第9話

 お風呂から出て、私は縁側で賢者タイムに浸っていた。

 女性2人とのお風呂は私にとって刺激が強すぎた。

 いつ卵を産んでも可笑しくない状態だったのを我慢できたのは人間の理性のお陰だろう。

 

 賢者タイムの後は食事の時間だ。

 私はオークの肉を出して、


 「ピュィピュィ(唐揚げが食いたい)」

 

 「そうですね、今日はピーちゃんの歓迎会ですからポークソテーならぬオークソテーにしましょうか。」


 「エマちゃん、ピーちゃんは唐揚げが食べたいって言ってると思うよ?」


 「そんなことはありません。

 私がピーちゃんの主人ですから、意思の疎通はバッチリです。

 なので今日はオークソテーにしましょう。」


 ユイは慰められて背中を撫でられる。 

 たまにエマとは意思の疎通が出来なくなるのは何でなのかと悩んでしまう。

 何ならユイのほうが察してくれそうだ。

 これは追々解決して行こうと思う。


 食事が出来上がり2人と1匹で頂きます。

 2人はオーク肉が美味しすぎて涙を流していた。

 私の味覚的には味はそんなにしないのだが、美味しく頂けた。

 私の場合は味ではなく、魔力量が問題なのでその点に関しては満足だ。

 仔猫サイズなので食べる量も多くはない。

 仔猫サイズの食事でも大型サイズに足りることがナゾ原理だが、便利なので気にはしない。

 仔猫サイズで自分の体積以上食べたらどっかの戦闘民族と一緒になってしまう。


 食事が終わって、今日は疲れたと2人は眠ってしまったが私はどうしようか。

 寝る必要がないのだが、寝ることは出来る。

 食事はするが排泄もしない。

 私が食べたものは全て魔力になるからだ。

 元から食事を必要としないので、排泄の必要も無いのだがエマには躾だと散々言われてしまった。

 幾ら私が必要ないとピュィピュィ言っても聞いてくれないので、その場しのぎで頷いておいた。

 エマは満足して、ユイは同情の眼差しを私にしていた。

 何故エマには一部伝わらないのだろう。

 それと一緒で睡眠も必要ない、昼しか無いダンジョンでは眠る必要が無いのだ。

 なので今日はエマのうちにあるパソコンを起動させたいた。

 魔拿マナ魔法で手を作りキーボードを叩く。

 同じ要領でマウスも動かすが、ダブルクリックで少し躓いた。

 

 パソコンで色々検索して行く。

 この世界のこと、ダンジョンのこと、魔法やスキルに確認されている称号など知りたいことはいっぱいある。

 この世界とダンジョンが出来た理由はこの時に知ったことだ。

 ただダンジョンにはランクがあり、羽田のダンジョンはCランクダンジョンらしい。

 ダンジョンにもランクがあるなら魔物と冒険者にもランクがある。

 普通のグリフォンがAランクでエマとユイはCランクの冒険者のようだ。

 ランクは基本最高のSから始まりA B C D Eランクまである。

魔物ならEがスライムでDが兎や猪、CがオークBがオーガで、Aがコアトルやグリフォンのようだ。

 Sは規格外のことを言い、私のような希少種や伝説になっているような魔物のことを言う。

 冒険者の初心者がEで初級者がD、一人前でCになりBで中級者所謂ベテランだ。

 Aで上級者になりSが規格外なのは魔物と一緒。

 ダンジョンはEだと1階層しかなく、Dで3階層でCで5階層になり、Bで10階層でAで 20階層になる。

 Sのダンジョンは攻略されたことがないので、分かっていないが。

 多分40階層だと言われている。

 

 エマ達は大学を卒業してEランクになったが、魔法が使えるのと依頼の成功率が高いので、直ぐにCランクに上がったようだ。

 そのときにあの男達に声を掛けられて臨時のパーティーを組んだようだ。

 まだお試しの段階で騙されるのは運が悪いのか、お試し中に分かって良かったのかは分からない。


 その他も自分のスキルのことや、称号に付いて調べていたが朝になったので止めることにした。

 エマ達が起きたときに私が居ないと騒ぐかもしれないので部屋に戻ることにする。

 昨日は一緒に寝たようだが、今日からはユイが引っ越して来たら別々で寝るのかな?

