第14話

 それからの3人の行動は早かった。

 アオイが先行して糸でオーガを捉える。

 流石にまだ糸で首を切断することは出来ないようだが、レベルが上がればそのウチ出来るだろう。


 拘束したオーガにエマのナイフの斬撃とユイのマナ銃が炸裂する。

 エマは風魔法の斬撃も飛ばして行く。

 数が少なくなって来たら、アオイが糸を何本か纏めてオーガの首を切断することに成功した。

 其処からの殲滅は早かった。

 アオイも討伐数を稼ぎ2人に迫る。

 エマとユイは安定してオーガを倒していく。

 アオイにも何か特別な武器があれば良いのだが、魔銃じゃオーガは倒せないので意味がない。

 

 危なげなく殲滅は終わった。

 死体は回収して、皆んなを集めて影に潜る。

 コアトルが戻って来ているからだ。

 オークの残りも殲滅してしまおう。

 オーガと違ってオークのリポップは半日殆どだから明日にはまた狩れるのだ。

 オーガは丸一日掛かるので、明日のこの時間までリポップしないのだが。

 明日はコアトルが動かないだろうから、殲滅は見送ることになる。


 オークの集落に着いたら、コアトルが暴れた後でオーク達もお疲れのようだ。

 そのオーク達には悪いが殲滅させてもらおう。

 3人に指示をして、集落の真ん中から突然姿を現す。

 オーク達がビックリしている間に攻撃を開始する。

 私の影魔法と、隠密のスキルも大分慣れて来たのか。

 オークの鼻も誤魔化すくらいには慣れた。

 最初は近づくだけでバレて居たのが懐かしい。

 

 オーガを倒すことが出来るのなら、オークは然程問題にならない。

 普通は順序が逆なのだが、コアトルの動きが急だったので今日は仕方がない。

 オークの殲滅が終わり、お肉は回収する。

 

 コアトルは自分の巣に戻ったので、此処で休憩を取ることにした。


 「私の魔法がオーガに効くなんて思ってもみなかったよ。

 ユイちゃんの武器も凄いけど、アオイちゃんのスキルもヤバいね?」


 「私はヒーラーなので武器が無いと戦えないけど、2人のスキルはオーガ相手にも通用したね。

 アオイちゃんも生産職なのにこんなに強いなんて知らなかったよ?」


 「私は戦闘が苦手だったから生産職になっただけだ。

 スキルのお陰で何とかなったが、コレも黒いののお陰だな。

 ただ、オーガ相手だとちょっと辛いけどな。」


 「ピュィピュィ(コレを使え)」


 私は暇なときに集めていた自分の爪をジャラジャラとアオイの前に出す。



「黒いのの爪だよな?

 コレを糸にすれば良いのか?

 この爪は丈夫だからプロテクターの良い素材になったよ。」


 そう言いながらアオイは爪を糸にして行く。

 20mほどの長さになったので十分だと思う。


 「ピュィピュィピュュィ(それを攻撃に使ってみろ)」


 「確かに丈夫だし、魔力との相性も良さそうだ。

 うぅん、コレならもしかして。」


 アオイは近くにある大木に爪の糸を巻き付けたらそのまま切り裂いてしまった。


 「思った以上にヤバい代物だったな黒いの?

 でもコレならオーガも楽勝に斬り刻めそうだぞ。」


 元が私の爪なのだから、オーガぐらいなら楽勝だと思っていたが大木まで細切れにしてしまうとは…。

 アオイとのスキルと相性がよすぎたようだ。

 コレなら早めにコアトルに挑戦しても良いかも知れない。


 「ピュィピュィ(ゴブリン退治に行くぞ)」


 「ゴブリンかぁ、流石に手応えがなくなって来たよね?

