第8話

 それから程なくしてお肉と素材が用意された。

 それを全て収納してしまう。

 お金は後日振込まれるとのこと。

 明細だけ貰ってダンジョンからお暇する。


 建物から出ると近くの空で飛行機が飛んでいた。

 此処の場所は東京の羽田空港の近くに出来たダンジョンだった。

 私の前世には羽田空港の近くにはダンジョンなんて無かった。

 そもそもダンジョンなんて無かったのだが、いつのまにか出来たのか後で調べてみようと思う。


 「ユイちゃんはこれからどうする?

 またウチに寄って行く?」

 

 「そうだね、これからは2人でダンジョンに行くならエマちゃんの家からのほうが近いもんね。

 あの2人が居たから内緒にしてたけど、もうその必要は無いもんね。」


 「何ならウチに引っ越して来なよ。

 どうせ部屋は余っているし、ピーちゃんが来たけど私も1人じゃ寂しいからね。

 多分ピーちゃんと3人なら十分稼げると思うよ?

 一緒にダンジョン潜ってくれるなら家賃とか要らないし。」


 「ほんと?

 それなら助かるよ。

 何で東京の家賃は高いんだろうね?

 田舎じゃ一軒家でも借りれるお金なんだけどね。」


 エマは東京生まれの東京育ちらしいが、親の出身は違うようだ。

 今住んでいる場所は、母方のお婆ちゃんの家に住んでいるようで。

 お祖父ちゃんがそこそこ稼いでいたようで、東京の羽田に結構デカい家に住んでいたのだが既に亡くなっている。

 母は1人娘で他に親族も居ないので相続したようだが、最初は売りに出すつもりだったようだ。

 両親も既にマンションを購入していて、一軒家には住みたくは無かったようだ。

 それならと私がとエマが相続させて貰ったようだ。

 流石に相続のお金は払えなかったが、代わりに立て替えて貰っている状態らしい。

 そのお金をダンジョンで稼いで、親に支払っているようだ。

 エマとユイは今年大学を卒業したばかりなのだが、就職はしていない。

 この世界には魔力があるが、人間には魔力が使える人と使えない人に分かれるようだ。

 後で調べて分かったことだが、1999年7の月に突如としてダンジョンが現れたようだ。

 

 私の記憶には1999年7の月と言えばノストラダムスの大予言だろう。

 この年この時に人類は滅亡すると言うオカルトチックな予言だったのだが、この世界では強ち間違えでは無かった。

 突如としてダンジョンが発生し、魔物の氾濫が起きたのだ。

 一部地方では壊滅的な状態になったようだが、マナ不足で魔物が自然消滅してことなきを得た。

 それから政府がダンジョンを調べて、ダンジョン攻略が盛んになり新しいエネルギー問題も解決するに至ったようだ。

 要は私の知っている世界とは別次元の地球だったようだ。


 ダンジョン発生以降に産まれて来た子は高確率で魔力が使えるようだが、その前に産まれて来た子は適性というか才能と言うのかは分からないものが必要らしい。

 現在は2023年の4月、この2人はダンジョン発生後の世代だから魔力が使えるようだ。

 ダンジョンからはエネルギー問題から食料問題まで解決してくれる要素があった。

 少子化問題も一時的にダンジョンの発生で減少した人口も、危機的本能なのか増えたようだ。

 逆に人口が増えすぎた地域は減少傾向にあるようで、ダンジョンが調整しているのではと思う学者もいるそうだ。

 私には難しいことは分からないが、現代日本という環境にあることはありがたい。

 似たような環境で文化なら普通に生活が出来そうだ。

 

 ユイは田舎から大学に進学する為に状況したようだ。

 エマとユイが通っていた大学が、冒険者育成大学らしくダンジョンを攻略すると人を育成する学校だ。


 この学校を卒業すると冒険者協会や冒険者関係の役所なんかに勤める人が多いようだが、魔力が使える人はそのまま冒険者になる人も一定数いるようだ。

 協会や役所に勤める人の数は限られているし、冒険者なら一攫千金も夢では無い。

 何かしらの有用なアイテムでも見つけたら直ぐにでも億万長者になれる。

 私が宝箱から出した回復薬でも数百万から何千万の間で取引さらることもあるようだ。


 そんな回想をしているうちにエマの家に着いたようだ。

 東京の下町を思わせる町の風景に似つかわしく無い豪邸があった。

 エマのお祖父ちゃんはまともな職業の人では無かったのではないだろうか?

