収納した。
「これはもしかして、初めての共同作業ですか?」
ユイがバカなことを言い出したが、
「ピュィピュィピュィピュィピュィピィ(卵も私1人で産んだ訳では無い)」
「そうですね、あれが初めての共同作業ですね。」
ユイが嬉しそうに返事を返して来たのでこれで良いのだろう。
私達はそのままダンジョンを出ることにした。
1階層まで飛んで移動する。
階段はユイの影魔法での移動で通過する。
ユイの影魔法の熟練度を上げる為だ。
今日も受付で、
「解体をお願いしたいのですが。
宜しいですか?」
「畏まりました。
解体場にご案内します。」
私は解体場でアークバッファロー10頭とグランドバッファローを出した。
受付の人が今日もビックリしているが、私は構わず。
「ピュィピュィ(アークは売却)
ピュュュィピュィピュィピュィ(グランドの肉は半分持って帰る)」
「そうだね、ピーちゃん。
アークは売却で、グランドバッファローの半分のお肉は持って帰ります。
その他は売却で。」
「畏まりました。
そのように手配いたします。
その他にも査定するものが有れば別室にて受け賜りますが。」
「ピュィピュィピュィ(鑑定士を呼んでくれ)」
「ピーちゃん鑑定士は必要なの?
何かあったかな?
取り敢えず鑑定士さんをお願いしますね。」
「畏まりました。
鑑定士を呼んで参りますので、別室にてお待ち下さい。」
「卵も鑑定して貰うの?
確か登録だけで良かったと思うけど。」
「ピュィピュィ(ちょっとな)」
グランドバッファローを倒した後に宝箱を回収していたのだ。
アオイが居なかったのでそのまま持って来てしまったのだ。
「お待たせ致しました。
鑑定士のタチバナです。
鑑定するの物をお出しして下さい。」
「ピュィ(これだ)」
「後これもお願いしますね。」
私は宝箱を、ユイは卵を提出した。
「これは宝箱ですか、そのままお持ちになる方は珍しいですね。
それと魔物の卵ですね。
それでは卵から鑑定致します。
これはグリフォンの卵ですね、既にタイム状態にあるようです。
テイマーはユイ様になっておられます。
此方は登録なさいますか?」
「はい、登録でお願いします。」
「畏まりました。
テイマー課の者を呼びますね。
次に宝箱の鑑定ですね。
この宝箱には罠は御座いません。
ですが鍵が掛かっておりますが、此処で開けて行かれますか?」
「そうですね、中身も気になりますから開けられるなら開けたいのですが。
開錠スキルを持っていないので協会で開けられるなら方はいらっしゃいますか?」
「それなら私が開けられますので開けさせて頂きますね。」
鑑定士がスキルを使ったのか直ぐにカチャリと音がして宝箱が開けられた。
中にあった物は見覚えのある指輪と回復薬だった。
「指輪は魔力回復の指輪ですね、回復薬は体力が回復する薬です。
此方は如何なさいますか?」
「指輪は持って帰ります。
回復薬は売却で結構です。」
「畏まりました。
ではこれで査定させて頂きます。
直ぐにテイマー課の者も見えるとおもいますので。」
「この指輪はどうしようか?
私が貰っても良いのかな?」
「ピュィピュィ(貰っとけ)」
「ありがとう、ピーちゃん。
この指輪も大事にするね。」
と、ユイは左手の薬指に指輪を嵌めた。
別にユイと結婚した訳では無いからな、変に突っ込むと藪蛇になりかねないのでスルーしておくけど。
勿論今日の査定額は億を超えた。
昨日よりもアークバッファローの査定額は下がっていたが、数は昨日の倍出しな。
それに半分とはいえ、グランドバッファローの素材があるので億は超えても可笑しく無い。
お肉を受け取って帰宅することに。
流石に色々あって今日は疲れた。
帰って風呂でゆっくりしたいが、お風呂は皆んなで入るのでゆっくり出来ない。
羽田に着くとアオイは既にお客とは別れていた。
A級冒険者にインナーとプロテクターの販売を終わらせていたようだ。
私の素材で出来た防具は6千万で売れたようだ。
そのうちの2千万がエマに振込まれることになる。
居間に行くとエマと税理士がまだ打合せをしているところだった。
アオイの防具は協会を通しているので税金を追加で取られることは無い、それにダンジョンで売却した物も既に税金が取られているので問題ない。
馬車やガレージのリホーム代に、これから作ることになるコンテナハウスなんかは免税の対象になるので書類の提出を求められたようだ。
要は冒険者が必要とする物は免税の対象になるので書類を提出したほうがお得だよと教えてくれていたのだ。
パーティーとして稼いだお金はパーティー内で処理しても問題無いようで、パーティーで使おうが個人で使おうが勝手にして良いみたい。
今日稼いだお金もパーティーの口座に振込まれることになっているので、そこも自由に扱っても税金は取られた後なので問題ない。
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