第12話

 別室にて素材を出したのだが、受付のイガラシさんがまだ固まってしまった。


 「ピュィ?(どうした?)」


 「失礼致しました。

 もしかしなくてもピーちゃん様の素材ですよね?

 こんなに出して大丈夫ですか?

 アオイ様はこの素材を幾らで購入するつもりでいらっしゃいますか?」


 「黒いのとの交渉で決まったことは、今回は防具の製作費と素材の売買での差額で8千万にした。

 今後受注生産で購入する素材は1人分2千万で決まったが協会はこれに反対をするのか?」


 「いえ、途んでもないことで御座います。

 最初の8千万は妥当だとは思いますが、その後の2千万は少し安いような気も致しますが。」


 「そこが専属契約の話になってくる。

 私は2千万で購入するが、この装備のメンテナンスをタダで請負うことにした。

 それで契約書を協会を通してしてしまおうという話なのだが、何か問題でもあるか?」


 「偶にテイマー様が従魔の素材を定期的に販売する事が御座いますが、上手く行った試しがありません。

 従魔はあくまでも生え替わるタイミング御座いますので、必要なときに必要な分を用意出来ないことが多々ありまして協会ではこのような取引からは手を引いている状態です。」


 「確かに聞いたことが有る話だな。

 そこのとこどうなんだ黒いの?」


 「ピュィ(問題ない)」


 「だそうだが協会はどうする?」


 「ピーちゃん様が宜しければ書類を作成致しますが、あくまでもアオイ様とピーちゃん様の契約になりますが宜しいですか?」

  

 「私は問題無いけど、アオイさんは大丈夫?

 ピーちゃんもだけどね?」


 「私は大丈夫だ。」


 「ピュィ、ピュィピュィピュィピィ(大丈夫だ、手付金の代わりに1人分の素材を先に渡しておこう)」


 「それなら問題無さそうですね。

 先に素材を渡すなら契約不履行の場合はそれで賄うようにして下さい。

 それで契約書を作成致します。」


 「相変わらずピーちゃんが優秀すぎる件につき。

 私を無視して話す受付さんも凄いと思うけど。」


 「ピュィピュィピィィ(無視はしてない金はエマに振込まれるからな)」


 「何でそうなるの?

 ピーちゃんのお金だよ?

 ピーちゃんがかんりしてよ。」


 「ピュィピュィ、ピィィィピュィ(無理を言うな、私は魔物で主はお前だ)」


 「そうだけどさ、これって私関係有ります?」


 「申し訳御座いませんが、ピーちゃんまたもや様のご主人様ですのでお金は其方に振込まれます。

 契約書もピーちゃん様との連盟でお願い致します。

 税金関係は協会を通して頂ければ対応致しますし、ランクアップの査定にも関係しますよ。」


 「それなら仕方が無いかな。

 ピーちゃんも欲しいものが有ったら言ってね。

 代わりに買って上げるから、でもリホームだけはさせてね?

 今の家ちょっとガタが来てるから。」


 「ピュィピュィ(金は好きにしろ)」


 「ありがとうピーちゃん。

 大好きだよ。」


 エマはこう言うときは話が通じるのだがな、肝心なときに通じないのはどうしてなのか?

 わざとなのか?それと天然なのか?

 

 取り敢えず交渉内容は決まり契約書にサインをするだけになった。

 エマは普通にサインをして、私は奈々肉球スタンプをされただけだった。

 素材に関してはダンジョンから帰ったら納品しに行くと伝えておいた。

 協会で査定をして貰ってそれを納める形だ。

 マナさえ有れば私は何とでもなるのだ。

  

 アオイはそのまま店に帰り、私達はダンジョンに潜ることにした。

 防具を付けての戦闘は初めてなので、不具合が有ったらアオイの店に戻ることになる。

 不具合が無くでアオイの店に寄ることにはなったが、問題はないだろう。


 防具を付けてダンジョンに突入しようとしたのだがエマの格好が可笑しい。


 「エマちゃん、魔法使いだからってスカートは可笑しくないかな?」


 「どうして?

