第5話 マテライダの登場

「貴様!今夜は待ち伏せをしていたのか…!」


「人間界でも、毎晩毎晩ただただ殺されてるわけにはいかないのよ!!行くわよ!!異世界へ!!」





✽✽✽✽✽





「ナトイレルン!?」


そこには、血を流し、倒れるナトイレルンいた。


「ナトイレルン!!何があったの!?魔物は!?」


現実で李襟を襲って来た魔物の姿がない。


「これは…。!」


バッ!!と、サトファリアは、ナトイレルンから飛びのいた。


「く…くくく…。さすがだな…。サトファリア…。俺を偽物とこんなに早く気が付くとは…」


「やはり…お前は≪インドレイナローレ・モーストロ≫!!」


「その通りだ」


≪インドレイナローレ・モーストロ≫は、姿を自在に変え、敵を惑わす魔物だ。


「よくぞ見破ったな…なぜ分かった?」


「ナトイレルンが、お前のような弱小魔物にやられるわけが無かろう!!そのナトイレルンに化けたのも間違いだ。せめて平民にでも化ければよかったものを…。自分を見破ってくれと言わんばかりの、お粗末な作戦だわ」


サトファリアが余裕の笑みを浮かべる。


「くそっ!舐めた口を!!この小生意気な小娘が!!殺してくれるわ!!」


≪インドレイナローレ・モーストロ≫が、サトファリアに襲い掛かろうとした時、


「<雷剣トゥオーノ・ソード>!!」


「ぬおぉぉぉぉおおお!!!」


魔物に、雷が落ちた。


「ナトイレルン!!無事だったのね!!」


「すまん。サトファリアに化けたこいつに騙されてな…。<拘束レテニュ>をかけられていた」


「…貴方、なんでそんな簡単に騙されるのよ!!ばっかじゃない!?」


「お前はすくすくと性格が悪くなるな!!」


「うるさいわね!!騙された貴方がいけないんでしょ!?どうしたら、この美しいサトファリア様と、あんな魔物とを間違えるの!?」


「お前の性格が悪いことをはなっから知っていたら騙されなかったかもな!!」


「何よ!それ!!」


「<悪魔鎖縛付ディアーヴォロ・カティーナ・グラーストック>!!」


「キャ―――――!!!」


「グオ―――――!!!」


ナトイレルンが、仕留めたと思われた魔物に、まだ息があったのだ。2人が言い争って(馬鹿にし合って?)いる内に意識を取り戻したのだ。そして、2人を悪魔の鎖で、縛り付けた。


「ふふふ…。もう動けまい…。2人ともどもこの世界から消し去ってくれるわ!!」


「…何言ってるの?」


「あ?」


「あんた、何言ってんの?」


「サトファリア?」


サトファリアの強い口調に、魔物も、そして、ナトイレルンも戸惑った。


「ふっ。殺されると分かって、気でもおかしくなったか?」


「それはそっちでしょ?私たち…いえ、私をこんな鎖で取り押さえたつもり?こんな鎖、簡単に解けるわ」


「何!?…そんなはずはない!只の<鎖縛付カティーナ・グラーストック>ではない!の力を込めた鎖だぞ!!簡単に解けるがない!!」


「私を舐めてもらっちゃ困るの。私は、数万年に及ぶこの闘いに、終止符を打つために生まれた魔術師よ!!」


「どう喚こうが、この鎖を解けぬことには…!?」


「<解錠スボラッキャーレ>!!!」


パキ―――ンッ!!!


サトファリアとナトイレルンを縛っていた鎖は、あっけなく解かれた。


「なっ!なにぃ!?」


「言ったでしょ?私を舐めてもらっちゃ困る…と。勿論、ナトイレルンもよ。ナトイレルン、強化の呪文を唱えるから、また<雷剣トゥオーノ・ソード>の攻撃を!!」


「わ、分かった!!唱えてくれ!!」


「行くわよ!!<強化ララッフォツァーレ>!!」


「<雷剣トゥオーノ・ソード>!!!デヤ―――!!!」


「ぐおぉぉうううう!!!」


≪インドレイナローレ・モーストロ≫が、苦鳴くめいを上げ、消えていった。


「ふぅ…。拘束された時は、もうやられるかと…」


「何言ってるの?ナトイレルン。貴方がそんな弱気でどうするの?この世界での私のパートナーは貴方なのよ?しっかりして!!」


「ギャーギャー騒ぐな!!本当にやかましいな、サトファリア、お前と言う女は!」


「私のおかげで助かって置いて、その言い方!?もっと強くなりなさい!!」


「言われんでもなる!!」


「…私も…強くなるわ。必ず…、必ず…、魔界を…魔王を、倒して見せる…!!」


(この娘…本当に強い…。もしかしたら、本当に、サトファリアが、魔界を滅ぼす救世主になるやも知れんな…)


