第13話

 「おぅ、お帰り。

 さっきまで待ってたんだが、待ちきれなくて初めてた。

 悪かったな。」


 がっはははっと笑うアオイだったが、ユイとエマはドン引きである。


 「アオイちゃん、お客が来るなら我慢しよう?

 そんな事だと繁盛しないよこの店は。」


 「そんなことは無いぞ。

 そこそこ人気店なんだぞ?

 ただ、家賃が高くてな住んでいるところを引き払って此処に住んでいるだけだ。」


 「アオイちゃんこんなところに住んでるの?

 ダメだよちゃんとしなきゃ?

 お風呂とかはどうしてるの?」


 「あぁ、たまに銭湯に行っているよ。」


 確かに羽田には何件か銭湯があるがコレは入ってはいないだろう。

 私は黙ってアオイにクリーンの魔法を掛ける。

  

 「ありがとうよ、黒いの。

 風呂とか入るのは良いんだが、髪の毛乾かすのやら化粧品だとか面倒くさくてな。

 助かるよ。」


 「アオイちゃんそれはダメだよ。

 女子力がエマちゃんより下がってるよ?

 エマちゃん勝手なはなしだけど、エマちゃんの家にアオイちゃん連れて行っても大丈夫?」


 「人のことディスっておいてお願いするのね。

 それは大丈夫じゃない?

 何せ仕事のパートナーだしね。

 何なら部屋も貸しても大丈夫だよ?」


 「ありがとうエマちゃん。

 コレからエマちゃん家に行くから着替えとか何処にあるの?

 ピーちゃんに収納して貰うからね。

 何なら店ごと収納して貰う?」


 「確かにエマの家に工房が有ったら助かるな。

 取り敢えず、全部収納してもらおうか?」


 大丈夫か?この酔っぱらい。

 引っ越しても工房は無いぞエマのウチには。

 酔っ払いの相手をするのも面倒いので、全部収納したけどね。


 酔っ払いを回収してエマのウチに移動した。

 防具の点検は明日にし皆んなでお風呂入ることになった。

 全員にクリーンの魔法を掛けたのだが、お風呂は別らしい。

 

 アオイも面倒くさいと抵抗していたのだが、酔いを醒ませと強制的に連れられて行った。

 私は影に潜って隠れるつもりだったのだが、エマが影の中に手を突っ込んできて引き摺り出された。

 一応説明しとくがエマは全裸である。

 全裸にもビックリだが、エマは影魔法が使えるの?

 新しく生えたの風魔法だよね?

 首根っこを掴まれて私もお風呂に強制送還されたのだった。


 私は心を落ち着かせる為に素数を数えたが、素数って何だっけと考えていたらお風呂タイムは終わっていた。

 私の前世は理系では無かったようだ。


 お風呂の後はご飯だが、今日はオークカツになった。

 2日連続で揚げ物だが、大丈夫何だろうか?

 私は魔物だから気にはならないが…。

 アオイはカツでまた飲んでいたけどな。


 少しほろ酔いなアオイだが、出来れば此処に住まわせて欲しいとのこと。

 部屋は余っているので問題無いが、工房はどうするのか気になる。

 

 「防具を作るだけなら、その辺の倉庫でも出来るのだが接客をするとなると店舗は欲しいな?」


 とのこと、スキルで防具を作るので場所は気にならないようだ。

 接客するのにこの家に人を上げるのは不用心なので関心はしない。


 「この家もリホームしたいから、序でに表のガレージを改装しちゃおうか?

 其処ならお客さん来ても関係無いからね。

 アオイちゃんも丁度良いじゃ無い?」


 「良いのか?

 私は非常に助かるが、其方にメリットがあるとは思えんが?」


 「メリットはあるよ?

 防具のメンテナンスをしてくれるのにお店に行かなくても良くなるしね。

 ダンジョンに行っている間は誰かが家にいてもらったほうが、安心できるしね。」


 何や感や話し合われリホームの内容を詰めていく3人だが、私は縁側な涼んでいた。

 魔物の私には関係の無い話だからね。

 明日からはオークとオーガの集落を殲滅して行く。

 それを繰り返して行けばコアトルを倒すだけの実力は付くだろ。


 「ピーちゃん、明日からはアオイちゃんも一緒にダンジョンに行くけど良いかな?

