第4話
私のマップ埋めは完成していた。
大蛇は偶に遠征に出る、中央のオークの集落に向かいオークを捕食しているようだ。
大蛇は捕食しないと生きていけないようで、大蛇が居ない間にマップは埋めさせて貰って、私が産まれた場所も確認して来たが何も居なかった。
私はこのダンジョン(仮)から生み出された魔物なのか親が居るのかは分からなかったが、このエリアには私の他にグリフォンは居ないと言う事実だけは確かだ。
ダンジョンから産まれたのなら問題は無いが、大蛇に親を殺されているかも知れない。
大蛇の巣にはそれらしき痕跡は無かったので違うような気はするけどね。
ダンジョンから産まれたからこのエリアから出られないようになっている気もするが、ダンジョンからしたら私は異質な存在なのかも知れない。
他の魔物達は人間を見ると敵わないと分かっていても攻撃しているようだが、私にはそんな感情はない。
魔物にも感情は無いとは思うが、魔物同士なら逃げると言う選択肢はあるようだ。
人間に対してのみ攻撃的になるのは、ダンジョンからそう仕向けられているような感じがした。
この大蛇の巣の近くには、赤鬼の集落がある。
所謂オーガと言う魔物だ、オーガは大蛇とは敵対しないようにしているようだ。
多分だが大蛇にしろオーガにしろ敵対するとどちらもタダでは済まないからだと思う。
オーガは金属製の金棒を装備していて、オーガの怪力で叩かれると鱗が割れてしまうのだろう。
大蛇には毒攻撃があるので、空から毒を撒いているだけでも勝てそうだが数で押されると大蛇も厳しいのかも知れない。
私は大蛇が出掛けるたびにオーガの集落を襲っている。
一度オーガを襲っているときに大蛇が近付いて来たときがあったので、それから私は大蛇が食事に出るときだけオーガを襲うようにしている。
オーガの集落は此処の一箇所しか無いのだが、殲滅しても1日経つとオーガは復活していた。
多分、ダンジョンがリポップしているのだろう。
オーガの殲滅を繰り返していたら、私の体高は2mを超し体長は5mを越していた。
体格でも大蛇に引けは取らないだろう。
魔法に関しては風魔法でも効果はあると思うし、
オーガの殲滅を終えて私は大蛇の場所を確認する。
大蛇は今中央のオークの集落にいるようだ。
此処からはそこそこ離れているが、影魔法で近付けばそんなに時間は掛からないだろう。
私はオークの集落に向けて影に潜った。
オークの集落が近付いて来たら大蛇が戦闘中のようだ。
オーク相手にこんなに手子摺る筈がないのだが、大蛇の他に4つの光点がマップに映っていた。
近付いて見ると大蛇は人間のパーティーと交戦しているようだ。
前衛の男性2人は既に血だらけだ、後衛のヒーラーらしき女性も魔力切れなのか今にも倒れそうだ。
サブマシンガンを持った女性が牽制しているが、サブマシンガン自体が余り効いていないので牽制し切れていない。
その女性が属性魔法を使うのに魔力を溜めている。
威力のデカい魔法を使うのに集中しているようだ。
前衛の2人も気付いているようで、タイミングを計っている。
サブマシンガンの女性が銃を大蛇に集中させると、前衛の2人が後退して来る。
そのタイミングでサブマシンガンの女性が火魔法を大蛇に撃ち込んだ。
流石の大蛇も火を嫌って退いていた。
その隙に前衛2人がヒーラーを抱えて逃げ出したのだが、魔法を使った女性が出遅れた。
出遅れた女性に大蛇が毒液を吐き掛けた。
女性は間一髪で避けたのだが、完全に逃げ遅れてしまった。
前衛の2人もそれには気付いていたが、自分達が助かるので精一杯なのか構わず逃げ出している。
ヒーラーの女性だけが何やら騒いでいるようだが、男性2人は聞く耳を持たないようだ。
大蛇も自分に魔法を放った女性だけは逃がさないつもりらしい。
正直女性が
少なくとも元人間として出来る限り女性は助けたいと思う。
今にも女性に飛び掛かろうとしている大蛇の背後に私は飛び出し、ウィンドスラッシャーで大蛇を弾き飛ばす。
逃げられるのも嫌なので、羽を傷付けておいた。
吹き飛ばされながらも尻尾で薙ぎ払って来るのをマナブレードで叩き切る。
尻尾を切られて踠いている大蛇をシャドウバインドで固定して首を切り落とした。
最初はあれほど苦労して逃げたが、成長したら呆気ないもんだなと思う。
グリフォンは空と地上の王者として言われることが多いが強ち間違いでは無いのだろう。
大蛇をストレージに収納して、残っているオークの死骸も回収しておく。
女性が呆然と私のことを見ているが、無視をしておいた。
変に関わって攻撃されてもつまらないからな。
粗方収納し終わったら、大蛇を倒したところに宝箱が出現した。
確認するのも面倒なので、宝箱ごと回収しておいた。
中身は後で見ようと思う。
此処でやる事も無くなったので、私はこの場を離れようと思っていたが。
「ありがとう、助けてくれたのよね?