 これも後から聞いたのだが、お祖父ちゃんはダンジョンが出来て直ぐにダンジョン関係の仕事をしだして一財産を稼いだようだ。

 なので古風だがそこそこ新しい家だ。

 都内には珍しく二階建ての庭付き一軒家なんて普通は手に入らないと思うが、お祖父ちゃんはやり遂げたようだ。


 「いつ来ても立派なお家ですね。

 これだけの家を維持するのも大変じゃ無いですか?」


 「掃除は魔法で済ますからそうでも無いわよ?

 ダンジョンに潜らない日に纏めて掃除すれば直ぐに終わるしね。

 流石に庭のお手入れは出来ないから潰しちゃったけどね。

 そのお陰で広々使えるから楽しいよ。」


 「確かに此処なら大きいピーちゃんでも遊べそうですね。

 ほんとに引っ越して来ても良いのですか?」


 「部屋は余ってるからね。

 それよりも信用できる仲間が一緒のほうが安心できるし、今回みたいなのはもう懲り懲りよ。」


 「それはそうですね、専業冒険者は信用が無いとパーティーを組み辛いですからね。

 その点エマちゃんとなら学生時代からの付き合いですから安心です。」


 「それにピーちゃんがいたら万全だよ。

 ダンジョンの帰りもピーちゃんのお陰で帰れたからね。

 一家に一台ピーちゃんだよ。」


 「何ですかその昭和のような謳い文句は、エマちゃんってたまに歳が分からなくなりますよね?

 もしかして既に50代とかじゃ無いですよね?」


 「ユイちゃん、ちょっとそれは酷くないかな?

 でもねピーちゃんと一緒にダンジョンに行ったら分かると思うよ。

 ピーちゃんなしではもうダンジョンには潜れなくなるくらいには。」


 「そんなになんですね、それならダンジョンに行くのも楽しみですけど。

 明日はどうしますか?

 あの2人も居なくなりましたから休みでも良いと思いますよ?」


 「そうだね、明日のダンジョンは休みにしようか。

 ユイちゃんの引っ越しもしないとだからね。

 ピーちゃんも手伝ってくれる?」


 「ピュィ(任せろ)」

 

 「流石ピーちゃんだね。

 それじゃ明日はユイちゃんの引っ越しと、貰った素材で防具を作りに行こうか?」


 「そうですね、素材があるなら防具は新調したいでね。

 武器は新しくなりましたから暫くは必要ないですもんね。

 でも良かったんですか?

 今日のオークの依頼を2人で山分けなんて、私に貰う権利は無いですよ?」


 「良いじゃない、ピーちゃんがくれるって言うんだし。

 有り難く貰っておきましょう。

 防具作るのでもお金は掛かるからね。」

 

 「そう言って貰えると助かります。

 それなら私も防具新調しちゃいますよ。」


 女子2人が盛り上がっているが、私には関係ない話だ。

 私に防具は必要ないからね。

 何なら明日私の素材も提供してあげよう。

 私の羽と毛も役に立つと思うから、コアトルよりも私の格は上だと思うだよね。

 何なら爪もあげようかな?

 爪なら直ぐに生え変わるから問題ない。 

 攻撃は魔法が殆どだからね。


 その後は家に帰り2人がお風呂に入ると騒いでいたので私は大人しく部屋で待っているつもりだったのだが、強制的に一緒に入ることになってしまった。

 仔猫サイズだと力は仔猫と同じだ。

 2人の冒険者には敵わず捕まってしまった。

 綺麗なエマと、可愛いユイの裸を目の前に興奮している私が居たのに、私自身ビックリしてしまった。

 私を捕まえるのに全裸の女性がしゃがんでいるのだ。

 見えてはいけないところが、仔猫サイズだと丸見えになっている。

 興奮して、危うく卵を産みそうになりかけた。

 私のスキルの雌雄同体の意味を初めて分かった。

 私は1人で繁殖出来る個体のようだ。

 卵産むのにメタモ◯要らずなのは便利なのだろか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る