第20話

 翌日私達は先ず大工さんを出迎えた。

 詳しい計画は私は知らないが、離れを建てるのと今の住んでいるところのリホームをするようだ。

 後はガレージもアオイの店舗用に改装するらしい。

 先ずはガレージと離れを先に建てて、母屋のほうは後からリホームするようだ。


 そんな大工さん達を見学しているとアオイの知合いの木工士の人が尋ねて来た。


 「おう、アオイ邪魔するぜ。

 コイツが最近魔物用のキャンピングカーを作っているハルトだ。」


 「初めましてハルトです。

 馬車を作りたいと伺って出来ればお話を聞きたいと思いお伺いしました。

 キャンピングカーも良いのですが、私も最初は乗り物を作ろうと思っていたんですよね。

 何故か色々要望をお聞きしてたらキャンピングカーになってしまったので自分でも困惑ですよ。」


 「そうなんですね。

 私達は移動の為のものが欲しいので、そこまで設備には拘りませんが乗り心地のほうは拘りたいですね。」


 「お聞きしたところダンジョン探査かもなさるとか、ダンジョン泊もするならキャンピングカーのほうが便利ですよ。」


 「ピュュュィピュィピュュュィピュィピュィ(ダンジョン泊はコンテナハウスでも出来る)」


 「そうだねピーちゃん。

 移動はスキルで出来るので問題は外だけですから馬車で大丈夫です。

 ダンジョン泊も別にコンテナハウスで良いですね、ピーちゃんが収納系のスキルを持ってますからわざわざキャンピングカーにする必要も無いですね。」


 「羨ましいですね、収納系のスキルがある方は。

 それなら私達はダンジョンでも使えるコンテナハウスなんかも制作してますよ。

 キャンピングカーも第1はそれを目的としてますから。」


 「そうなんですね、どうしようか?

 将来的には必要になってくるよね、Bランクだとギリギリいらないかもだけど。」


 「そうですね、ダンジョン泊したほうが効率は上がると思いますが。

 帰って来ようと思えばBランクなら帰れそうですね。」

 

 「普通の冒険者はBランクダンジョンから泊り込みをするようだぜ。

 目的の階層に向かって1日、目的の素材の回収で1日、帰りで1日使うから最低でも2泊だな。

 それを日帰りするのは余程移動に優秀なスキルがあるんだな。

 将来有望なメンバーを揃えているようだぜ。」


 「そうなんですね、私達にはピーちゃんが居ますから移動は楽できますね。

 外でも法律を無視するなら馬車も要らないんですけど、そうも言ってられないですからね。」


 「そうなんですよね、最近はテイマーさんも増えて私の仕事の需要が増えたのは法律のお陰なんですが。

 それを知らない人がまだまだ多いですからね。

 取り敢えず馬車のお見積もりから致しましょうか。」


 「そうですね、値段次第ではコンテナハウスもお願いしたいと思います。

 将来的にはお願いするのは確実ですけどね。」


 「おう、それで馬車は木製で良いのか?

 それならオレらにも仕事が貰えるんだけどな。」


 木工士の親方が仕事欲しさにそんなことを言っているが強度的にどのくらいなのだろうか?


 「ピュィピュィピュュィピュィ?(木製で作ってどれくらいの強度になる?)

 ピュィピュィピュィ?(それで空は飛べるのか?)」


 「それなら問題無いぜ、大事な部分は魔物素材を使うし。

 木材も何ならトレント何かの素材を用意するぜ。

 お高く着くけどな。」


 「それなんですけど、見た目は黒にしたいんですよね。

 ピーちゃんに合わせてなんですが、ネメシス様の馬車をイメージしてるのですけど、どうですかね?」


 「ほぅ、良い趣味してるじゃねぇか。

 これならうちらにも仕事は貰えそうだな。

 ただこれなら魔物素材で作らねぇと保たないかもな。」


 「その辺はお任せしますよ。

 お金は見積もり次第ですけど、多分大丈夫ですよ。

 正直細かいデザイン何かはお任せしますよ。

 女神様に相応しい馬車にして欲しいです。」


 「それなら任せときな、立派馬車に仕上げてやるからよ。

 ただ納期は1ヶ月から2ヶ月は見てもらいてぇな。」


 「それは大丈夫ですよ、急がないので立派な馬車をお願いしますね。

 それが終わったらコンテナハウスもお願いしようかな?