言葉が通じていないかも知れないけどね。
お礼もしたいの。」
「ピュィッ(気にするな)」
「あなたは言葉を理解出来るの?
綺麗な濡羽色、とても珍しい色。
触っても良いかしら?」
「ピュッ(好きにしろ)」
女性が恐る恐る近寄って来て、私の胸の辺りを撫でて来た。
久々に人の温もりを感じた気がする。
転生してからずっと1人だったので、少し和んでしまった。
私も自ら自分の首筋を女性の頬に擦り付けてしまった。
自分でもビックリだが、魔物としての本能なのか人としての寂しさからだったのかは自分でも分からないだろう。
「暖かくて綺麗な羽ね。
今の私とは大違いだね。」
女性が苦笑いを浮かべているが、戦闘直後で汚れているのは仕方がない。
私は女性にクリーンの生活魔法を使ってやった。
私が綺麗なのはこの生活魔法のお陰だ、生活魔法は野営にあったら便利だなと思うことは大体出来る。
火種に飲み水、それにクリーンに虫除けなど色々出来ることが多いが戦闘には使えない魔法だな。
「あなた、クリーンの魔法も使えるのね。
私も使えるけど、今は魔力が少ないから使えなかったのよ。
ありがとうね……。
もしあなたさえ良ければ、私と一緒に来てくれない?
協会にもそのほうが説明しやすいのだけど、私のパーティーが多分説明はしているとは思うけど…。
あいつらがどう協会に説明してるか分からないのよね?」
私が知らない単語に困惑の顔をしていたら、それに女性が気付いて説明してくれた。
「ゴメンなさいね、あなたには関係の無い話だけど私のパーティーと逸れてしまったから帰るのも大変だし、色々説明するのにも助かるのだけど?
どうかな?」
私は多分この階層からは出られないが、この女性を入口まで送るのには問題は無いからな。
私は腹這いになって自分の背中を見ながら、
「ピュィ(乗れ)」
「乗せてくれるの?
ありがとう、一緒に行ってくれるのね。」
一緒には行けないのだが、今は説明の仕様がないので入口までは送って行こう。
女性が私の背に乗ったのを確認して、私は空に駆け出した。
それ程スピードは出していない、大木の上まで出たらそのまま入口を目指す。
この階層には大蛇のコアトルくらいしか空を飛ぶ魔物はいないので、安心して空を飛べる。
マップの中央からだとそこそこ距離はあるが、空を飛べば然程時間は掛からない。
入口に辿り着き、女性を下ろす。
前に見たときは私でも倒れる広さがあると思っていたが、大きくなった私の身体ではもうこの入口では小さ過ぎる。
「思っていたより階段が小さいだね。
でもあなた、影に潜れるわよね?
コアトルの影から出て来たときはビックリしたんだからね。
私の影に潜ってくれるかしら?
それなら狭い通路も通れる筈よ。」
影に潜って移動は試したことは無いが、検証してみるのは面白いかも知れない。
私だけ出れないのか、彼女も出れなくなるのか試してみるか。
「ピィッ」
私は女性の影に潜ってみた。
影の中から女性を見上げている感じだ。
「それじゃ行きましょうか。」
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