第17話 薫への質問
「薫さん。
美和さんにお風呂の話を伺っていた時に、あなたの事が話題に出てきましたので、これからお話を伺ってもよろしいでしょうか?」
姫子が薫の方を向き話し始めようとした、その時だった。
「すみません、失礼します。」
大野が不機嫌そうにリビングに入って来た。
そして、その後ろから、少し疲れた顔をした悠馬も一緒に戻って来た。
「あっ、お兄さん。
お帰りなさい。」
薫が悠馬の姿を見つけると、すぐさま声を掛けていた。
「ただいま、薫。」
悠馬は、とても心配そうな顔をしている薫を見て、笑顔を作るようにしながら答えた。
「悠馬さん、初めまして。
私は、純情 姫子と申します。
今ご家族の皆さんから、昨夜の出来事の話を聞いているところです。
大野刑事とお話をしていてお疲れの所に申し訳ありませんが、悠馬さんも昨夜の話を一緒に教えて下さいませんか?
大野刑事、そうしてもよろしいでしょうか?」
姫子は、悠馬に挨拶をしてから、リビングに入って来た二人にすぐに声を掛けた。
こうする事で姫子は、この部屋で自分が主体となって話を聞いている状況を大野にも伝えていた。
「そうですね。
分かりました。
あなたが話を聞く事で、何か新たな事実が出てくるかもしれませんし、少しご一緒させてもらいますよ。
私と悠馬さんとの話は、先程からずっと平行線になってしまっていたのでね。」
大野がしぶしぶと答え、二人とも姫子の話に加わる事になった。
「はい。私もこれからは皆さんと一緒に、話に加わります。」
悠馬は、ようやくリビングに戻れることにホッとした顔をしながら、姫子に答えていた。
「ありがとうございます。では、悠馬さんもご一緒に。
そうそう悠馬さん、お伝えしておくのを忘れていました。
私の質問は、他の方にしている時であっても、もしそれについて何か言いたい事があれば、話の途中でいつでも参加してきて下さい。
そうする事で、お互いに昨夜の状況を正確に思い出していければと考えておりますので、ぜひそうして下さいね。」
姫子は、笑顔で優しく悠馬に説明していた。
「はい、分かりました。」
悠馬が姫子に答えた。
「それでは薫さん、あなたへの質問に話を戻しますね。
先程美和さんから、昨夜の夕食後に誰に会ったのかを伺っていました。
美和さんは、あなたと会ったと話して下さいました。
美和さんは、お風呂の後に薫さんの部屋に行き、あなたに次にお風呂に入るよう勧めたそうですね。
では薫さんは、どうでしたか?
美和さんが部屋に来る前にどなたかに会いましたか?」
姫子が、先程中断してしまった話を加えて、後から来た大野と悠馬にもわかるように話しながら、改めて薫に同じ質問をたずねた。
「まず、夕食を終えて部屋に戻る時に悠馬兄さんと一緒に部屋の前まで話しながら戻って来ました。
でもこの事は、夕食後に会ったという事になるのかしら?
兄さんは、これから部屋まで荷物を取りに戻って、そのまますぐに父の部屋に行くつもりだと話していました。
その後は、部屋でずっと読書をしていました。だから誰とも会っていません。
そして、母が部屋まで来て声を掛けてくれたので、準備をしてお風呂に行きました。
そういえばお風呂に行く途中に、ちょうど瑠璃さんが下に行くところだったので、一緒に下まで降りて行きましたよね。」
薫が瑠璃の方を見ながら思い出したように答えた。
「ええ、そうだったわね。
私は、ちょうど台所に行こうと思って部屋を出た所だったのよ。
少し喉が渇いたから何か飲もうかなって思ったのよ。
冷蔵庫に冷えたペットボトルの水が入っていたから、それを持って部屋に戻ったわ。」
瑠璃が薫の話に答えるように話し始めた。
「そうでしょう。
やっぱりペットボトルの飲み物は、重宝するんだよ。
瑠璃のように飲みたがる子が多いんじゃないかと思って、昼から冷蔵庫の中で多めに冷やしておいたんだよ。」
美和が嬉しそうに答えた。
「なるほど、そうでしたか。
お母さんどうもありがとうございました。
僕も父と話した後に、冷蔵庫から一本取って来て部屋で頂きましたよ。
沢山話した後でしたし、本当に美味しかったですよ。」
悠馬が礼を言い、それを美和が嬉しそうに頷きながら聞いていた。
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