第21話
翌日、今日家に残るのはユイになった。
エマとアオイを乗せて上野に向かっている。
羽田から上野は空を飛んで行くと30分も掛からずに着くことが出来た。
今日の狙いは、3階層に居る軍鶏のような魔物と5階層に居るアークバッファローが目的だ。
受付の前の道を通り過ぎ、一本道を真っ直ぐ進むと洞窟の入口が見えて来た。
その入口を潜るとそこは辺り一面草原になっていた。
「羽田の5階層も不思議に思ってたけど、こうして見ると不思議な感じだよね。
洞窟を潜ると別世界に来たみたいだよ。」
強ち間違えではないのだが、ダンジョンの中は別空間になっていると言われているので外の世界とは違う世界ではある。
「取り敢えず、鶏さんがどの辺にいるか探しなが行こうか?」
「ピュィピュィ(取り敢えず乗れ)
ピュィピュィ(案内してやる)」
「ピーちゃん何処にいるか知ってるの?
ユイちゃんには聞いて来たけど良く分からなかったんだよね。」
「私も聞いたが、分からなかった。
ただ、2階から3階層の何処かに居る筈だとは聞いたけどな。」
軍鶏が居るのは3階層の森林地帯に良く居るらしい。
らしいと言うのは、軍鶏は良く移動しているようなのだ。
軍鶏は好戦的で戦闘相手を探し回る習性があるようなので、1箇所に留まることはほぼないようだ。
2階層にも居るらしいのだが、数が少ないようで2階層で探すよりは3階層のほうが確率が高いと言うだけの話だ。
私はエマとアオイを背中に乗せて2階層の入口を目指す。
「ピュィピュィピュィ(敵が来たら頼む)」
「了解だよ、ピーちゃん」
ここのダンジョンは鳥類の魔物も多いので、空から行くのは推奨されていないが、エマと私の魔法にアオイの糸が有れば問題無いだろう。
このダンジョンにいる鳥類の魔物は食用になっているのだが、カラスなどは誰も食べたがらない。
鴨までは良いのだが、カラスは食べても余り美味しくはないようだ。
今日はマップを埋めるために時計回りで飛んでいる。
1階層なのでそれほど広くはないのだが、草木が生い茂り魔物が分かり辛くなっている。
Bランクからは罠があるのだが、上野ダンジョンには余りない。
草原などは落とし穴か湿地帯ぐらいしか罠はないのだが、草木のせいで足元が見え辛く気付いたら湿地帯で身動きが取れなくなることもあるそうだ。
空から見ているので、既に2階層の入口は見えているのだが、マップを完成させるために大回りして飛んでいる。
カラスの魔物が煩いが、エマとアオイで上手く捌いていた。
直ぐにマップは埋まったので2階層を目指す。
草原の中にポツンと洞窟の入口があり、直ぐに地下に降りる階段が続いている。
私は1度身体を小さくして階段を降りてゆく。
その後ろをエマとアオイが着いてきていた。
長い階段を降りるとそこは木がまばらに生える林程度の森だった。
木があるせいで見通しが悪くなっていて、魔物を発見するのが遅れそうなところだ。
直ぐ身体を元に戻して、エマとアオイを乗せる。
空から下を見ても魔物は見付けづらくなっているが、完全に見えない訳でもない。
2階層もマップを埋める為に時計回りで空を飛ぶ。
ふと下に視線を向けると黒っぽい何かが動いたような気がして鷹の目で確認する。
そこのは大型犬くらいの鶏がいた。
腿が太く鉤爪が鋭い軍鶏だ。
「ピュィピュィ(居たぞアオイ)」
アオイに指示を出して私は一気に降下する。
アオイは魔力の糸を出せるだけ出して軍鶏を拘束して行く。
拘束から逃れた軍鶏は私とエマが首を刎ねてゆく。
ここいら辺の軍鶏を拘束したので逆さ吊りにして首を刎ねる。
私も影魔法で首を刎ねた軍鶏を逆さに吊るす。
血抜きは大切だからな、暫く血抜きをした後に私のストレージへ収納して行く。
2階層で1つの目的の肉をゲット出来たのは幸いだった。
20羽ぐらい捕獲出来たので取り敢えず充分だろう。
マップを埋めて3階層に降りる。