 コンテナハウスはダンジョンで使うだけですから外見は頑丈なら何でも良いですけど。」


 「そっちはハルトの仕事だなぁ。

 馬車のサスとかはハルトに任せるけどよ。

 フレームと設備はハルトと打合せしてくれや。」


 「それは任せて下さい。

 馬車は3人が乗れるものを作る感じですか? 

 4人乗りにすると設備が余り付かなくなるかも知れませんけど。」


 「3人乗りにして下さい。

 設備は程々のもので構いませんね。

 最悪1人は飛べますし、馬車内なら私達もスキルでどうにか出来ますから。」


 「そうだね、私が飛べばもう1人乗れるしね。 

 アオイちゃんなら天井にハンモックで寝れるしね。

 作りは3人乗りで充分かな?」


 「そうだな、出来れば馬車の内装は私がやりたいだがそれは可能なのか?

 ハルトさんのほうで内装もやるなら諦めるけど。」


 「構いませんよ。

 アオイさんは座席のシートとかですよね?

 問題は有りませんが、私どもがやるところとしっかりとした打合せは必要ですね。」


 「そうだな、ウチがやりたいのは座席のクッションとシートだけだ。

 それ以外の内装は任せるよ。」


 「畏まりました。

 そのように手配致しますね。

 1度話を持ち帰り図面で提出致しますね。

 そのときにお見積書もお持ち致します。

 コンテナハウスのお見積もりもそのときに一緒にお持ちしますね。

 注文される場合はそのときに改めて内容を詰めたいと思いますが、それで宜しいですか?」


 「はい、問題ありません。

 それで宜しいお願いしますね。」


 私達は要望を出し尽くして取り敢えず満足していた。

 後日馬車の設計図を持って来てくれるとのこと。

 馬車が出来るまではエマが自力で飛び、私がユイとアオイを乗せての移動になるが仕方がない。

 馬車は向こうの工房で作られるのでお任せするしかない。

 ただ、大工さんはそうもいかない。

 自宅に来てもらっているのだ。

 ダンジョン行くから宜しくとは言えない。

 大工さんの工事が終わるまでは誰か1人だけは残らなければならない。


 アオイが仕事を受けていればアオイが残るのだが、今は仕事を受けていない。

 なのでローテンションで残る順番を決めてダンジョンに行くことにした。

 行くダンジョンは上野に決まった。

 攻略を目指すのではなくお肉の確保が前提だ。

 

 ユイが調べて来た内容によると、上野はフィールド型地形が多いのダンジョンになっている。


 1階層から3階層までが兎や猪、後は鳥類がいる階層になっている。

 4階層から6階層まではオークの他に鰐や牛型の魔物、カンガルー型の魔物なんかもいる。

 7階層から9階層は、バジリスクにワイバーン、ミノタウロスなどの魔物が出る。

 10階層はボス階層で、ドラゴンがいるようだ。

 ドラゴンと言っても3m級の四つ足で羽のない西洋のドラゴンらしく、ドラゴンの中でも弱いほうの魔物だそうだ。

 因みにワイバーンは羽の生えたトカゲとして見られている。

 

 エマ達は中層の牛型魔物のアークバッファローを狙っているようだ。

 私的にはドラゴン一択なのだが、それだとBランクダンジョンを攻略しなければ行けない。

 エマがいるときに単独で攻略しても良いかなと思っている。


 流石にユイとアオイだけだと残してゆくのは不安だが、エマが居ればBから Cランクの魔物は余裕だろう。

 魔物は帰りにでも回収するようにしておけば行けると思うが、相談してみるかどうか?

 1人でドラゴンまで行くと言うと反対されそうな気がするし…、取り敢えず1回行ってみて考えてみるか。

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