第22話

 明細を見せて貰ったのだが、値段は1億に届かないくらいのお値段になっていた。

 これでも解体費用は差し引かれている。

 アークバッファローは高級和牛より美味しいとされていて、値段は和牛よりお高くなっている。

 しかも最近需要は増えているようだが、取ってこれる冒険者も少ない為割高になっているようだ。

 魔鶏も普通の軍鶏より断然高いが、アークバッファローの値段を見ると霞んでしまう。

 上野ダンジョンが人気なのも頷ける話だ。


 エマとアオイはビックリしていたが、それに納得して後日振り込んでもらうことにした。

 リホーム代と馬車代が賄える額を稼いだと喜んでいるエマだが、後で税理士しに確認してもらうのを勧めておこう。

 その辺はアオイやユイがしっかりしているから大丈夫だと思いたい。


 お肉を受け取り、私達は羽田に帰ることにした。

 うちに帰るとユイが待っており、今日の成果を報告する。 

 流石にユイも驚いていたが、知り合いの税理士に相談すると早速電話を掛けていた。

 流石はユイである。


 大工工事も始まっていて、この世界の建築は魔法があるので前世より圧倒的に早く建てれるようだ。

 昨日なかった基礎が既に出来上がっていた。

 渡り廊下の部分と離れの基礎が既にある。

 何でも土魔法を使用して基礎を作っているようで、住宅を建てるにも重機要らずで、綺麗に出来ると評判が良いようだ。



 ユイから明日税理士が来るからエマが対応することになった。

 パーティーのリーダーとして纏めて計算するようだ。

 そのほうが税金は安くなるみたい。

 リホームは経理に含まれないが、アオイのガレージは経費に一部載せられるようだし馬車もパーティーで使用するので経費で一部賄えるとのこと。

 エマは元からお留守番の予定なので、問題無かったのだが。

 アオイに防具の注文が入ってしまった。

 普通の装備依頼なので、私の面接は必要ないのだがユイと2人でダンジョンに行くか迷うところだ。


 「ピュィピュィ?(どうする明日は?)」


 「出来ればですが、私はピーちゃんと一緒にダンジョンに行きたいと思います。

 影魔法もそうですが、試したいこともありますからダンジョンには行きたいです。」


 「ピュィピュィ(私は構わない)」


 「今日の感じだとピーちゃんが居れば問題無いとは思うけど、行くなら5階層までだよ?」

 

 「そうだな、5階層なら2人でも問題ないと思うぜ。

 ユイも新しい魔法も試したいだろうしな。」


 「はい、そうですね。

 色々試したいことがありますが、魔法もその一つですね。

 ピーちゃんに影魔法を教えて貰いたいです。」


 「それならユイちゃん達でダンジョンに行って来て、ただし無理はしちゃダメだよ。」


 「ピュィピュィ(そんな事はしない)」


 「お願いねピーちゃん。」


 「黒いの出来れば、黒いのの素材を置いて行ってくれないか?

 明日会うヤツは信用できるヤツなんだ。

 黒いのの面接はしてないが、私が信用できるヤツだからインナーとプロテクターは作ってやってもいいと思っているだが…。」


 「ピュィピュィピュィピュュィ(アオイが信用してるなら問題ない)

 ピュィピュィピュィ(値段もアオイに任せるが)

 ピュィピュィピュィピュィ(安くするなら内密にしろよ)」


 「大丈夫だA級冒険者だから金は持ってる。

 多少は値引きするかも知れないが、そこ迄はしないよ。

 助かるぜ黒いの。」


 そんな訳で明日はユイと2人でダンジョンに行くことになった。

 ユイが試したいことは分からないが、ユイも皆んなの役に立ちたいのだろう。

 ウチのメンバーは怪我を負わないのでヒーラーの役割が無い。

 普通のパーティーはヒーラー必須なのだが、中遠距離のウチのメンバーは怪我をしないからな。


 そんな話し合いの中、今日のご飯は魔鶏の唐揚げとアークバッファローのステーキになった。

 ユイに[調理師]のスキルが生えたようで、早速料理してくれるようだ。

 お肉を収納から出してユイが確認している。

 お肉の状態を見ているようだ。

 ユイが頷いた後、直ぐに調理に掛かって行く。

 スキルが生えたからなのか、一段と手際が良くなったような気がするが気のせいでは無いと思う。


 唐揚げを手際良く作り、ステーキを焼いてゆく。

 簡単に作っているように見えるが、下処理など色々手間を掛けているのが分かる。

 4人分をあっという間に作り上げてしまった。

 唐揚げは私の要望なので最初に頂く。

 

