第10話

 ユイの引っ越しが早く終わり、部屋の模様替えも終わったので今後について話合うようだ。


 「ユイちゃんも冒険者で食べて行くつもりで良いんだよね?

 前はヒーラーだから厳しいかもって言ってたけど。」


 「そうですね、前は自衛用のハンドガンしか無かったので魔物の討伐はお任せしてましたから。

 それだと魔力の伸びがイマイチで、成長しないんですよね。

 これからはサブマシンガンも有りますから、私も討伐に参加出来ますからレベルも上がると思うんですよね。」


 この世界はレベルやHPにMPもあるとされているが、確認する術がない。

 魔力感知があると大体の魔力量が分かるので、それを目安にしているようだが。

 それだけだと分からない肉体的強度などあるので、魔力が多いからと言ってレベルが高い訳でも無いのだが。


 「ピーちゃん、昨日宝箱から出たマナ銃だっけ?

 出して貰える?

 後、ユイちゃんの魔銃も。」


 「ピュィ(了解)」


 マナ銃と魔銃に呼びのマガジンも序でに出しといた。


 「あれ、昨日は残弾無かったのに満タンになってる?

 魔銃も補充してあるね?

 もしかしてピーちゃんが補充してくれたの?」


 「ピュィ(そうだ)」


 「ありがとうね、ピーちゃん。

 それでこのマナ銃は魔銃とどう違うのかな?

 どれどれ?」


 エマがマナ銃を持って色々調べていた。

 マナ銃は大気のマナを吸収して弾に変えるので、ほぼ弾切れの心配は無いのだが。

 威力調節が付いていて、威力を上げると消費も上がるので吸収より消費が上回れば弾切れを起こす。

 ただ、そのまま放置しているだけで補充は出来るので便利だが、マナ操作が使える私が居れば一瞬で補充も出来る。

 ユイに渡す魔銃も同じだ。

 魔銃は威力調節が無いから、威力は一定だけどね。


 「凄い銃ね、威力調節が付いてるなんて。

 それに何となく分かるけど、補充は魔力じゃ無いんだね。

 私も新しく希少種の主なんて称号が生えてたからそれで分かるのかな?

 うぅぅぅん、ピーちゃんこの銃はユイちゃんに使って貰っても良いかな?

 ちょっと試したいことがあるから。」


 「ピュィ(任せる)」


 「ありがとう、ピーちゃん。

 それじゃこれはユイちゃんが使ってね。

 私は今までの魔銃を使うから。」


 「良いのエマちゃん?

 そんな凄そうな銃使っても。

 いつものエマちゃんなら、涎垂らして欲しがるレベルだよ?」


 「うっ、そんなこと無いし。

 確かにちょっとカッコいいとは思うけど、それよりも試したいことがあるの。

 これから、ちょっとダンジョンにいきましょうか?

 ユイちゃんも試し撃ちしたほうが良いと思うから。」


 「そうですね、時間もまだ午前中ですから、3階層か4階層くらいはいけそうですね。」


 私達は羽田ダンジョンに向かうことにした。

 昨日は休むと言っていたのに、冒険者とはブラックな環境のようだ。

 魔物の世界よりはマシだけどね。


 羽田ダンジョンに着いて、私達は1、2階層を通り抜けて3階層までやって来た。

 此処からはゴブリンが主体で出て来るので試し撃ちにはもってこいの場所だ。


 「それじゃユイちゃんから試してみて、私はちょっと他に試すことがあるから。

 ピーちゃんは昨日のナイフを出してくれる?」


 「ピュィ(はいよ)」


 ナイフを出してエマに渡す。

 ユイにゴブリンの居場所を教えたら、そこに向かって行った。

 私とエマはユイに着いて行くが、エマはナイフを持ちながらぶつぶつ呟いている。

 側から見たら危ない人だが、多分マナを感じているのだろう。

 