ナトイレルンは、心の中で、期待を膨らませざるを得なかった。















「キンリジライ様…、例のサトファリア…と申す魔術師が、またしても、我らが同胞を倒したとのこと…。いかがなさいますか?」


「マテライダ…俺の予勘は、間違ったことがない。だろう?」


「はい。キンリジライ様」


「その俺の、予勘が言うのだ。このままでは、魔界が滅びる…と…」


「なっ!なんと!?まことでございますか!?」


「恐らくは、そのサトファリアと言う娘の力の影響に在ろう。マテライダ、分かっているな?」


「は…?」


「これ以上その魔術師が力を得る前に殺せと言っているのだ!!ぐずぐずするな!!これはこの魔界の危機だ!!」


「は!!キンリジライ様!!」





パタン…。




魔王の部屋の扉の閉まる音がする。


(あれほどまでにキンリジライ様が取り乱すとは…。かなり、まずい状況にあるとみて、まず間違いはあるまい…。しかし、レベル19の魔物がたった3度目の転生で仕留められている…。これは由々しき事態…。どうすればいい?)


マテライダは、キンリジライの側近で、魔界のNO,2だ。キンリジライは、天使だった頃、その魔法の能力は高かったが、と言う部分では、ある種言えば、マテライダの方がまさっていた。だからこそ、天界を裏切る時、キンリジライは、マテライダを引き連れ、天界を去った。マテライダがキンリジライについた理由は、簡単だった。


マテライダが、幼子だった頃、天界の王に、魔法の力がないことを理由に、側近から外されたのだ。そして、その時魔法の能力が高かった、天界の王の幹部だった、キンリジライが、頭の良かった、たった18歳のマテライダを、自分の側近に向かえたのだ。それから、マテライダは、キンリジライのことを慕い、天界を裏切る時に、キンリジライに迷わず、ついて行ったのだ。





「皆のもの!!集まれ!!」


マテライダの号令で、数多の魔物が、姿を現した。


「キンリジライ様が、あのサトファリアとナトイレルンという魔術師と剣士を恐れておられる。魔界の危機だ、とおっしゃって」


「ま、魔界の危機…!?でございますか…?マテライダ様…」


「あぁ。キンリジライ様の予勘だ。そうは外れまい。あの小娘たちを倒せたのなら、魔界でのそれなりの地位を約束する!お前たちの力、能力、結果に応じてだ。そして、もしも、ナトイレルン、または、恐らく、ナトイレルンよりも厄介なサトファリアを倒したものには、我と同じ、キンリジライ様の側近の地位を与えよう!」


「「「「本当でございますか!?マテライダ様!?」」」」


「あぁ。俺は嘘はつかん。こののマテライダの名に懸けてな」


「「「「「うをぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」


「「「「「やるぞぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお!!!!」」」」」


悪魔たちの闘魂に火がついた。これが、、マテライダの統率力、と言えよう。







「ナトイレルン、何だか、嫌な予感がする…」


「ん?何がだ」


「魔界の魔力が強くなってる…気がする…」


「な、サトファリア…お前はそんなことも分かるのか?」


「うん。何だか、胸騒ぎがするの。明日からのでの闘いは、きっと激しいものになるわ…。恐らく…だけど…」


「サトファリアが言うなら、そうなのだろう…。しかし、サトファリア…お前はどこでそんなに魔力を身に着けたのだ?」


「なんでって…それは、ナトイレルンの方が詳しいんじゃ…」


「うむ…。だが、解せぬのだ。今までの召喚された人間とは、明らかに魔力の差が大きい」


「それって、問題なの?」


「いや、それは分からぬが…」


「じゃあ、私なりに調べてみるわ」


「調べる?どうやって…」


の世界で、情報収集するのよ。こっちは、闘うことが本業でしょう?でも、あっちは、学んだり、調べたり、実践したり…。色々こっちでは出来ないことが出来るはずよ」


「そうか…。俺は、あっちでの記憶はないからな…。雲母とやらに任せるしかないが、その男は、頼りに出来るのか?」


「簡単に、私に化けた魔物につかまった貴方よりはずっと頼りになるわよ!」


「くっ!過ぎたことをねちねちと!そんな娘、男たちに好かれぬぞ!!」


「!よっけいなお世話よ!!」


パシンッ!


サトファリアは、思いっきりナトイレルンの頬をひっぱたいた。


「何をする!このじゃじゃ馬め!!」


「うるさいわね!!貴方こそ頼りにならない男なんて、こっちでもあっちでも絶対相手にされないわよ!!」


「なにぃ!?」



…………。



2人の言い争いは、しばらく続いたが、現実が朝になった頃、サトファリアは現実に戻って行った。

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