 唐揚げは、外はサクサクで中に肉汁が閉じ込められていて熱々なのに止まらない美味しさだ。

 前に作って貰ったオークの唐揚げとは比べ物にはならない出来栄えだ。

 続いてステーキだが、私のはサイコロ状に切って貰ったものを食べる。

 これまた極上なお肉で、歯のない私でも飲み込めるようなお肉だ。

 口に入れた瞬間に脂が溶け出し、肉の繊維が一本一本解けて行くようなお肉である。

 味付けはシンプルな塩と胡椒なのだが、脂がとても旨いので満足感が溢れて来る。


 エマとアオイも一心不乱に食べていた。

 私も今までは魔力の補給の為に食べていたが、これなら食事をする甲斐がある。

 ユイも自分で作った料理を食べて満足しているようだった。


 大満足で食事を終えてお風呂タイム。

 精神統一をしながらお風呂に入っているのだが、ユイが今日は積極的な気がしたのは気のせいか?


 翌日は私とユイが上野ダンジョンに向かう。

 朝の通勤時間帯は高速も混んでいるが、それを下に見ながら空を飛んで行く。

 スキルや魔物に乗って通勤している人もチラホラと見るが、それほど数が多い訳ではない。


 上野に着いてユイと2人でダンジョンに入って行く。

 1階層の入口は広いのでユイを乗せたままだ。

 1階層に入って直ぐに空を飛んで2階層を目指すが、ユイが私の首にしがみ付いていて飛びにくい。


 「ピュィピュィ?(どうしたユイ?)」


 「いえ、私のオッパイの感触はどうかなと思いまして。

 インナーは着ていますが、ノーブラノーパンですよ?」


 「ピュィ(なにっ)」


 「ピーちゃんが私達の裸を見て興奮しているのは知っているんですよ?

 エマちゃんとアオイちゃんは気にして無いようですが。

 ピーちゃんは興奮してどうなるのですか?

 私は凄く気になってます。

 ピーちゃんの[雌雄同体]のスキルは、1人でも卵を産めるのでは無いですか?」


 「ピュィピュィピュィ(そんな訳は無い)」


 「私知ってるんですよ、ピーちゃんが我慢してるのを。

 出来れば我慢しないで、私との子供を産んでくれませんか?

 私もグリフォンの子が欲しいです。」


 ユイが試したい事とはこの事だったのか?

 昨日から積極的だったのもこの為だったのかも知れない。

 確かに私は女性の身体を見て興奮してしまう。

 興奮すると卵を産みそうになるのはグリフォンの性なのか、人間としての本能なのか分からないが産んで良いのか?

 私はグリフォンの生態を知らない。

 知っている人がいるのかも分からないが、こうまで求められて断るのもどうかなと思うが。

 肉体的な繋がりはなくても精神的な繋がりて子供を作るってどうなんだろう?

 

 ある意味健全か?


 取り敢えず、近くの林に一度降りることにした。

 周りには人気は無いし、魔物の気配もない。

 ユイは影魔法を発動し私と一緒に影に潜る。


 「此処なら誰にも見られませんよ。」


 ユイが私に抱きついて来る。

 女性特有の柔らかい感触が伝わってきて私はホッとしてしまった。

 グリフォンに転生して此処まで落ち着いたのは初めてかも知れない。

 魔物に転生して、何処かで私は化け物なのだと思っていたのかも知れない。

 それを今ユイに引き止められたような気がした。

 貴方(私)は人間で良いのだよと言われたような気がしてしまった。

 そのとき理性が本能に敗北した瞬間だった。

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