 そうしたら私も別で寝させて貰おうと思う。

 トイレの躾の前にゲージに入れろって話だよね。


 朝になり2人とも起きて来た。

 私は朝に兎肉を食べたが、2人は朝からオーク肉を食べている。

 私の兎肉も取られてしまったが、オークのほうが上手いと2人は言っていた。

 味は鶏肉に近く私は好きな味だったが、魔力量はオークのほうが断然多い。

 人間には魔力も味の1つとして感じているのかも知れないな。


 朝食を食べ終わり2人と一緒にユイの家に向かう。

 ユイの家は品川にあるマンションだ。

 品川と言っても端のほうだと羽田と余り変わらない。

 電車でも一駅か二駅で着く距離だ。

 ユイのマンションに着き私は取り敢えずクリーンの魔法を使った。

 現状で掃除をしたのだ。

 その後に片っ端から収納して引っ越しは完了した。 

 最後に部屋にクリーンを掛けて掃除したので、汚れもない。


 「エマちゃんが言ってたことが分かったよ。

 一家に一台ピーちゃんだね。

 引っ越しがこんなに簡単に終わるなんて。

 これなら直ぐにでも解約出来そうだね。」


 「今月分の家賃は仕方ないかも知れないけど、来月からは節約出来そうだよね。

 引っ越しも終わったから防具屋さんに行こうか?」


 「そうですね、ちょっと早いかも知れないですけど。

 もう、向かっても良さそうですね。

 一応連絡しときますね。」


 「お願いねユイちゃん。

 私はそっち関係は詳しくないから良く分からなくて。」


 私達は品川から羽田に戻って来た。

 何でも羽田は空港がある町から、ダンジョンが出来たときに冒険者の町に変わったようだ。

 ダンジョン関係のお店が多く冒険者もよく来る町になっている。

 その中の1つにユイの知り合いの店があるようだが、何で地元のエマが知らないのか不思議だった。

 エマは装備は武器にしか興味が無く、防具はそれなりで済ましていたようだ。

 後衛職なので、何ならジャージでも良いと思っていたようだがユイとパーティーを組んでからはまともになったようだ。

 魔銃に関しては煩いくらいなのに、防具になると大人しくなる。


 羽田のお店は昔ながらの職人気質な感じの店だったが、出て来た人はエマ達と同じぐらいの年齢だった。

 

 「アオイちゃんお久しぶり、防具を作って欲しいのだけど素材持ち込みで大丈夫?」


 「久しぶりだなユイ、持ち込みは構わないが変な素材ならお断りだよ。 

 Cランク以上の素材じゃないと仕事しないからな。」


 「それは大丈夫だよ、素材ランクはAとかBだから。

 私とエマちゃんの防具をお願いね。」


 「おいおい、Aランクの素材があるのかよ。

 お前ら死にたいのか?

 無理してそんなの集めてたら命が幾つあっても足りないぞ。」


 「確かに死にかけたんだけどね、エマちゃんが。

 でもそのお陰で良い素材が入ったのは本当だからね。

 それじゃ出すから宜しくね。

 ピーちゃん素材を出して。」


 「ピュィ(ほらよ)」


 ストレージからコアトルやオーガの素材を出した後、私は姿を大きくする。

 ちょっと狭いがギリギリ収まるだろう。

 大きくなったら爪や羽、毛を抜いて行く。

 それなりの数になったら私は仔猫のサイズに戻った。

 

 「この黒い魔物はグリフォンなのかい?

 羽田ダンジョンのオーガとコアトルの素材まで、どうしたんだいこの素材は。

 それにグリフォンの素材まで、確かにAランクの素材だがもしかしてこのグリフォンはSランクじゃないのかい?」


 「多分そうだと思いますよ。

 ピーちゃんが素材の提供をしてくれるとは思いませんでしたけど。

 これでいつも通り、動きやすい装備をお願いしますね。」


 「分かったよ、素材は一級品だしな文句はないよ。

 2人分だと4日は欲しいけど大丈夫か?」


 「大丈夫ですよ。

 前の装備も壊れた訳ではないので、問題ないです。

 それじゃお願いしますね。」


 アオイの店を後にして、エマのウチまで戻って来た。

 ユイの部屋を決めて言われた場所に収納していたものを出して行く。

 最後にベッドだけになったんだが、それは違う部屋に置くと言われた。

 序でにとエマの部屋のベッドを収納させられて、1階の居間に近い寝室に連れて来られた。 

 そこの部屋には何も置いて無いのだが、2人のベッドを此処に出せと言われてしまった。

 

 「今日から此処が皆んなの寝室になるよ。

 お金が貯まったらベッドもお揃いのに買い替えたいけど。

 暫くはこれで我慢かな。」


 「そうですね、ピーちゃんのベッドも欲しいとこですが小さくなっていれば問題無さそうですね。」


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