 インナーも履いてるから問題は無いと思うけど。

 スカートのほうが動きやすいよ。

 インナーにプロテクター付けてるから誰も見ないよ。」


 いえ、私が見てるのですよ。

 膝丈のスカートを下から覗けば丸見えですよ?

 インナーはTシャツにレギンスと靴下のセットなのだが、レギンスはレギンスで妙にエロいと思うのですよ。

 下から覗くのに耐えられなくたなって、仔猫サイズでエマの肩に乗ることにした。

 レギンスの中の縞々を想像してしまうからな。

 私の興奮すると卵を産みたくなる癖はどうにかならないものかな。


 協会で時間を取ってしまったが、私の影に2人を入れて5階層まで一気に進む。

 これを使えばコアトルに会いに行っても逃げられるかも知れない。

 もう少し2人が成長したら試してみても良いかも知れない。


 5階層に付いてゴブリン集落を回って行く。 

 最近は2人も戦闘しながらでも周囲の確認は出来ているようだ。

 ワザとオークの接近を教えなかったのだが、後からエマに散々怒られた。

 

 2人の為に教えなかったと言ったのだが、そう言うときだけエマには言葉が通じない。

 何故なのだろうか?

 解せぬ。


 今日はアオイの店にも寄らなければならないので早めに引き上げるが、私は2人にコアトルと見に行こうと提案をする。

 私の影に潜りながらの偵察だ。

 それなら逃げるのに問題無いからな。

 影の中でも私が2人を背負って移動しなければならないが、然程問題は無い。


 2人が納得してくれたので、影に潜ってコアトルの元に駆け出した。

 オークの集落を越えて、コアトルの巣に近づく。

 

 コアトルは塒を巻いて寝ているようだ。

 私に取っては都合が良かった。

 エマはコアトルを見て震えていた。

 ユイはそこまででは無かったようだが緊張感は伝わって来た。

 

 今回のコアトルに印を付けて退散する。

 これでコアトルの位置も把握出来るので、オークの集落もオーガの集落も殲滅出来る。


 マップの9時から12時の間は危険なので避けていたが、これで心置きなく殲滅出来る。


 帰りはそのまま影移動で地上まで戻った。

 ダンジョンから出る前に私は何度か自分の素材を回収しておいた。

 マナが濃い場所なら何度でも入れ替えは出来るので問題無い。

 他の魔物はどうかは知らないが、他のタイマーは知らないのだろうか?


 ダンジョン帰って受付で今日の素材を出しておく。

 私の素材も出しておいて、鑑定書を付けて貰う。

 こうしておけばいつでもアオイに渡せるからな。

 取り敢えず1人分の鑑定書を作って貰いアオイの納品書を作成する。

 後はコレにサインを貰うだけだ。

 

 最近は殲滅の速度が上がって、魔物のリポップが間に合わないくらいだ。

 なのでオークとオーガの集落も殲滅したいのだ。


 査定も終わって入金は後日となる。

 私達はそのままの格好でアオイの店を訪れる。

 着替えなかったのはアオイの希望だ。


 羽田周辺は冒険者も多いので、防具を付けたまま帰る人は結構いる。

 武器は見えないようにしているが、氾濫に備えて鍵付きのボックスに仕舞うような事はない。

 有事の際に使えなければ意味がないからね。

 

 収納系のスキルを持っている人は少ないが、居ることは居る。

 その人たちはスキルの登録が義務付けられているが、私には適応されないようだ。

 今まで魔物に収納のスキルがある事は確認されていないからだ。

 羽田の受付にはバレているので誤魔化せないが、国の法律には魔物は適応されないようだ。

 此処が法治国家の悪い所でもある。

 法律が適応されていなければ問題無いと言っている国なのだ。

 法律が出来るまで野放しでいるようなものだ。


 そんな国の事はどうでも良いが、アオイの店に寄って早く帰ろうと思う。


 「アオイちゃん、来たよ。

 防具は問題無かったからね。」


 ユイが勢いよく店に入ったのだが、アオイは店のソファーで酒を飲んでいた。


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