 アオイちゃんに魔銃使って貰うつもりだよ。

 アオイちゃんもCランク冒険者だけど、もう少しレベルを上げてスキルを使えるようになりたいんだって。」


 「ピュィピィ?(スキルって?)」


 「アオイちゃんは[糸変換]って言うスキルがあるんだけど、何でも糸に変えられちゃうみたいなんだけど。

 魔力も使うし、熟練度も上げないと上手く素材の変換も出来ないみたいなの。」


 「ピュィピュュュュイ?(面白いスキルだ魔力は変換出来るのか?)」


 「それは試して無かったな、ちょっとやってみるか?

 どれどれ、おっ、中々難しいが変換は出来るな。」


 「ピュィピュィ?(それを操れるのか?)」


 「おっ、操れそうだな。

 この能力なら針も要らなそうだな。

 黒いのは面白い発想をするな、コレならゴブリンくらいなら楽に倒せそうだ。」


 確かに面白そうなスキルだな、暗殺向けだけど。

 アオイには、私の素材も渡しておいた。

 受領書にもサインは貰ったので、後はコレを協会に提出するだけだ。


 アオイは自分の部屋に戻って防具を作るようだ。

 明日は3人と1匹で羽田ダンジョンに向かう。

 アオイが参加するので、またゴブリン集落周りからになるのか?

 2人には物足りないかも知れないが、アオイの成長待ちになるだろう。

 まぁ、そんなに急いで攻略することも無いのだが。


 翌朝、羽田ダンジョンに向かった。

 アオイは寝ていないのか、妙にテンションが高い。

 何でも魔力糸でインナーを作って居たら楽しくなってしまったようだ。

 エマ達のよりも上手く作れたとか、今度2人のは手直ししたいとまで言っていた。

 そのときに[繰糸]のスキルも生えてきて、戦闘でも使えそうだと興奮していた。


 元から服飾のほうが好きだったのだが、魔力が使えたので冒険者の大学に通って居たのだが。

 戦闘系のスキルが覚えられなくて生産系のスキルを習得したようだ。


 レーシングスーツのような全身装備も作れるのだが、可愛くないとインナーとプロテクターに分けて作っているようだ。

 それに普通の服を着ても防御力は変わらないものを作っていると豪語していた。

 なのでアオイの店のお客は大概女性だそうだ。

 男性は一体型の防具で済ます人が支流らしい。

 頼まれれば作るそうだが、元から服飾が好きだったので作るものは何処か可愛らしいデザインで人気もあるようだ。


 ダンジョンに着いてそそくさと5階層に降りてくる。

 入口から半時計周りに進んで森に入る。

 ゴブリンの集落を確認出来る位置まで来ると一旦止まって観察する。


 「ピュィピュィ?(此処から殺れるか?)」


 アオイに聞いてみたのだが、アオイは既にスキルを使っていたようだ。


 「魔力は使うけど、100mくらいは伸ばしても問題無いようだ。

 今は10本の糸を操っているけど、もう少し増やせそうだぞ。

 このまま殺っちまうからな。」


 アオイはそのまま10匹のゴブリンの首を糸で切断してしまった。

 中々使い勝手が良いスキルのようだ。

 このまま斥候系のスキルも習得出来れば、戦力になるとは思うが、それはアオイ次第だろう。


 アオイが防具屋をやりたいなら無理強いは出来ない。

 先ずはアオイをエマ達と同じレベル台にしなければならないので、アオイ中心にゴブリンを倒させる。

 ゴブリン集落を殲滅し終わった頃にコアトルに変化があった。

 オークの集落を襲いに出たようだ。


 「ピュィピュィ(移動するぞ)」


 私は皆んなを集めて影に押し込んだ。

 影移動でオーガの集落まで行く為だ。

 コアトルとオークを無視して、オーガの集落に急いだ。


 「ピュィピュィピュュュ(この先にオーガの集落がある3人で行ってこい)」


 「ピーちゃんが行けると思ってるなら大丈夫だと思うけど、急にどうしたの?」


 「ピュィピュュュュィピュィ(コアトルがこの近くから中央のオークの集落に行っている今がチャンスなんだ。)」


 「あぁ、コアトルあっちに行っているんだ。

 分かったよ、3人で頑張って来るけどピーちゃんもちゃんと見ててよ?」


 「ピュィ(任せろ)」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る