 ユイがゴブリンを見つけたようで銃を構える。

 向こうのゴブリンはまだ気付いていないので、ユイも余裕があるようだ。

 深呼吸の後に引き金を引き、ゴブリンにマナの塊がぶち込まれた。

 続け様に2匹3匹と始末してゆくユイだが、何か変なスイッチが入ってしまったようだ。

 うふふ、うふふと笑いながら銃を乱射している様は、手錠を掛けられても仕方がないと思う。


 「この銃は凄いですね、ゴブリンが面白いように死んできますよ。

 しかもあれだけ打って残弾が減らないとは優れものですね。

 これが有れば私も討伐に参加出来ますよ。

 今更返して下さいと言われても返さないですからね。」


 「大丈夫だよ、私も何となく掴めて来たから。

 その銃はね大気中にあるマナという魔力の素を吸収してるみたいなの。

 そしてこのナイフもね。

 新しく生えた称号のお陰でそれが何となく分かるみたい。

 そしてピーちゃんの主として新たに生えたスキルが私には有ります。

 それを見てもらいましょう。」


 そう言ってエマは新たなゴブリンを探していたので、マップで確認しながら私が案内する。

 ゴブリンが見つけたエマが右手を横に振るとそこから風の魔法が飛び出した。

 その風が纏めて3匹のゴブリンの首を跳ね飛ばした。


 「凄いねこの魔法。

 ピーちゃんから貰ったスキルだけど、マナを使うと魔力消費は少ないし威力も上がるのね。

 もしかして私の火魔法も威力が上がるのかな?」


 「ピュィ(そうだよ)」


 「凄いことしてたんだねピーちゃんは。

 それが鑑定出来なかったスキルなのかな?

 この魔法が有れば私には銃は必要無いね。

 このナイフが有れば、自衛用は問題ないし刀身にマナを纏わせると刀身も伸びるようだしね。

 接近戦はするつもりないけど。」


 「凄いよエマちゃん。

 Aランクの冒険者みたいだったよ。

 その魔法が有ればこのダンジョンも攻略出来そうだよね。

 私も頑張るよ、この銃でレベルを上げて役に立って見せるから。」


 そんなこんなで魔銃は予備として私が持っておくことになった。

 順調にダンジョンを進んで、4階層まで降りて来た。

 2人が物足りなさそうだったので、ゴブリンとスケルトンがいるモンスターハウスにご招待した。

 2人だけでも問題ないと思っていたが、思いのほか焦っていたようだ。

 危なくなりそうな敵を抑えて時間を稼ぎ、余裕が出来たら拘束を解いて2人に討伐させていた。

 後からエマには怒られたが、落ち着いていけば討伐は可能だったと思う。


 エマが焦っているときにナイフを無我夢中に振っていたのだが、振るたびに私が使っているマナブレードのようなものが飛んでゴブリンを倒していた。

 マナナイフは飛び道具でもあると分かったので収穫もあったのに怒られるとは解せぬ。


 ある程度使い心地は分かったので、魔石を回収して引き上げることにした。

 2人ともレベルが上がった実感があるのかウキウキ顔である。


 昨日の受付に行き魔石を売却した。

 ゴブリンとスケルトンの魔石の買取は安いのだが、数が多いのでソコソコの稼ぎにはなったようだ。


 今後の方針だが、2人は羽田ダンジョンを攻略してBランクになるつもりのようだ。

 エマはBランクに上がる資格があるのだが、この間のは自分の実際では無いと断っている。


 なので改めて羽田のダンジョンを攻略して、晴れてBランク冒険者を目指すようだ。


 それは防具が出来てから本格的に始動するが、それまではゴブリンやオークを狩って実力を付けるようだ。

 今の装備でもオークまでは何とかなりそうなので、5階層の中央を目指して攻略して行くことになる。

 私が居れば攻略も直ぐなのだが、それをしてしまうとエマ達の実力が付かないので羽田のダンジョンは2人で攻略することになったのだ。


 そうは言っても私もダンジョンには付いて行くけどね。

 なんせ羽田ダンジョンは私の実家になるのだから。

 実家の案内なら任せて貰いたい。

 5階層は完璧なマップがあるし他の階層も階段の場所は分かっているので問題ない。


 Cランクのダンジョンの宝箱はボスを倒さないと出て来ないので他の階層は魔物の討伐目当てでも無ければ素通りが基本らしい。

 Bランクからはソコソコ良い宝箱が出るようなので、冒険者の本番はBランクからだと言われているようだ。


 専業冒険者を目指すならBランクを目指さないと稼ぎは悪いようだ。

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