3階層はマップだけ埋めて早々に4階層に降りた。
4階層からは中型の魔物が多くなる。
オークもこの階からだが、オークはまだお肉があるので今回は見送る。
鰐やカンガルーの魔物も出るがお肉はイマイチなようだ。
鰐は革が高く売れるが、アオイも必要ないと言うので此方もスルーする。
マップだけ埋めて5階層に降りて来た。
ここにお目当てのアークバッファローがいるので、じっくり見ていこうと思うが。
取り敢えず空からの偵察とマップ埋めだ。
時計回りにゆっくりと進んでゆく。
5階層からは森林層になっていて、下草は疎だが立木が太くて高くなる。
森林層のマップを埋めて6階層の階段を目指す。
5階層は半分を過ぎるとまた草原になるようだ。
この草原層にお目当てのアークバッファローがいるのだが、数百頭の群れて行動しているので注意が必要だ。
数が多いので、飲み込まれるとひとたまりもないのだが私達は空から捕獲するつもりなので余り気にはしていなかった。
私達は草原の空を飛んでいる。
遠くに土煙が見えているが、多分あれがアークバッファローの群れだろう。
アークバッファローは単体ならCランクなのだが、群れになるとBランクの魔物に分類される。
ただ数百頭の群れになると、Bランク冒険者のパーティーでは歯が立たないことが多い。
群れに近づき様子を見ると、アークバッファローが私達のことを威嚇しているようだ。
ただアークバッファローには空に攻撃する術が無いのか、威嚇するだけだった。
少し高度を落とし、アオイの糸が届く所まで降りてくる。
アオイの糸でアークバッファローの1体を釣り上げ、すかさず高度を上げる。
ある程度離れたら首筋を切り、血抜きする。
多少暴れるが、これなら3体くらいは何とかなりそうだ。
「ピュィピュィピュィ(次は3体頼む)」
「了解だ、3体なら私の糸でも何とかなりそうだ。」
アオイにお願いをしてまた、アークバッファローの群れに近づいて行く。
先ほど仲間が連れ去られたので速度を上げて警戒しているようだが、空からのほうが早いので意味はない。
アオイは素早く3体を拘束した。
私は直ぐに高度を上げまた少し離れる。
エマとアオイで首筋を切りまたもや放置して血抜きをしてから収納した。
これを2回程繰り返して今日の狩りは終了となる。
階層移動の際に昼食を取ったりもしたのだが時間はまだ、お昼を少し過ぎたくらいだ。
マップを埋める為に少し遠回りをしたのにも関わらずこの時間で終わるなら、ダンジョン攻略も日帰りで出来そうだなと思う。
明日はエマが休みでユイが代わりに来るが、ユイの影魔法次第では充分活躍出来るだろう。
私達はそのまま空を飛び戻る階層の階段を目指す。
5階層のマップも大体埋まっているので、また来たときにでも埋めておこうと思う。
4階層から1階層まで、階段以外は空を飛んで真っ直ぐ帰った。
多少空の魔物に襲われたが、1時間ほどで帰ってくることが出来た。
受付に解体を頼むと解体場まで案内された。
解体場でアークバッファロー10体と軍鶏を20羽出すと流石に驚かれた。
「エマ様出来ればで宜しいのですが、アークバッファローと魔鶏を少し協会に卸して頂く事は可能でしょうか?」
「ピーちゃんどうする?」
「ピュィピュィ(半分卸す)」
「了解だよ。
半分のお肉だけは持って帰ります。
他の素材と半数はそのまま売却で良いですよ。」
「有難う御座います。
アークバッファローを狩れる冒険者は少ないですから、いつも品薄なんです。
魔鶏も探すのが大変なので、このように纏まって狩られるかたも少ないですから助かります。
取り敢えずお肉の分だけ先に解体致しますね。
後は明細を確認して頂いて後日入金でも構いませんか?」
「それで大丈夫です。
宜しくお願いします。」
私達は受付に戻り明細を見せて貰った。
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