 でも仕方ないか、オーガとオークの集落潰したら後はゴブリンくらいだもんね?」


 「前はゴブリンにも苦戦してたんですよね。

 ピーちゃんと会ってから劇的に強くなってますよね?」


 「私なんて今まで兎か猪くらいだぞ。

 コレなら専業冒険者としてもやって行けそうなくらいだ。

 今だったらインナーとプロテクターくらいなら片手間で作れそうだがな。」


 「アオイちゃんが、冒険者としてやって行くなら私は大歓迎だよ。

 お店もやりたいなら応援するしね、ユイちゃん。」


 「そうですね、女性3人のパーティーも悪くは無いですね。

 それにピーちゃんも合わせれば立派な4人パーティーですよ。」


 「そうだな、それも悪くはないな。

 防具は完全受注生産にして、その他は冒険者としてやって行くのも悪くは無いぞ。

 どうせグリフォンのインナーなんて5千万以上するんだ。

 そうそう買えるヤツも居ないよ。」


 「この防具そんなにするのアオイちゃん。

 余りに着心地が良いから寝巻きでも着ようかなって思ってたのに。

 辞めたほうが良いかな?」


 「分かるぞ、コレを着たら他のは着れなくなりそうなくらいだよな。 

 自分で作っておいて何だが、素晴らしい出来栄えだ。」


 「そうなんですよね、着心地は良いしスタイルも矯正してくれてますからブラとかも要らないくらいですよね?

 私なんて今日はノーバンノーブラですよ。」


 「ピュィピュィピュィ(あぁあぁあぁ聞こえないぞ)」


 とんでもないことを話し出したので私は少し距離を取る。

 休憩延長だ。

 どうせ此処には暫く魔物は出ないからな。


 私がボケェーとしてると、


 「ピーちゃん今日はもう帰ろう。

 明日出直して来ようよ、ゴブリン退治はいつでも出来るから。」


 頼もしくなったものだが、攻略は急ぐわけでも無いからな。


 「ピュィ(分かった)」


 それからは影移動でダンジョンを後にした。

 ダンジョンから出た後は直ぐに家に帰ると言うので、そのまま帰宅。

 

 「黒いの、インナー改造するから羽貰うぞ。」


 そう言って、アオイは私の羽を有無も言わさず毟って行った。

 私は涙目になりながらエマとユイを見たのだが、スィッと眼を逸らされた。

 それからアオイは皆んなのインナーを糸に戻して行く。

 

 「それじゃエマから行くか。」


 「了解だよー。」


 と言うなりエマが突然脱ぎ出した。

 エマが両手を広げて足も少し開き大の字のポーズを取る。

 何故に居間で全裸にならなければいけないのか?

 私には分からなかったが、アオイかスキルを発動していた。

 足首からレギンスの裾が縫い上がって行く。

 見る見るうちに、レギンスが縫い上がった。

 次に上のTシャツが腰から縫い上げられる。

 コレはエマ専用のインナーを作っているようだ。

 胸と大事な部分に私の羽の糸をふんだんに使って下着の要らないインナーに改造しているようだ。

 コレも糸変換と繰糸の熟練度が上がったから出来るようになったようだが…。

 私が分かったことは、女性同士だと普段は大胆なんだなと思った。


 エマのインナーが出来た後ユイの番なのだが、ユイも格好はエマと一緒だ。

 私は見ていられなくなって、縁側に退散する。

 私の安息の地は縁側しかないのだ。

 決して猫科の血が騒いでいる訳ではない。

 器用なことにアオイは立ったまま自分のレギンスを編んでいた。

 コレも繰糸のお陰のようだが、見えないところでも感覚で何となく分かるようだ。

 3人分のインナーが出来上がりそのままの格好で寛いでいる。

 

 「ピュィピュィピュィ?(手袋は作らないのか?)」


 「そうだね、ピーちゃんの糸なら丈夫な手袋になりそうだね。

 アオイちゃんならピッタリの手袋が編めるよね。」


 「そうだな、手袋とネックウォーマー、それにヘヤーバンドも作ろうか。

 戦闘時に首と耳も守れるものを。」


 本当は目出し帽みたいなものが良いのだが、どうせ可愛くないと却下されるのだろう。


 「後コアトルは毒の攻撃があるか、全員の目出し帽も作っておこうか。

 毒で髪が傷んでもの嫌だしね。」


 珍しく私の思った通りにはなったが、理由は髪の為だった。

 エマは肩ぐらいまで髪を伸ばしている。

 ユイに至っては腰まで伸ばしていた。

 アオイは耳が見えるくらいの短髪だが。


 その後は手袋などを作って解散となったが。

 その後も女子会は続いたようだ。

 明日からは積極的にオークとオーガを狩りに行くつもりだ。

 エマ達は自分達が強くなっていることが嬉しいのだろう。

 エマは特にコアトルに殺されそうになっているから、余計にリベンジに燃えているようだ。

 私も産まれたてでコアトルに狙われているのでその気持ちは分かるつもりだ。

 

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